ルスタフ視点ー待つのは辛いが…
度々編集を入れました。
若干、内容に変更をしました。
誤字脱字があまりに多く、困っている作者にとり誤字脱字情報は大変に有り難いものです。
改めてお礼を申し上げます。 ちかず
ールスタフ視点ー
暇だ…。
久しぶりの休日は、心穏やかな…筈がない!!
何故ならコウ殿がいない。
そう。
雨の道に選ばれない俺はコウ殿について行く事は出来ないからだ。
それでも!今の平穏はある人物のおかげと思う。
そうだよ。
アーリア様がいなかったらもっと大変だったはず…特にあの殿下達が!!ですが。
はー。
待つ日々の大変さを実感しながらも、闇影獣を警戒する日が続く。
アーリア様曰く『必ず新種は攻めてくる!』と。
そんなある日…その予感は的中する。
(悪い事に…)
ドドドドーーーー!!!!
爆音が響き渡り、テントの柱が揺れ屋根が落ちてくる
……かと思うほどの揺れた!
「敵襲だ!!」
誰かの叫びを聞くまでもなく、それが新種だと気づいた。
全員の顔が一瞬で引き締まって、表へと飛び出して行く。
そう。悪い予感ほど当たるのだ。
あー、不味い。前回を上回る数に見える。
地平線など全く感じられない程の数の闇影獣。
蠢く大地に、恐怖より薄気味悪さが募る。
それにしても、この人数でやれるのか?
前回思い出せば、トラッデと共に戦ったのだ。
トラッデは、戦い慣れたいわば『戦いのスペシャリスト!』
膨大な魔法量を持つ殿下方が加わったとは言え、形勢不利には違いない。
それにしても、よくもこんなに大量の闇影獣がいたもんだ。
俺も剣を取り出して、風魔法を乗せる。
剣に魔法を乗せて戦うのが、俺流だ!
うーん。参ったな…、
剣を持つ手が震えるとはな。
あー、正直言うと怖いし逃げたい!!
ほら、俺ってそんな正義感もやる気溢れてもいないしょ!
ちょっと前なら、バリー達とすぐさま逃げ出していた。
それがどうよ!
怖くても、怖くても逃げられないんだよ!
そりゃ、バリー達をおいてけないのも、ある。
でもさ。
一番の理由は違うよな。
コウ殿だ。
諦めるのを忘れるミラクルの連続だった。
そのうちに。不思議と俺すら何か出来る事があるんじゃないか?
諦めないでいれば、いい事があるんじゃ…。
踏ん張ってみよう。と。
それに…だ。
コウ殿が必ずレイバン殿を連れて戻ってくるはず!
そう心を決め身構えた俺に不気味な声が聞こえた。
『ふふふ。
救い主を欠いて我に勝つ気なのか?
お前達だけなら、殲滅するなど容易い。
アヤツが戻った時に、絶望をプレゼントしてやろう。』
なんの声だ…?。。。まさかの新種か。。?
しゃ、喋れると言うのか!
それほどの知能を持った闇影獣。
混乱している俺の耳に言い返す声が聞こえて振り返った!
ア、アーリア様??
「お前の考えなど、お見通しよ。
我らの反撃を見せてやろうぞ!」
ニヤリと笑って新種へ喧嘩を売ってるとは。
アーリア様って…ゆ、勇敢なおばさんだったんだ。
単に扱きの好きな方かと思っていたのに。
闇影獣に向かって手を伸ばすのは…バリー!!
出すんだな。あれを…。
「我、光の真なる姿を顕現するものなり。
重なり合う光よ。今こそその力を解き放て!!」
バリーとミック。そして殿下方。
元々の魔力量の多い四人の合わせ技だ。
しかも光魔法ときた!
ま、眩しいーー!
目も絡む光の束が、闇影獣向かって放たれた!
光魔法に触れた瞬間に、一列全ての闇影獣が一瞬して消えた。
やっぱ、凄いよ。
闇と光。
真反対の力は、威力を発揮するんだな。
俺は?
アーリア様を見れば指示が飛ぶ!
「ルスタフ殿は、後方にて待機して下さい。
この魔法はかなりの魔力を消費します。ですからこの後がかなり苦戦になるかと。その時こそルスタフ殿の出番です!」
確かに、この合わせ技の訓練の後、バリー達はいつもぶっ倒れていたからな!
