第四十九話・チーム・オランジェ
次の日、ゲオルク以下Mチームの面々には、迷彩模様の入ったオレンジ色のベレー帽が支給された。そしてチーム名は、「Mチーム」から「チーム・オランジェ」へと変更された。これらはセファのオレンジ色の髪と、「オランジェ」というファーストネームから取ったもので、このチームの存在をよりアピールするための、テオのアイディアだった。帽子は軍直属の仕立て屋が、徹夜で作ってくれたものだ。
セファもそのベレー帽に似せて、光の糸を使って自分用の小さなベレー帽を作り上げた。
「サファイアにも作ってあげたいけど、空を飛んでるときに落としちゃいそうだからね」
「ダイジョウブ、僕、ちゃんと手で(?)押さえる」
「そう? わかった、じゃあサファイアにも作ってあげるね」
サファイアは、頭の上にのせてもらったオレンジのベレー帽を、光の粒子でしっかりと押さえ、くるくると回転した。それを見てセファは手を叩きながら笑った。
朝食の後、チーム・オランジェの面々は、カール・エイス大尉の前に集められた。彼はこの司令部で、最高の権力を持つ司令官である。
「チーム・オランジェの諸君。昨日は着任早々の作戦会議、ご苦労だった。アレク・ド・アンティーク氏からの手紙と、ゲオルク軍曹からの説明で、我がドイツ軍における君達の可能性を私は理解した。極秘の任務を、どうか成し遂げてくれたまえ。なお、君達、チーム・オランジェの存在は、昨日の夜のうちに本部隊の末端にまで伝えてある。また、エド、ヨナ、テオの3人は、これも昨日のうちに、新兵から兵長へと昇進させておいた。臆することなく、戦地で活躍してくれたまえ。ではゲオルク軍曹、続きを頼む」
「はい。諸君、聞いての通りだ。俺たちはチーム・オランジェとして、軍より大きな権限を与えられた。また君達には、現在与えうる最大の階級を与えて頂いた。困難な作戦ではあるが、ドイツ軍の勝利のために、がんばって欲しい。以上だ。ではエイス大尉に敬礼!」
「は!」
軍靴を鳴らし、大尉に敬礼を捧げるチーム・オランジェの面々。テオの肩に乗り、演説を聞いていたセファも、慌てて敬礼するが、手がベレー帽にあたってしまい、丸いベレー帽はテオの後ろの床にコロコロと転がった。慌てて拾おうとするセファだったが、その前に白い手袋をした誰かがそれを拾いあげた。
「あ――」
「お嬢ちゃん、かわいい帽子だね。でも気を付けないとね。戦場では不注意は命取りだからね」
くくっと笑ったその男は、昨日の夜ずっと壁にもたれてセファ達を見ていた、ファル・マンティス伍長だった。ぞくっと寒気を覚えながら、セファは帽子を受け取って言った。
「はい、ごめんなさい」
昨日の作戦によれば、マンティス伍長はテオと行動を共にすることになっている。少しテオのことが心配になるセファであった。
エイス大尉が去るのを確認して、ゲオルクは言った。
「じゃあ、昨日の作戦に基づき別行動だ。パートナーとペアを組んでくれ」
面々はそれぞれのパートナーとペアを組んだ。
a)ゲオルク軍曹、ヨナ、セファ
b)マンティス伍長、テオ
c)エド、サファイア
セファは、ゲオルク軍曹とヨナの間をうろうろと飛んでいたが、最終的にヨナの肩に止まった。軍曹もヨナもどちらもセファにとっては怖そうだったのだが、童顔のヨナの方が、少しだけましだったのだ。
「よろしく、セファ」ヨナが言った。セファは笑顔と敬礼で返した。
マンティス伍長は、テオの横に立って言った。
「やあ、君のような美しい人とペアになれるなんて、僕はうれしいよ」
頬を膨らませ、ぷいっと横を向くテオ。セファとペアになれないばかりか、こんな痩せたカマキリのような男と一緒だなんて、最悪だわ、おかしなことをしたら、すぐさまセクハラで軍法会議にかけてもらおう、とテオは考えていた。
「サファイア、君と僕とは後方支援だね。まあ、こうなる予感はしていた。しょうがないね」
「うぴいいい! ガンバロウ!」
「はは、そうだね」
こうしてゲオルクとヨナとセファは、最前線の塹壕へ、マンティスとテオは、スナイパーチームとして中間地点へ、エドとサファイアは補給担当として後方へ配置されることとなった。
(セファ、しばらく会えなくて悲しいけれど、がんばりましょう)
(うん。テオも元気でね、何かあったら思考共有で連絡してね。サファイア、エドを守ってあげてね)
(うっぴー!)
ドイツ軍とフランス軍の、魔法と幻想と機械兵器の激突が、幕を開けようとしていた。
(つづく)




