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問いかけ…そして?

プッ、プッー!!


クラクションの音にハッとして一歩下がる。


「馬鹿やろう!赤信号が見えねぇのか!!」


怒鳴るタクシーの運転手に頭を下げながら汗を拭う。


あー。それにしても東京の夏は暑い。

嫌な暑さだな。


ぼんやりしていた俺は、腕時計を見て驚いた。

なんと、もう8時だ。

早く行かなくては開店時間に間に合わないではないか!


何故こんな所でぼーっとしていたか、不思議に思えど時間は待ってはくれない。

急ぎ足で電車へと急いだ。


ホームに溢れる人波を眺めながらため息をつく。

満員電車の憂鬱さに電車を待つ。


ん?

何か目の前を横切ったような…。


やがてやってきた電車に乗り込むと奇跡的に窓側の場所を確保する。

車窓に映る自分の顔を見ながら、自分ってこんな顔だったかとふと思う。


変な事を考えるなんて疲れているんだな。と。


ウゥ。


ウウゥー。


耳を疑う音を聞いた気がした。

1回目は気のせいだと思った。

しかし、二度目は妙に気持ちが焦る。


何かに呼ばれてるような…。

急ぎたい気持ちが胸に溢れて居た堪れない。


あと三駅で到着なのにだ。

ふー。

疲れなのか?

車窓を眺めていたら、やたらと鳥が飛び交っているのが見えた。

乗客も何だな騒がしいからおかしいと思ったか。


あっ!

あれって、確か鷲じゃないのか?

こんな都会に鷲なんて珍しい。

そうか、だから鳥達が騒いでいたんだな。



でも、俺はどうしてだがその『鷲』から目が離せない。ひたすらジッと見つめていた。



『忘れてしまったらどうだ?

元々此方へ攫ったのだから、戻してやるぞ。』

何?

今の声は何だ?どこから聞こえたんだろう…。


満員電車の中には、スマホを弄る人すらないほどの混みようだ。

呼吸音以外には、時折聞こえる咳払いくらいで話している人もない。


まさか…空耳?


胸の鼓動が強まる。

空耳が聞こえたという恐ろしさではなく、『戻す』という言葉に動揺していた。


何故、こんなにも焦る気持ちが渦巻くのか?


『そーら。あと二駅で到着だ。

そこまで行けば、もう此方へは渡れぬ。そのまま忘れてしまうが良い。』


嗾すような喋り方にイラッとする。

でも…この声は聞いた事がある気がする…。


相変わらずの満員電車は静けさの中にある。

夏だからか?

異様な暑さを感じて、ポケットに手を入れてハンカチを取り出した。


ん?


ハンカチと一緒に何か出てきた。


黄色い石。中に水が入ってる。

綺麗だなぁ。琥珀色とはこの色のこ……。



!!!




レイバン!!!!





早く助けなきゃ!





俺は丘へ続く道を駆け出していた。

何故なら丘の上に確かに見えたんだ!!


そう!レイバンだよ。



必死に駆け出しながら、どうしてこんな場所を走っているか不安になる。

何だか、ぽっかり心の中に穴が開いた気がするからだ。


えーと。


確か『月石』で日蝕みたいになって…影を見つけて…真っ黒なのにレイバンの影絵が見えて…


その先が分からない…。


うーん。


俺はあの穴を落ちてからここまでどうやって来たのだろう?

穴を落ちて…それから?



あーー!!

もうどうでもイイ!!

そんな場合じゃないし、とにかく急がなきゃならなんだから!!



そんな風に駆け出す俺の耳には微かな囁きは、耳に届かなかった。




『待っていた。例えもう間に合わないとしても…』と。



レイバンまであと一歩。






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