俺は、温存として後方待機に。
その横では、ラオ殿やスタンさんなどが闇影獣を殲滅し続けている。
楽勝と言うほどの、剣技が冴えしかも気の連続技も続く。
反撃の隙など一切無い、見事な攻撃だ!
感嘆していると、アーリア様が仁王立ちしているのを見た!
あー、女傑だ! 間違いなく。
ドドンーー!!
幾たびも光魔法の合わせ技の攻撃が繰り返され、その度に地面は大きくゆれ一瞬で闇影獣が数キロに渡り消え失せる。
凄まじい戦いぶりは我が方の有利に見えた。
いよいよ決着が付くか!と安堵の溜息が溢れた時!
事態は急展開を迎えた。
しかも、悪い方向にだ!
後方に突如、大型の闇影獣が出現し次々と攻撃してきた。
疲労の増した今を狙う巧妙なタイミング!
新種の知恵のつき方は異様に思えた。
俺も、アーリア様の指示のもと前線へ繰り出す。
今なお、最高の効き目を持つ防虫煙玉を駆使する。
これに、俺の風魔法が有効なのだ。
俺も負けじと、闇影獣を殲滅するも大型の威力はかなりのものだった。
あ!!
横目でウェスさんが、吹っ飛んで行くのを確認した。
急いで駆けつけるカリナ殿を見て一安心。
してる場合じゃない!!
防虫煙玉を潜り抜けて、小型の闇影獣が攻撃を仕掛けてくる!
一瞬も気の抜けない戦いは続く。
それは緊張を強いて、疲労が蓄積して行くばかりだ。
だんだんに闇影獣に囲まれ始め、遂には連続攻撃を避けるのに精一杯で防虫煙玉を繰り出すタイミングをすら作れなくなる。
「うぅ。」
誰だ?
呻き声が気になるも、俺にも助ける余裕もなどない!
途切れないアーリア様の鋭い指示を頼りに必死に攻撃を続けるが…
バババーーー!!!
激しい音を立てて闇影獣の攻撃が地面を抉る!
「ラオ!!」
今度はスタンさんの叫びだ。
ラオ殿に何かあったのだ。
でも、動けない。
あ!
痛!!
しまった!!
肩に闇影獣の鎌鼬のような攻撃が掠って血が吹き出た。
くぅー。痛みが頭を突き抜ける。
必死に大したことはないと、言い聞かせるが痛いものは痛い。
それただ。
失血は一番不味いのだ。
何故なら魔力不足になるからだ。
光魔法でバリアを作れければ俺など一瞬でオシャカだ!
はぁ、はぁ。
だんだんと肩で息をするぐらいに、出血の影響はある。
も、もちろん、それでも諦めない!(はず)
拳を握って、力を入れたその時だ。
突然、ぐるんぐるんと視界が回転を始める。
闇影獣の攻撃を受けたのか??
それにしては、何だか妙な…?
目の回る状態の後、グラリッと倒れ込む。
不味いぞ!
や、やられる!!
思わず腕で頭を抱えて丸まったが無論、闇影獣の攻撃にそんなものが意味のあるはずもない。
ガタガタ震える身体はそのまま固まった。
どうなったのだ?
闇影獣は??
頭の中が??だらけになった俺の目には、びっくりの景色が見える。
幻じゃないよな。
ほ、本物?
その景色は…山々が連なり森が広がっている美しい景色。
まるで太古のテーレントのような…。
ほ、本当に?
でも、山も見える! テーレントにいつの間に山が?
森も見える!
草原を渡る風が気持ちいいのも確かだ!
じゃあ闇影獣はどこに?
気持ちの良い景色を眺めても、一切その姿を捉える事は出来ない。
じゃあ…勝った?のか??
すると…。
「おーい。皆んな!!
レイバンを連れてきたよ!!」
あぁ。コウ殿だ!!
聞き慣れたその声に、肩の痛みがぶり返す。
でも。文句はない。
だって。やっといつもの風景になったらだ!
コウ殿を支えるように立つ、笑顔のレイバン殿と言う珍しいものを眺めながら俺はふらふら立ち上がった。
「お帰りなさい」を言うために。だ。
立ち上がった俺の頬を、風が柔らかく撫でていった。