カエルとの、約束。
ーコウ視点ー
今、スタンさんの馬の後ろで必死にしがみついています!!
戻った俺を待っていたのは、血走った目でこちらへ走ってきたスタンさん。
(いやぁ、あの目。普通なら魔物とかの仲間入りだから!!あー、怖かった…)
逃げなかった俺を褒めて欲しい!!
(逃げられなかったとも言うが…)
そのまま、攫われてます!!
あ、もちろんラオ達も凄い勢いで追いかけて来てます!!
それより残念なお知らせがあるよ。
そう。マーラさんとリーさんの事。ここまで言えば分かるしょ!
美人は見てるだけでも心の栄養なのに!!
もう、すっかり元どおり。まぁ、元々幻の一種だから仕方ないけど、心に嘘はつけないよ。
カムバック!!美人画よー!
見てるだけでも幸せなのにーー!!
はい!現実逃避終了です。
ココはどこ?
いやね。お城がありませんよ。
確かこの道を行くと、素敵なボルタの王城が見えて来たはずでは?
お城はお引越しかい?
「コウ殿!それこそが貴方をお連れした真の目的です。
土地神様がお怒りなのです。
我々は、土地神様より先にコウ殿のお料理にあやかってしまい、城はこの様な事に。」
な、なにーー!!
犯人はカエル??
しかも、俺の約束破りかい?
いや、忘れてないし。後から行こうとちゃんと思ってたし。
んーー。
言い訳はダメだな。
よし!実力行使あるのみで、っと。
袋には、各地の名産品を貯めてあったんだよ。
ヨーゼストに行っても、港街でも、テーレントでも。
俺は、いつかカエルに食べさせてよう!ってちゃんと貯めてたから。
ズラーッと並んだ料理は圧巻だな。
海の物。
山の物。
そして、テーレントのもの。
お?あの緑色はカエルか?
『今更来て、ご機嫌を取ろうと言うのが気に食わん!!こんな料理で釣られるか!!』
あーーー!!!
何するんだよ。
まさか…こんな事って。
カエルは勢い良く近づくと、俺の料理を蹴散らして怒り散らしたよ。
ちゃんと並べた料理は、溢れたり転がったりした。
もうめちゃめちゃで。
「こんなの、こんなの駄目だろ。
どんなに怒っても。料理に当たるなんて。
食べ物だよ。命を頂いてるのに。」
ダメだ。
怒りより悲しみの方が上回って、言葉にならないや。
『いや。そんなつもりでは…。
。。。
いや、我は悪くない!!約束を破ったのは…。
そうだ。そうだろ。
我は…』
カエルの言い訳がだんだん小さくなるけど、もう顔を上げれないや。
だって。
ひとつひとつ料理を拾い集めてたら、俺の目から汗が溢れたから。
いや、汗だよ。
ココ大事!
ん??
ドドドド?
ドンドコドンドコ??
何?
何かリズミカルな音が地面の下から聴こえてくるけど。
俺が音のする方を見ると、土が盛り上がっているのが見えた。
しかも、遠くから一本道のような盛り上がりがあるよ。
これ、何?
ポコ?
あ!
ダンゴムシ?じゃん!
いやぁ、着いて来ちゃったのか?
でも、随分と沢山増えてるような。。
何?
じ、地面が揺れてる?
地震か!!
「コウ殿!!
あれを見てください。お城が、お城が!!」
無双騎士団の言う方を見ると、お城浮上中?
ズンズンさ!
ちょっと言葉知らないけど、ズンズンって芽が出るようにお城が生えてきていますよ!
もしかして、お前たちか?
お前たちがお城を浮上させてるの??
振り返るとダンゴムシ?が頷いているし。
(一列に並んで頷いてる。クク。やっぱコイツら面白れぇよ。)
『ええい、やめよ。我はこの土地神様なるぞ!
は?知らない??
何をーー!大地の精霊だから知らんがここは、我の土地!
何をしようと…くぅー。
『後悔してるのはお前だろ』だと。
そ、そんな事はないぞ。
我は…あ!!我の料理を!!』
カエル…誰と話してるんだよ。
お前…追い詰められてるんだな。
え?ダンゴムシ?だって。
ふふふ。
コイツらは喋りません!!
躍るだけだよ、な!
ほーら。頷いてるし。
あ!その上。溢れた食べ物を食べてる。
「ダンゴムシ?ありがとな。
遠くから来てくれて嬉しいよ!」
でも。
頷くダンゴムシ?もいるけど、大多数のダンゴムシ?がカエルを取り囲んでいた。
カエルの周りを取り囲むダンゴムシ?達。怒ってるのか?俺の代わりに…。
あー、カエルは困り切ってるな。
本当は反省してるんだよな。
俺もカエルを見て気づいたよ。
ま、俺も悪いとこあったし。
おアイコしようよ。
ん?ダンゴムシ?が怖い??
ダンゴムシ?はどうやら相当カエルに怒ってるみたいだな。(カエルの顔色が悪い。あ!カエルに顔色ないか…ま、何となくだよ)
不味いよな。
うーん。ここは俺のする事は演奏しかない!
レイバンから貰ったモーリフの小型バージョンで、と。
ん?
ラオ。
楽しみなのかなぁ。あんなに焦って。
ふふ。
よーし、張り切って行きましょう!!
あー、踊ってるよ。
ダンゴムシ?がカエルから離れてお城の周りをぐーるぐる。
カエルは、俺が改めて出した料理に夢中だし。
あれ?
無双騎士団の皆んなは、王様を連れてお城へと急いでるな。
まあ、お城の中が心配だよね。
お?
ラオまでか?
追いついたバリー達もお城へ入ってくよ。
満足したダンゴムシ?は、一列に並んで踊りながら帰って行ったよ。
んー。何処に帰るのかなぁ。
テーレントかな?
遠いのに。な。
俺は、ダンゴムシ?との絆であるモーリフ小型バージョンを胸に抱いて手を振った。
振り返ると、カエルがいた。
『良いか。待つのは大変なのだ。
それを忘れるな。』
カエルの足取りがフラフラしてたのは、不思議だったけど、明日もう一度池へ行ってお花のケーキを一緒に食べたいと、思った。
その夜、何故かカリナが忙しそうだった。
なんか、酔ったような症状が多いらしい。
何に酔ったのかなぁ。
まさか、俺の名演奏だったりして…
ま、ないわな!
その夜、ルスタフが新発明した『耳栓』が空前の大ヒットになったのは、また別の話。