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様々な場所でー変わる視点ー

ープレストン視点ー


「やはり来たな。」


昔より引き締まった身体は鍛錬を怠らない彼の努力を物語っており、古傷の影響もついとは感じない。


「これは閣下。お久しぶりでございます。」

騎士の礼を捧げられて居心地の悪さに苦笑いが浮かぶ。


「コウ殿の事。流石の一言だな。

それでこれからどうするつもりだ?」


木の影にはどうせクラスタ辺りがいるのだろう。

ガイある所クラスタ有りと言われた二人だからな。もしや、ラドフォード様に…俄かな期待が湧き上がる。


「プレストン閣下。期待をさせた様で申し訳ないのですが、我々はコウ殿を追います。

暗部を躱すにはレイバン殿お一人に任せるのも過酷かと。」


苦笑いのガイは暗にラドフォード様に触れるのを拒む様子に、かえって時は来たと告げられた気がした。

そろそろ動くべき時なのかもしれない。


「プレストン隊からも数人連れて行くと良い。

精鋭部隊に仕上げてある。使えるぞ。」


「有り難く。」ガイは今一度礼を捧げてその場から離れた。

離れる前に見たものは…



『田中食堂』のあった場所。

今や森となったその、場所を…


(ツィー殿の仕業だろう…コウ殿の食堂はこれで守られた。ここはすでに禁足地となったのだから例え陛下であろうと手は出せまい…)



ーロイス視点ー


あの日から心の安まる日とてない。

コウが去った後、護衛隊を叩き潰した白マスクの仲間がやってきて


一言 「逃げろ!」と。


部下のビゼーとルノア・レーラ共々逃亡の日々だ。

コウよ。お前の料理は革命を起こすと前から言ってたのが的中したじゃないのか?

俺の言う通りだっただろう。

文句とも愚痴ともつかない言葉が心の中に溢れる。

だが計算外は近衛隊だ。あそこはヤバイぞ。


古代からある地下道へと逃げ込んで数日経つが、疲労は最高潮だ。

肩で息する仲間の肩に手をかけたその時、

真後ろに人の気配が!


ま、不味い!!

隙がないそいつから逃げる術すら見つからない。

ビゼー達が殺気立つが歯が立つまい。


「よせ!コイツには我々では敵わない。」


俺の言葉に反論しようとレーラが口を開く前にそいつが話出した。


「お前ら、中々やるな。

ガイから聞いていたが、実は本気にはしてなかったんだ。だがあの近衛隊ゼストから逃げ果せるのは実に愉快だった。

だがそれもこれまでだ。奴はここに気がついたぞ。負けは決定してる。」


負けと言われ再び殺気立つ3人。


「ふふふ、いいねぇ。

では俺が抜け道を教えよう。その代わり俺の弟子になれよ。お前らなら、弟子にしてもいい。」


いったいコイツは何を?何者なんだ?


「名前はどうでもいいが、まあガイの仲間で元暗部だよ。」とそいつは嘯く。


「呼べない奴の弟子とやらになる気はない。

例え負け戦でも俺たちなりにやるさ。」


俺の言葉に苦笑いの男。


「俺の名前はスレッドだよ。ロイス。

コウの為を思うならついて来い。時間がない。」


ス、スレッド?!


前皇帝の懐刀で歴代最高と言われたあの…


焦る俺たちの耳にも足音が聞こえできた。

敵の到来にとにかくスレッドの後を追う。

中年とは思えない足の早さに懸命に走る。

走りながら、コウを思う。

無事でいてくれと。



ーコウ視点ー


目を覚ますとラオが覗き込んでいた。


ガバッと起き上がり

「レイバンは!」と叫ぶとラオはキョトンした顔をした。


「何の事だ?」


見ると、少し離れた場所で柔軟をするレイバンが見える。

その横にはウェスもいた。


あれ?

レイバンの怪我は?

デュークとテザックは?


??


「夢を見たんじゃないか?俺たちはここで休憩してるだけだよ。コウは昼寝してたじゃないか。」


あれ?

俺の肩に梟がいるし!

やっぱ…


「ふふふ。寝ぼけてるな。

こいつを連れて行きたいって言ったのはコウじゃないか。」


あれ?

うーん。。。

寝ぼけたのかなぁ。



とりあえず、昼食にしようと言うラオにお昼ご飯作りに取り掛かる。

そう言えばお腹が空いたなぁ。




ーラオ視点ー


作業に熱中するコウから少し離れたところでレイバンがウェスにため息混じりに言った。


「騙されるかな?

こんなの騙される人間なんていないんじゃ…」


「いや、コウ殿なら大丈夫です。それに主様に知られてはならん。誤魔化せと言われては。」

ウェスもレイバンと同様に困惑した表情を浮かべている。


これが原因でコウを騙す相手として自分が選ばれたんだろう。



白い梟は『ナナルの真山』の主様だった。


レイバンの傷を治した後、コウは二日間目を覚まさなかった。その間に全て片付けたのだ。

我々の前に姿を現した事自体驚愕そのものなのに、直接お声掛け頂くなんて。

だが、本当の驚きは主様の指示のその内容だった。


それは以下の通りだ。


・子供達は、コウ特製の『ミサンガ』の影響を受けて付いてきた事


・コウの作るもの全てに特殊な能力が備わる事


・そして我々は特別に主様の『ナナルの真山』の中を通る事が許可された事


・最後は一番重要な事

コウにこの事は夢と思わせ決して悟らせてはならない事。自分もついていく事。


呆然とする暇もなく子供達を親元へ戻しコウを騙す相手として俺が命じられたのだ。

それにしても、親父から突然の命令を受けてから怒涛の展開で信じられない出来事が続いている。


いるが…

まさかの夢オチの嘘を完全にコウが信じた事こそが最高の衝撃だったかもしれない…


すっかり元気になって馴染んでいるレイバンを横目に羨みながら、コウの


「おーい、お昼だよー。」


の声に駆け寄りながら、主様の鋭い目を感じて密かにため息をついた。



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