第六十八話・セファとの再会
ゲートを抜けた富樫は、真っ赤な光の中、眼前にそびえるトロールの巨体に圧倒された。
(こ、これは! 思ったよりでけえ!)
思わずトロールの背後に走り出した富樫の心に、何者かが思考共有で語りかけた。
(誰なの? 思考共有はうかつに使わないで!)
(セファか!?)
(え? そうだけど、誰?)
(俺だ、富樫だ!)
(トガ……シ?)
富樫は周囲を見回しセファの小さな姿を探した、セファは、トロールの少し手前の上空に浮かび、七色に身体をきらめかせながら、こちらを見下ろしていた。
「セファ!」
セファが富樫に向かって飛んできて言った。
「ドイツ兵の服? あなたは味方なの? 思考共有は敵の幻想生物に聞かれちゃうから、使わないで!」
「そ、そうか、すまん。で、戦況は?」
「戦況ですって? 見ての通りよ。あたしたちは、フランス軍の召喚したトロール3匹を前に、手も足も出ない状況よ!」
「そう、なのか! セファ、俺に何かできることはないか。俺は魔法も使えるし、エリスからもらった魔法銃の弾丸も持ってる!」
「エリス?」
周囲をいそがしく見回していたセファが、その瞬間富樫をまっすぐに見つめた。
「あなた、エリスを知ってるの?」
「ああ、エリスもこの近くまで来てた。アレクやダミーも一緒だぜ」
「アレク……」
セファはトロールを見上げた。彼女の体のきらめきが、強まったように富樫には思えた。セファは再び富樫を見て、さらに西の方を指さした。
「あなた、魔法が使えるなら、あの人を支援してあげて。 このトロールは大丈夫、あたしとサファイアが食い止めてるから」
「あの人?」
富樫はセファの指さす方を見た。そこにはもう一体のトロールがいて、周囲で銃撃を行うドイツ兵を追い回し、その巨大な斧で薙ぎ払ったり、叩き潰したりしていた。その後方の、おかっぱ頭で筋肉質の、ヘルメットをかぶった兵士、ヨナ・カトリンを見て富樫は叫んだ。
「お、おかっぱ野郎! あいつを助けろ、だと?」
「ええ、今日のヨナは少しおかしいの。いつもは正確な投擲が、今日は微妙にずれてるの。彼の力になってあげて!」
そう言いながらセファは魔法を唱えた。
「量子監獄!」
だが、トロールに向けて放ったその魔法は巨大なトロール相手には、足止め程度の効果しかないようだった。トロールの、巨大な斧をふるう右手が青白い氷のようなものによって固められたが、トロールは怪力でそれを破壊し、再び斧で周囲を攻撃するのだった。
「セファ……、俺が未来で見たお前のプリズンの魔法は、もっとすごかったぞ」
「え? 未来?」
「ああ……」
一瞬手を止めたセファだったが、頭上に打ち上げたリモートクラッカーの一つが輝きを消したために、今度はリモートクラッカーの魔法を頭上に放った。
「遠隔花火!」
セファはいらだちを帯びた顔で、富樫を睨んで言った。
「いいからヨナを援護して! あたしは大丈夫だから!」
「あ、ああ……」
富樫は、想像していた以上にセファがこの状況に強靭に立ち向かっていることに、少し戸惑いを覚えながらも、その後瞬時に状況を把握した。
「わかった! すぐに戻る。がんばれ!」
「ええ、ありがと!」
セファは金髪おかっぱの、筋肉質のヨナ・カトリン二等兵の様子がおかしいと富樫に訴えた。なにかその理由があるはずだ。富樫は、少し離れた場所で、顔をこわばらせながらトロールに手りゅう弾を投げつけている、ヨナの思考を読み取るために魔法を詠唱した。
「精神捕縛!」
(続く)




