ルスタフ視点ー護衛に選ばれてー
ブックマークが300…幻ではと思うほどで。
拙い小説を読んで下さる皆様に深く感謝です。
ールスタフ視点ー
かなり歩いた後だが行き止まりで。
今、単なる壁の前だ。
目くらましだろうと予測はつけたが、暗記はしない事にした。
お互いの信用にも関わる事だ。
キヌルの王城で奥まった場所へ他国民が踏み込んだ事はないはず。
それ一つとっても、コウへの感謝の意を示すキヌル国の本気が見える。
そんな考え事していたら、エマ姫様が呪文を唱え単なる壁は秘密の入り口へと変化した。
見ると長い廊下が続いていた。
かなり歩いたが、まだ先は長そうだ。
俺はチラリとコウを見た。
まだ、疲れは出てないようだな。
コウは俺と違って鍛えていないから、気をつけなくては。
護衛として選ばれたからか、珍しく責任感を感じている。
やがてしばらく進むと行き止まりとなる。
エマ姫様もこの先への道を知らないと。
うーん。。。
え?開いたのか?
悩んだのは一瞬だった。
コウが何かを呟いた途端、仕掛け扉が現れたからだ。
しかし、知らない言語のようで…『ヒラケゴマ』とはいったい。。
は!
ウェス殿の声にふりかえれば、退路が消えいた。
はぁ。ある程度予想していても焦る。
まずは皆に扉の仕掛けを説明して、と。
あれ?隠し絵の話をしたのに。コウ理解してないなぁ。。
エマ姫様。有り難い。
え?話聞いてたのか?
コウ!!
今、触ろうとしたよな?
仕掛けが動いたら、どうなるかちょっと話を…。
不味いぞ。コウはこの手の話に弱かったよな。
仕掛けを眺め必死だったが、事態はそれでは済まなかった。
時計をコウが見つけたのだ。
何故?
先程までなかった。絶対だ!
あの場所を隈なく調べたのに。
振り向くとウェス殿が微かに頷いた。
やはり…。
鍵はコウか?
しかし、1時間はかなり厳しい。
脱出経路を調べなくては、ならないかもしれない。あると思えないが…。
ところが、だ!
焦ったコウが扉に触れて、あ!
よ、横開き??
ふう。疲労感が増すよ。ここの仕掛けは…。
しかし、仕掛けは次からは次へと襲う。
悪趣味な廊下の灯りにビビるコウの近くで、敵の出現に備えつつ進む。
しかし長い廊下だ。
疲労も仕掛けの一部だろう。
しかし、コウは何故俺を選んだのだろうか?
護衛としての力も、対応力も光魔法もさして無い俺を…。
嬉しさと戸惑いが今もせめぎ合う。
役に立たなくては。
決意も新たに先へと進むと、廊下の模様が出現した。しかも、歩き方の説明付きだ。
何か仕掛けてくるぞ。
警戒していだ俺達に、説明書きが消えてゆくピンチが訪れる。
ま、不味いぞ!!
急いで覚えなくては…。
しかし、焦れば焦るほど記憶に残っていかない。
あ!もう消えたか。
ウェス殿を見れば俺と同じ結果と分かる。
どうすれば。
すると意外なところから助け船が出た。
なんと、エマ姫様…。
前から記憶能力が凄いと思っていたが、あの短時間で焦らず記憶するとは。
(コウの早口レシピ説明をあっさりこなしていたからなぁ…)
コウの後ろから歩くストレスの凄さ。
ヨロっとする事数度、その度に身構えるも辛くもセーフが続く。
俺…この旅の終わりにはハゲてそうだわ。
ストレスで…。
やっと終わって座り込んだコウは、袋からジュースを配り出した。
もちろん、エマ姫様はいつも通りに手伝っていたら珍しくコウのツッコミが。
あ!言わんこっちゃない。
鈍感発言で、エマ姫様がジュースを零したじゃないか。
不味いぞ。
コウのジュースは、絶品だが強力な効果を発揮するのだから仕掛けに異常が出…出たか。
床が上下し始めたのを見て、ウェス殿が素早くエマ姫様を抱えた。
必死のコウも、そろそろ限界と身体強化を図る。
小脇に抱えて床を飛び回る俺を不思議そうなコウが見た。
簡易な説明で納得してくれて助かった。
キヌル国とマルス帝国のハーフである俺の特殊能力。それは異常な身体強化にあるがいい思い出もないがな。
やっと収まった途端に頭を押さえられるような圧迫が掛かる。
胸が苦しくて息がしにくい。
顔すら上げられないが、気配でエマ姫様が失神したと気づくが俺とて保ちそうにない。
だからだろう。
周りの気配に疎くなっていたのだ。
まさか、コウに薬を飲まされるなんて思いも!!!
