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ドッキリですか?

ーコウ視点ー


あー。反省!!


整理整頓って、大切だよ。

最近、袋から目的のものを出すのが大変でさ。

その為に、森の入り口が見えたのに気づくのが遅れちゃったよ。

だから。慌てて走って出て……。


はい!今ココ。


深ーい穴の中ですよ。


いやぁ、狐がさ。

寂しそうな顔でいたから、手を振りながら急いで走り寄ろうって思ったんだよ。

だけど…。


穴に落ちました。

そりゃ、思いっきりです!!


ドッキリとかじゃないよな?

遥かな上を見ながら、よく無事でココにいると思うよ。

皆んなの心配そうな叫び声はするけど、姿は豆粒か!とツッコミたいほどの小ささで。


一応手を振って無事をアピールしたけど、分かっているのかなぁ?まぁ、無理だな。


ようやく、周りを見渡して気づいたよ。

ココはフワフワの草の絨毯だ。

道理で怪我なく着地した訳だよ。


それにしても、困ったよ。


狐のあの顔…ちょっと気になるのに身動き出来ないし。

うーん。


どうにか脱出をしたいけど。

そうだ。袋でも覗くか。

あ!


思い出したよ。


これだよ。これがあったよ。


確かこの笛を吹けば良かったよな。


『ピィーーーー!!』


来た来た。

ピィーとその家族達だ!


お利口のピィーは、やるべき事を理解していて家族と一緒に俺を地上へと連れて行ってくれたよ。

あー、ホッとした。



「「「コウ(殿)」」」


皆んなの叫びと狐のホッとした顔が見えた。

俺もホッとした。


いや〜良かったよ。

あの時、笛を貰っておいて。


実は…

テーレントでレイバンを助けようとしてた時に、ピィーとその家族達が来てトラッデの仲間達を助けてくれたんだ。


その時俺さ、ちょっとピィーに怒ったんだよ。

だってさ。


いつも側には居ないし。

呼んでも来ないし。


これって。ダメだろ!って。

だから、この状態は嫌だよって言ったら。


空から『笛』を落として来たんだ。


「ピィー。もしかしてこれで呼べば来てくれるのか?そうなんだな…そうか。分かったよ。

ありがとーー!大事にするよーー!!」


と、言う訳で今日が初利用記念日で。


あー。でも貰ったおいて本当に良かったよ。

ピィー。サンキュー!



あ!もう居ないか。

帰りも早いなぁ。さすが大家族のお父さん!



『コウ!さっきから呼んでおるのに、鳥にばかり夢中になりおって。

ココに来る約束を破ったクセに。反省が無い!!

この上は…』


不味いぞ。

狐はすっかりヘソを曲げているし。


それじゃとっておきを出しますか。



「ジャーン。

これ何だと思う?」


俺が差し出したものを見た狐は『花だ。そんな質問馬鹿臭い』と律儀に答えながら馬鹿にしてた。


「そう。花だよ。

で、これって。ムシャムシャ。」


『お前っ!!

腹減っているのか?

花なんか食いつきおって。料理人失格ぞ!』


よしよし。食いついたゾ。


「へへへ。実は食べられる花なんだよ。

これを入れたケーキと、そしてロシアンティーだ!」

(ドルゼ村で貰った花からヒントを得たんだ!!)


目を丸くする狐に、

花を混ぜた綺麗なケーキと、紅茶にバラの花のジャムを入れたものを差し出す。


それと…まだまだあるぞ!


俺はこれまで貯めていた様々な料理を出しまくったよ。


もちろん、お酒も付けましたよ!


えーと。

あー!もう、どれが良いか分からないから全部だ!!


そーら。


マーラさん達に手伝って貰って、すっかりピクニックと言うより祭り支度のような有様に。


ま、いいか。

うーん。食べきれるといいけど。


およ。

狐があちこちに手を出して、食べてる。

頬張っている狐を見て喜んでいる実感がしたよ。


あぁ、良かった。


喜んでいるのを見るのは何より楽しい。これぞ、料理人の醍醐味だな。


もう。狐のやつ、手や足を汚して。

えーと、布巾、布巾と。


あ!!



手元ばかり見てたら、うっかり転んで酒と言う酒を零しちゃった。

勿体ない…。


『お前。捧げた酒を零すなど有り得ぬぞ!!

本来なら…まぁ良い。特別だぞ!

今一度、酒を出せば許そう。」



ぷぷ。狐のやつめ。本当はお酒に目がないから怒ってるのを誤魔化してるな。

まー。お酒ならまだあるしね。



ん?

何か匂いがするような…?



あ!あの穴だよ。

そうだよ。俺の落ちた穴。



近づくと、いつ溜まったのか水がいっぱいになってすっかり小さな泉もどきに変身か?


しかし、匂いの元はココだよな?


俺と一緒に近くに来ていたラオが一口飲んで絶句してる。

もしや、毒?


ラオ!大丈夫な…


顔が赤いような、目が潤んでるような。

ん?

何故だか座った目のラオに凄まれたゾ?


「コウ。

この泉の水は、酒をだよ。

お前が酒を零したからだぞ。少し反省しなさい。」


摘み食いいや、摘み飲みしたな。


酔ってる。珍しくラオが酔っ払いだ!!

だって言ってる事が支離滅裂だしな。


何?

今出来た泉の水が『酒』だって。

ぷぷぷ。

その上、俺が零したちょっとの?酒のせい??


あー、もう完全に出来上がってる。


よーし!今度このネタで揶揄おうっと。

いつも説教ばかりだから復讐、復讐と。


『おい、聞いておるか?

。。。

全く、お主の頭の中を見てみたいわ!

この泉の水は間違いなくお主が作ったのだ。

もちろん原因は、其の者の言う通りで倒れた酒よ。

それにこれは薬酒である。

おそらく、穴にあった草は薬草だったのだろう。』


。。マジか。。



狐の言葉にびっくりしてたら、いつの間にか狐の 姿がぼやけはじめて。


何で?酔ってるのはラオじゃなくて俺なの?



『ふふ。

本来の姿にはまだ戻らぬが軛からは解き放たれたわ。

この泉をもって、約束としよう。

一応。礼を申すぞ。

そうよ。礼としてひとつ教えてやろうぞ。

このままでは、ボルタの城が崩れるぞ。

それはお主の物忘れが原因よ。急ぎ約束を思い出すが良い。』



え?


えーー??



言い捨てて消えたし。


あれ?ココは…。

俺達は、気づけばウィンゲルドの街中にいた。



手には見慣れぬ酒瓶を手にだ。



その酒瓶は、あの薬酒だった。

その威力に後ほど助けられるけど、それを今の俺はもちろん知らない。


(あ!言っておくけど琥水はちゃんと泉の中にあるから。

え?

落ちた時に落としたって……。

い、いや。違うし。勝手に落ち…違うよ。

わざわざ盗まれないように穴に入れたんだし!!


あ…狐もう聞いてないよな。大丈夫だよね?

分かってるよね?


まぁ、まだ沢山あるから良いか。)



『舐めてる。完全に主様である我を舐めてる!!

分からぬ道理もないだろうが。

まぁ、まだこのボルタには怒れるものがおる。

さぁて。お前は如何に切り抜けるかな?』


誰にも聞かれない独り言は、闇の中に溶けていった。



そして。


遠くで、カエルの鳴き声がした。



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