隠れ里を訪ねて。
ーコウ視点ー
今、フィオン達と一緒に隠れ里へと向かってる。
懐かしいなぁ。ナディムさん。元気かなぁ。
事の発端は、一冊の本だ。
その名も『幻の食材とその効果』
これが凄いんだよ。
その効果…絶対手に入れたくなるのが入ってるんだ!
そのひとつが『能力の向上』だ!
なんと、説明書きに
『もし、その食材を手に入れたならば真なる効力を発揮する事の出来る者を探すが良い。
さすれば、魔力・気力・身体能力が非常に高く…』
長いので割愛で。
まぁ。要するに背が伸びるって話なんだよ。
え?
違うとか、無いから!!
ラオめ。
自分の背が高いからって、俺の夢を理解出来ないんだよ!
そんな話をしていたら、フィオン曰く。
「村長が(ナディムさんの事だよ。今は村長さんらしい。)持っている古い書物で見た気がする」
ありがとう!!
俺の夢の協力者よ!!
まぁ、本当は隠れ里のその後が気になっていたから、行こうと思ってたのだけど。
ようやく、見えてきたよ。
門の前に、皆んなが勢揃いしていたから思いっきり手を振った。
ん?
随分人数が増えたような。
あれ?
何でナット君が焦ってるのかなぁ?
「キヌルへようこそ。歓迎致しますぞ。」
うわっ!美中年だよ。
でも、どっかで見たような気がするんだけど。
うーん。
。。もしかして、まさかの王様か!
う、頷いてる?
そ、そうなのか。王様の出迎えとかちょっと恐縮とかじゃ済まない問題では?
では、この人達は護衛だなぁ。
近衛隊とかか?
「コウ殿。此度は隠れ里を思い出しおいで下さりありがとうございます。
お陰様で皆、何とか暮らしております。」
王様の横にいたナディムさんを見て笑顔になる。
何故って。
ナディムさんの姿が威風堂々としていたからだよ。
前は王様とかを怖がっていたから。
関係が上手くいってるんだと、ホッとする。
二人とも笑顔だしな。
俺は、さっそく村の中を見て歩く。
ボロボロだった家を補修していた筈なのに、立派な家が増えてる。
んー。儲かってるのかなぁ?
案内された果樹園は、タワワに実った果実でいっぱいだ。
随分、果樹園も広がってるし!
あれ?
俺はある事に気がついて首をひねると、ナディムさんが笑ってる。
「ふふふ。コウ殿。
お気づきですかな?
そう。貴方様が植えた草木は、季節無視なのですよ。本当に助かっています。」
なんと!素晴らしい果樹園!
感動してたら…
感謝を込めて深々頭を下げたナディムさんに、俺。参りました。
あ!カリナ!
お前さんの仕業じゃん。
ズルいよ。笑顔で誤魔化すとか…。
でも、ナディムさんから感謝として沢山の果実を貰ってハイテンションだよ。
だって、ここの果実の旨さは格別なんだ。
よーし。
こうなったら、一丁やりますか!
はい!
フィオン達の協力をお願いして
『アイス大会』開催〜!
原料の牛乳や生クリームはキヌルの特産だ。
卵を入れて。
攪拌には、氷が欠かせない。
冷やしながら。と!
即席冷凍庫を村の皆んなの手を借りて。
ではでは。
せっかくだから、果実を使って『アイスキャンディー』だな。
果実を潰す分と、そのままの状態を疎らにするのがコツ。
あ!
棒がいる…ルスタフ!!
良かったよ(ルスタフは俺の中では職人なんだ。でも、言ったら絶対嫌がられるから…)
最初は、王様に緊張してた俺は、王様の言う「今は無礼講」って言葉に従っています!!
正直…有り難い。
だって、なんか王様って名前自体が緊張するんだよ。
ん?
向こうの方が騒がしいなぁ。
おー!
なんか子供達が取り合いして喧嘩になってる。
ウンウン。
子供は、好きだよなぁ。アイス!!
そうだ!
えーと。
パフェもついでに。と!
え?
作った途端!
女性陣が押し寄せて来た…あ、ありがとう。
ナット君が押し留めてくれた。
良かった。
「あのー。私にもひとつ作って頂けませんか?」
と、ナット君が遠慮がちに言う。
ナット君はいつまでも言葉が丁寧で。
さすが工場長の息子さんだ!
「もちろん!」
特別に甘く煮たフルーツを乗せて。
アイスを添えてどうぞ!
おー、目がキラキラしてる。
まるで少女のようで、可愛い…ダメダメ。
はー。パワハラになるよ。
上司がそんな目で見ちゃダメ。
よし!反省、反省。
ウェスさんのなま暖かな目が余計辛いよ。
もう!
ナット君贔屓のウェスさんだからな。
怒られないだけ、マシか。
アイス大会も終盤に近づき、ナディムさんに呼ばれて家へと招かれる。
ん?王様もご一緒なの?
ナディムさんの家は、随分と大きく立派になっていて聞けば商談に使うからラクゥド商会の人達が建て直しに協力してくれたらしい。
ラクゥドさんの一言だって!
いやぁ、ラクゥドさんって言う大商人は、凄い人だ。って呟いたら、急にオリドさんの笑い声がして、びっくりしたよ。
珍しいなぁ、大笑いなんて。
何がツボだったんだ??
あ、テーブルの上に本が数冊置いてある。
よ、読めないけど。
え?ナディムさんにも解読不能なの?
じゃあ、絵だけ頼りになるな。
確かに同じ絵はいっぱいあるけど。
これじゃよく分からないなぁ。
皆んな無言になっていたら。
「これならば、私が読もう。」
えーー!
さ、さすが王様。。
「これは古き文字。各王族にのみ伝わるものだ。
これには、こう書いてある。
『地底湖の横に、光るキノコ有り。
そのキノコこそが、幻の食材なり。
その地底湖の場所は…』」
ち、地底湖とは。
またもや大ごとの感じがして、冷や汗が出るよ。
あれ?
王様が固まってる?
「コウ殿。
この場所には、覚えがある。
ただ、中に入れる者が限られていて世には知られてはいない。」
ゴクン。
そ、それは何処?
意を決したような顔で
「キヌルの王城の地下深くだ。」と王様。
えーーー!!!
じゃあ。無理だね。
王城とか、一般人の俺には無理だし。
「本来なら、王族のみしか入れない場所だが、コウ殿ならば。
まずは、我が王城へお招き致しますよ。」
あー。一般人には敷居が高いよ。
俺が「いいんですか?でも。」とかグズグズ言ってたら…
王様が、最後に爆弾発言をした。
「大丈夫。ご案内は、我が妹エマ第四皇女にさせましょう。」
「「えーーー!!」」
ん?
悲鳴が他からも上がったような…?
ナット君?
真っ青な顔から真っ赤な顔へと顔色の忙しいナット君に俺はピーンときた。
なるほど。
ナット少年の憧れの君なんだな。
『エマ第四皇女様』は!
頷く俺の横で盛大なため息がいくつも溢れたけれど、オリドさんが飛び込んで来たから気づかなかった。
「コウ殿!アイスキャンディーとアイスクリームの運搬方法を教えて下さい。
是非!お願いします!!」
相変わらず、儲け話に余念がないね。
うーん。
冷凍庫かぁ。
氷だけじゃな。
二重構造を更に発展させるのは…あ!
ルスタフだ!
向こうの方でルスタフが嫌そうな顔をしていた。