『光るキノコ』が食べれない?
ーコウ視点ー
シュワイヒ王に呼び出された俺は、またもやこのフサフサ絨毯を歩く羽目になっている。
ふー。
全く庶民を舐めないで欲しいよ!
こんなものに、慣れる訳がないんだから!!
あ!
あんなところに、ルスタフじゃん。
ま、不味いよ。
ルスタフが王座に座ってるし!
何してんの?ルスタフ!!
振り返ってラオを見たけど、目が点で役に立たなそう。ウェスさんは?
あれ?
王様に跪いたまま?
あ!
焦って忘れてたーーー!
王様居たんだよ。
俺は慌てて跪いたけど…本格的に牢屋行きか?
「コウ殿。無事のお戻り何より。しかも『光るキノコ』を入手されたとか?
さすがコウ殿ですな。
ふふふ。ルスタフ殿が気になるようですな。
では、ご本人からご説明頂きましょう』
俺は王様の言葉に少し目線を上げた。
何とか不敬罪は免れたみたいだし、何よりルスタフが気になる。
今朝は確かに…。
『コウ。我はルスタフに非ず。
我は『ナナルの真山』の主である。
この者の身体を借りているのだ。中々使い心地が良い身体でな』
な、何ーーー!!!
禁足地じゃん!
『ナナルの真山』と言えば、禁足地の中でもその険しさで有名で。
とにかく、最奥には異空間に繋がっているとか、木々が生い茂り実り豊かとか。
噂は色々あるけど。
俺…初めて主様とかに出会ったかも。
緊張する俺にルスタフの主様が笑う。
『とにかくじゃ。
お主の持ち帰った『光るキノコ』を使うには条件があるのだ。
其方とて気づいておろう』
うん。
あの『光るキノコ』は超難物だった。
とにかく、袋から出すとボフン!と音を立てて煙になる。
俺、マジびびったよ。
煙のキノコは食べれないし。次出して、減ってしまうのも悔しかったし。
あんなに苦労したのに、食べれないのは大問題で!!
『真の力を発揮するには我の森こそが最適なのだ。どうだ。我にその袋を預けてみぬか?』
ん?
ルスタフっぽいな。
ちょっと、ビビってる雰囲気がだけど。な!
当然、預けるよ。
主様だよ!しかも『ボフン!キノコ』だし。
でも、食べてみたかったなぁ。
もしかしたら…背の高いカッコいい大人にな。
「コウ!コウ!!
主様が先程から何度も話してるから、妄想は後にしろよ!」
お!あラオに怒られて王様と主様の前だと思い出した。
『少し時間をくれ。さすれば食せるキノコになろうよ。まぁ、約束の印を渡しておこうかの。』
ルスタフ?主様が近づいて来た。
俺に渡したのは一枚の『葉っぱ』?これが約束??
『これが紅葉した時に必ずや約束を果たそうぞ。
忘れるなよ』
ニヤリとルスタフの顔で悪どく笑う主様。
あまり怖くないのは、やっぱルスタフだからかな?
俺が頷いてルスタフの主様に笑いかけると…
突然ルスタフの身体が空に浮き上がった!
えー?
また、特殊能力なのか?
もしかして、浮き上がる魔法の完成?
『明日、この身体を返そう。暫く借りるぞ!』
ルスタフ?主様はそのまま窓から外へと飛び出した。
王様だけが冷静でルスタフ?主様が浮き上がった時に、静かに窓を開けてた。
もしかして主様と知り合いなのか?
まぁ、王様だものな。
当然か…。
「くく。本当にコウ殿の愉快だな。
それより明日はウェスに『ナナルの真山』へ案内させよう。恐らくそこにルスタフ殿がいると思うぞ』
シュワイヒ王の言葉は本当だった。
翌朝、皆んなと『ナナルの真山』へ向かうと森の入り口にルスタフがいたから。
でも、重要なのはそんな事ではなかった。
(いや、ルスタフが大切でないとかじゃなくないから!ちゃんと心配してたし!)
それより、世界的な大事件が起こったから!
禁足地の終わり。
ナナルの真山にあった結界は完全に無くなり、その上森には人の歩く道が出来ていたから。
『主様は禁足地を解いた』
驚いたのは、俺だけではなかった。
ラオだって見たことのない馬鹿面してたし。
でも。
未だ付いて来ちゃってるラシェットとブルスタッドは何故かニヤリと笑ったのみで。
知ってたのかなぁ?
王子とかはやっぱ、特別なのか。うーん。王族はやっぱりすげー。
森の中へ足を踏み出した我々を見たキヌルの村人達は、泣いてたよ。
長年の夢だとか。
本当に実り豊かな森だ。
果物を沢山取れたよ!
でも…。
何処か見たことのある気がする。
それも、最近だよ?
んー。気のせいかなぁ。
ま、考え事は身体に悪いからやめよう!
とにかく、ルスタフがいつも通りで何やら慌てている様子にホッとする。
全然、覚えていないらしいよ。
いきなり森でびっくりしてたから…。
でも、主様にご褒美貰ったみたいだ。
何故か小刀?達。
ルスタフはとっても喜んでいたけどね。
俺には彫刻刀セットに見え…ま、いいか。
本人が気に入れば良いんだから、な!
俺も『葉っぱ』を取り出して見た。
まだ艶々した緑色だ。
大切に袋に戻した。
味を想像しながら。
その時、何処かで麗の鳴く声がした。
空を見上げたけど麗の姿は無かった。
ーシュワイヒ王に呼び出される数時間前ー
トントン。
扉の叩く音がして開けると、慌てた表情のウェス殿だった。
「コウ殿!大変です。ルスタフ殿が!!」
えーー?
やっぱり翌朝までに目覚めるって言ったのに!
もしかして…、
悪い想像が頭を駆け巡った。
急いでルスタフの部屋へ向かいドアを開けて。
俺、固まってます!!
何故なら。
「だ、誰か助けてくれよ。笑ってないで早く!!」
叫んでるルスタフは動物に埋もれていた。
どっから湧いてきた?
「コイツら退かしてくれ!」
ま、不味いぞ。
声のトーンがだいぶ落ちて来たし。
ん?
何故?
あの仲間に??
見ればダンゴム?がいたし。
動物なのか?
もう。仕方ないな。
着いて来ちゃってるんだから仕方ないか。
ん?
なになに。
ルスタフに木彫り依頼の為に来てる?
えっー!
マジか。
お店出す前に、動物のお客さん様のハートを掴んだのか?
噂の主は、キノコだな。
それから、ルスタフに順番に作るから。と約束させて事なきを得た。
ルスタフはその後…。
木彫り依頼の動物が時折来ては、小さな木彫りを貰って帰って行くのを見た よ。
さすがのクオリティーだった。
腕前が上がったね。と言ったら苦虫を噛み潰したような顔をした。