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御神木のその後。

 ーコウ視点ー


 レイバンだ…。


 俺は感激のあまり声も出ずにいたら、別の方から声がして振り返った。


『足りぬのか…。

 これでも、まだ足りぬというのか!!』


 太郎のヤツ…どうしたんだ?

 何か様子が変だ。空に向かって吠えてるし…

 凄く怖い目をしてるぞ?


 そんな事を思っていると、太郎がこちらを振り向いた。

 鋭く光る瞳がいつもの可愛い太郎では無い事を示していた。


 怖い…


 まるで知らない誰かのようで。



『何故だ!!

 何故なんだ…この者の姿をもってしてもまだ、封印は解けぬというのか!!

 まだ、この大地は甦らなぬと言うのかー!

 まだ犠牲は足りぬのかー!!』


 太郎の悲痛な叫びは、辺りに木霊した。


 封印?


 もしかして、太郎の真なる姿は『にんげ』

『ち、違うーー!!全く言うに事欠いて我を人間とは。良いか!我は』



 ドドド。。。



 え?ゆ、揺れてる?


 もしかして地震なのか?

 あ!御神木が…。



 俺の言葉で全員が御神木へと振り返れば、葉が茶色や黄色に次々と変わっていた。


 驚く俺たちをよそに、枯葉は木の枝から次々と離れていく。まるで役目を終えたかのように。

 潔く。


『何故だーーー!!!!!』

 太郎が天に向かって吠える。


 しかし…御神木は静かに静かに枯れて行くばかりで。



 太郎の瞳に深い悲しみが見えて俺の胸も痛んだ。


 ん?

 もしかしたら…

 御神木が枯れたら、太郎は…。



 ゴクリと喉の鳴る音がする。



 太郎のヤツは、未だ空に向かって吠えている。

 その言葉はもうウォーンと言う鳴き声に変わっていて内容も分からない。


 必死に考える。

 た、太郎を助けなきゃ!!

 御神木を枯らさないには…うーん。。。


 お、思いつかない。

 レイバンを振り返って助けを求めたけど、悲しげな表情で首を横に振るばかりで。


 でも。

 袋に何か…。

 ガサガサと探し回るけど良いものがない。


 焦る俺は、袋から色んなものが転がり出ているのに気がつかなかった。


 ポコ?


 焦る俺の幻聴か?


 ポコポコ??


 まわりを見て驚いた。


 ポコポコと音を立てていたのは地面から飛び出した『ダンゴムシ?』


 穴が開いて、また1匹転がり出て来たし。


 どんどん増える『ダンゴムシ?』に俺もレイバンも、そして太郎も釘付けになる。


 やがて、『ダンゴムシ?』はその数を数百、いや数千に増やして今や、この辺りを埋め尽くす勢いだ。


 もしや、此奴らが御神木を枯らす犯人か?と疑うように太郎が匂いを嗅いでいるが、増殖は止まらない。



 やがて、奴らは一列に並び始めたぞ?

 先頭は…えーー!!!

 俺の前なの?


 なんでだよ!

 まさかの餌付け体制なの?

 こんな緊急事態にか??


 小さな相手とは言え、これほどの数に餌付けとは。うーん。。。


 これだよな。やっぱ。

 考えた末に俺が袋から改めて出したのは『ママト』。

 まぁ、この世界のキャベツかなぁ?


 虫の餌付けとか前世でも経験があんまり無いから大丈夫か……あ!大丈夫みたいだな。


 餌付けはあっさりと終了した。


 え?早すぎないかって?

 いや(メンドくさくなって)有るだけ丸ごと投げました。


 き、緊急事態だからね!


 ほら!アイツらも喜んでいるじゃん!!


 踊り出したし。

 おー、揃って踊ってる。オモシレーよ。


 ちょっと手拍子打ったら、余計に激しく踊ってくれるし!

 はー。マジウケる。

 


『これは如何なる状況か?』


 太郎の呆れたような声に手拍子を休んで周りをみると、踊りながら御神木を囲むように円になる『ダンゴムシ?』の姿が!


 や、ヤッベー!

 あんなに揺らしたら、駄目だよ!!

 ぎゃーー!!

 葉が!葉が!全部落ちるーーーー!!!



 はい。落ちました。



 裸木になった御神木の姿に、俺は恐る恐る太郎の方を振り返ると。


 た、大変だーー!!


 固まってるだけ…?


 全然動かないとはまさか、もう…。



「太郎」囁くように呼びかける。


 ジッと見つめる俺の目に悲しみが溢れた。

 何故なら、太郎は石になったからだ。


 俺のせいだよな…。


 うかうかと『ダンゴムシ?』に餌付けをしたせいなのか…。

 それとも…。



 足の痛みも無視をして、太郎に近づくと優しくその毛並みを撫でる。

 はー。まるで生きているみたいだ。

 温かいものな。


 太郎の背に乗り森を歩いた時の事を思いながらゆっくりと撫でた。

  撫でながら、俺は俺の作った料理を脇目も振らず食べてた元気な太郎の姿を思い出していた。



「コウ。コウ!」


 は!

 レイバンか。

 でも、その声。どしたの?


「この声は涸れているだけで心配ない。

 それより、ラゼではなく御神木を見てくれ。」


 言われて御神木を見て、俺が石になりそうだよ。


 これ…どしたの?

 春が来たとか、言わないでよ。


 ナニコレ??

 花いっぱいって。。なんなんだよーー!!


 この御神木は、激し過ぎるよ!!

 桜か!とツッコミたい気分だ。


 葉もなく、花だけなのが桜に似てるけど色は紫。

 んー。でも、凄く綺麗だ。



 撫でてる手に振動が伝わって、驚いて太郎を見た。


 太郎…い、生きてるーー!!!


 でも…なんで巨大化したーー!?



 俺の背丈ほど大きくなって、開いた口も塞がらない俺の目の前で太郎のヤツはまだまだ大きくなっていく。


 せ、成長期か!

(誰か突っ込んでくれ…)



 グングン育った太郎は、御神木と同等の大きさになると天を向いてひと声。



 ウォーーーーン!!!!!




 もう!!元気だったじゃないか!

 騙しやがって、さ!

 。。まぁ嬉しいからいいか。



 しかし…太郎のひと声はあまりに大きく耳が痛いよ!

 太郎の足元の俺は必死だ!

 しゃがみ込んで耳を押さえると、大音量の影響がちょぴら和らぐ。



 ん?

 何か違う声がするような??



 ピィーーーーーーー!!



 ??



 え?あれって。


 まさかの空が割れました…。



 えーーーー!!!



 ナニコレ。

 更にだよ。

 空に割れ目から一羽の鳥が!!


 あれってば…ピィー?なのか??



 おぉ。

 その後ろから、ピィーのそっくりさんが大量について来てるし!



 ピィー。


 俺の知らないうちに結婚したのか?

 随分と子沢山だな。

 やるな…ピィー。




 俺が手を振ると、ピィーが頭上で旋回をした。




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