ぐぅあーーー!
酷い。なんてつう味なんだ!!
苦い、あまりの不味さに堪えられない……
あれ?
何ともない?
それどころか、古傷すら痛まない?
コウ…有り難い。有り難いけどコリゴリだ。
あれは…ないぞ……。
全員がすっかり良くなったその時!
出口が見えた!
長すぎた廊下に遂に終わりが!
走り出す俺達の目の前に闇影獣が現れた?
まさか、この様な場所にか?
「え?違うよ。あれ虎のような?」
何を言ってるんだ?
トラってなんだ?
え?姿が違って見えているなんて。
あり得ない…あり得ないがこの空間では仕掛けの一部かもしれない。
だとすれば、勝機が見えない。
どうすれば…。
あ!コウ!!
しまった。
こんな時に無茶をするって忘れてたよ!
しかし、激しい攻撃を防ぐ事で精一杯でコウを止める余裕が無い。
どうすれば。
あーー!!
あの瓶は??
や、やめてくれ!
あの臭いは勘弁してくれーー!
ガシャン!
あ、闇影獣が倒れた…まぁ当たり前かも。
あの『キツケグスリ』なら、な。
ようやく、出口へと向かい見つけた世界は異様そのものだった。
コウは、綺麗と思ったようだが生き物の気配がない。
しかも、この濃厚な光魔法が充満した世界なんて普通では無い。
不味いぞ。
コウが湖目掛けて駆け出して行く。
ま、眩しい!
目が、目が見えない。
なんだ、この尋常じゃない光の乱反射は!
目が痛い。痛みで目が開けていられないが。
は、コウは?コウは無事か?
よ、良かった。
目の見えない状況では護衛の意味もないからな。
しばらくしたら、目も開くだろう。
だから、だいじょう…え?
待て。コウその薬はやめろ!!
気配だけでも、毛穴が開いた。
はー。危なかった。
ウェス殿の落ち着いた対応で事なきを得た。
さすがキヌルの近衛隊隊長。
やがて目の痛みも引いたが、キノコの問題は依然として残る。ウェス殿の提案で夜を待つ。
夜を待つ間に、ウェス殿に耳打ちをした。
「この空間にいると、光魔法の影響を受けます。
私は光魔法を使えるだけに影響を受け過ぎる。
。。。。
ええ。恐らく後数時間しか持たないでしょう。ですからその時はコウを頼みます」
ウェス殿は目を見張って、しばらく考え込んでいた。そのあとで微かに頷くウェス殿に俺は笑顔を返した。
しばらくして、夜になるとキノコが光った。
あれは単なるキノコではない。
恐らくこの世界の精達ではないのか?
キノコの姿をしているだけで、キノコではないのをコウは理解しているのだろうか?
しかしそうなると、目的のキノコは果たして何処に?
。。。
コウ!どうしたんだ?
幻が見えるのか?(まさか、コウも光魔法にやられて…)違うな。
なんとキノコ達とお話し中とは。さすがコウ。
木彫りのリュウと引き換えにどうやら目的の物は手に入れたようだ。
ホッとした。
これで、俺の役目も果たせたな。
選ばれた理由は、理解できたよ。
バリー達強い光魔法の持ち主達は、一瞬もこの空間に耐えられまい。
その上…。
ダメだ。いよいよ意識を保っていられない。
身体中を駆け巡る魔法が返って傷つけ回る。痛みが頭を突き抜けて目も開けていられない。
コウが俺を気遣っているのに返事をするので精一杯で。
ウェス殿。ウェス殿が俺の身体を支えるのがわかった。
(俺ではなく…コウを…。)
そこまで考えて、俺の意識は完全に意識を失った。
夢の中で木彫りのリュウがあの水晶の湖で泳いでいる姿を見た気がした…。