ドアの仕掛けは?
ーコウ視点ー
「このドアをよーく見て下さい。目の錯覚を利用してるんですよ。」
ん?
ジッと見つめる。
何のこと?
「あ!分かりました。確かに絵のように模様になってます。」とエマ姫様。
「そうですね。ただ、騙し絵の理論を利用していると理解しても何をどうすれば良いのか。」とウェスさん。
え?
俺だけ?
俺だけ全然わかんないし。
何?
まさかの騙し絵なのか?
うーん。どこがそうなんだろう??
俺…そう言うの弱いんだよな。
皆んなで沈黙って何?
俺、変な事言ったのか?
キョロキョロしてたら。
「あの…違うんです。騙し絵の理論を使っているだけで。本当の絵では」とエマ姫様。
言いにくそうな様子でエマ姫様にフォローされる俺って…。
うーん。
騙し絵の理論かぁ?
目の錯覚の利用かなぁ。
よーし。ジッと見て。
。。
。
あー。やっぱりよく分からん。
もうダメだ。ルスタフに任せよう!
ルスタフは必死にドアを見つめているし、きっといい案があるんだろな。
その時、思いついたようにルスタフが顔を上げて言った。
「あ!やっと思い出しました。
確かマルス帝国の王宮に忍び込んだ時、どこかの部屋にこの仕掛けに似た絵を見ました。
ただ。どうやって仕掛けを解除出来るのかは分かりませんが。」
な、なんだって!
じゃあ、どうするんだ?
周りを見回したけど解決策のある人間はいないようで。
俺たち、どうなるんだ?
戻ろうにも階段は勝手に消滅したし。
こんな狭い場所に閉じ込められたら…。
こんな事を考えてる場合じゃない!
よーし。
俺だって。と焦ってそーっと手を伸ばして触ろうとしたら…。
「「「触っちゃダメです」だ」」
声が重なる!
身体がビクッとしたよ。
あー、危なかったよ。驚いて触りそうだった。
「驚かせてすみません。
触るとどうやら仕掛けが作動する場合があるんです。もし、仕掛けが正常な状態で作動しなかったら…」
とウェスさんが説明してくれた。
そこ。
濁すなよ。余計に怖いじゃん。
それからは無言で、ただひたすらに全員でドアを見つめる。
見つめるけど、実は何が仕掛けかもよく分からんままで俺…役立たず決定!
ん?そう思ったけど何か見つけたぞ!
アレ何かな?
あ!すごーく小さいけど『時計』だわ。
「なぁ、これってさ時計だよね。
とっても小さいけど動いてるしさ、何だろう?」
指差して言った俺のセリフを聞いたルスタフの肩がビクッとしたぞ?
なに?
不味いのか?
これって時限爆弾とか…まさかな。
ところが。
顔を近づけて見ていたルスタフが爆弾発言した!
「不味いです!
これはタイムリミットを測る時計です。この針が真上に来た時、恐らくはこのドアの仕掛けが消滅します。
このタイプの時計付き仕掛けは何度も見ましたから間違いありません!!」
えーー!!
じゃあ。
まさかここに一生住むのか?
いやぁ。六畳一間とか前世で聞いた事があるけど。これは狭すぎ!!
「コウ殿。ここに住むのは無理かと」とまたもやエマ姫様。
あ!不味い(俺の現実逃避の妄想が声に出てたぞ)
しかも、エマ姫様にツッコミ入れられるなんて。
ふ、不幸過ぎる。
ドア。開かないし。
ふー。
「どうやら、あと一時間くらいしかないようですね。」落ち着いた声のウェスさん。
凄いよね。
どんな時もこんな風に落ち着いた大人の男になりたいよ!俺。
でも。
そんな事を考えてる場合ではなくて。
時間が無いんだから!
必死な俺たちを余所に、何の打開策も見出せないまま時間が容赦なく過ぎていく。
必死に仕掛けを解こうとする俺たちと時間との戦いだ。
ウェスさんとルスタフは気になる箇所を話し合ってた。
だが、決定打にはならないようで。
エマ姫様はと見れば。
こんな時にも騒がずにドアをずっと見つめていた。
落ち着いている。凄いよ。
。。
ま、当然俺も騒げない……いや違った。
騒・が・な・い!でした!!
え?
焦ってる?
いや、男の余裕はちゃんと…あーーー!大変だよ。時計!時計がーー!!
「あと3分だよ。もうヤケクソでやってみようよ。」
皆んな諦めてない。
首を横に振ったし。
でも
ど、どうすれば?
俺の張りぼての余裕は、もうカケラもないよ!
ウェスさんの額にも薄っすら汗が流しながら…
ルスタフも目を皿のようにして…
必死にドアを見つめるのをやめない!!
でも。それでも時間は情け容赦なく過ぎて。
あと1分に。
あぁ!どうするんだよ!
あーー!!
頭を掻き毟る俺の目にエマ姫様の姿が映った。
震えてる。
隣を見るとエマ姫様は手を握りしめ唇をかんで。
微かに震えていた。
騒がないから、肝の座った人かと思ってたのに。
耐えていたんだ。
よし!!俺がやるしかない!
触らなきゃ変えられないんだから!
ルスタフが肩を落とした隙にサッと進み出て。
ドアに手を掛けた!!
「「「あ!!!」」」叫びなんて聞こえない!!
お、思い切って!手を伸ばして。
ガラ。
え?
ドアは、横に滑って行きましたよ?
横開きなの?
だって。ドアが横に開くスペースなんて無かった筈で…え?
ある?見間違いか?
「いえ。先程までありませんでした。
突然、現れたのです。今この瞬間にです。」
ウェスさんの声に動揺がみえたよ。
焦ってたんだな。良かったよ。
彼も人間だった。あー、ホッとしたな。
でも。
ドアの向こうは、真っ暗で何も見えない。
開いたのは分かるけど、進むのは躊躇われる。
そこで、ルスタフがすぐさま光魔法で灯りを灯そうと
『我が道を滴らせ』と光魔法を使った。
使ったよ!
使ったよね??
。。。
なんで状況は変わらない?
するとエマ姫様から驚くべき発言が!
「恐らくこの空間は魔法が使えないかもしれません。言い伝えがあるんです。
キヌルの地には、その昔大きな湖があったと。
そこは、祝福されし地であったと。
しかし、ある時その地は神様により隠されたと。
そして。
遥かな時を経て、我々のご先祖様はその地に城を建てたと聞いています。
その為か、地下深くには魔法も効かない場所があると聞いた事があります。」
な、なんと。
え?じゃあライターでいいか。
いやいや。それは前世のものだ。
では、どうすれば。
悩んでウロウロしてた俺が一歩踏み出した途端。
ババババー!!
灯りが一斉に付く音がした。
廊下が見えた。
長い長い廊下に見える。
なんでそんな言い方かと言うと、今も廊下の灯りが順々に付いて距離は伸びているから。
そう。
一斉に付いたと思ったのは間違いで順々に付いていたんだ。
凄いスピードで付いてゆくけど、廊下に終わりが見えないままで。
次々と灯る明かりが伸びてゆく廊下を明らかにする。
その様を眺めながらゾワゾワと鳥肌が立った。
どこまで続いてるんだ?
こんな長い廊下。
灯りの列は静かに灯り続けていた。
先へ。
先へと。
呆然として眺めるのみで動く者は誰もがいなかった。