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コンビニ転生・ニートだった俺がどうやって業務用電子レンジを使いこなせるようになったか  作者: 超プリン体
第1章 ハイテク・プリズン『電子レンジ地獄』
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第十八話・セファとプリズン

「ごめんね、トガシ」


 セファは、ゲーム監視室のバーチャルな扉をあけて、真っ暗なロビーに戻った。セファの設置したセミダブルベッドが、今は少し痛々しく見える。


「プリズン、今、何人がここを監視してるの?」


「はい、エリス社長を含め、日本国内の43名が今この瞬間セファ様を監視しておられます」


「え? そんなに!」


 元々伝説的存在であり、妖精達からの憧れの的であったセファが、彼女達の暇つぶしに監視対象となる、アイドルであることになんの不思議もない。コンビニ妖精として日本に職を求めてヨーロッパからやってきた妖精の多くは、ホワイトニンフかダークニンフであり、その両種族は雌雄同体。つまり生物学的にいう「オス」でもあり「メス」でもある。ホワイトニンフおよびダークニンフの全員に、セファと添い遂げてセファと自分の子孫を残すチャンスがあったのだ。なので、ダークニンフであるニーアがセファに思いを寄せるのも無理からぬ、それは生物として当然の、本能のなせる業なのである。


(あ、あのプリズンめ、余計なことを!)

 そうニーアは思ったが、同様にセファを監視する多くの妖精たちが、そう思ったに違いない。だがセファは、そんなアイドルオタクのようなファン心理がそこに内在しようとは夢にも思わず、今はエリスによって罰を与えられたという罪悪感と、軽い羞恥にのみ捕らわれていた。それ以外のことを考える余裕は、今のセファにはなかったのだった。


「でも、あたしの何がエリスをそんなに怒らせたの? このベッドだって、これが原因ならもう消去されてるはずだよね。ゲームの難易度を下げたこと? でもそこは、教育担当であるあたしにまかされている所だよね……」


 そこでセファは気付いた。さっきプリズンは、セファの目に余る富樫への態度を本部に通報した、と言っていた。その目に余る態度とはなんだったのかを、プリズンに問うてみればいいのだ。ダブルベッドの隅に、あぐらをかいて座ったセファは、口を開いた。


「ねえプリズン、あなたはどういう罪状で、あたしを本部に通報したの?」


「それは……、公益通報者保護法によって保護されるべき案件ですし、お知りになられない方が、私とセファ様の信頼関係を保つのにはよろしいかと存じますし、秘密にさせていただきたい所なのですが、どうしてもセファ様がお知りになりたいとおっしゃられるのであれば、セファ様を信頼してお仕えさせていただいている私としては、むしろお知りいただきたいと願う気持ちも無きにしもあらずなのですけれど、いかがしますか?」


「えーと……、知りたいから教えて」


「はい……。コンビニ妖精たるもの、囚人に思いを寄せるべからず。コンビニ妖精の心得第一条を、当然セファ様もご存じのはずですよね?」


「はっ!」


 しまった忘れてた、という表情をしたセファを見て、セファの監視役であるプリズンは、深いため息をつきたくなったのだが、今この瞬間セファを監視している40名を超えるコンビニ妖精たちは、男心と乙女心を同時にくすぐられ、モニターの中のセファを抱きしめたくなる衝動を抑えるのに必死であった。


 その中でも特にセファに深い興味を抱いているニーアは思った。


(あ、あなたのそんな乳臭くて締まりがなくておめでたい所が私を苛立たせるの。その澄まし切った白い制服を無理やり脱がしてお尻に蒙古斑もうこはんなどがないか、確認してやりたいわ!)


 モニターに向かって前のめりになり興奮するニーアを、楽しそうに見つめるターラ。そんな監視の視線に気づきもせずセファは思う。


「囚人に思いを寄せるべからず? それはわかるわ。けど、あたしとトガシの関係がそんなものじゃないって、他の人にはわからないかもしれないけど、エリスにだけはわかるはず。だって私とエリスは……」


 セファはそこで言葉を切って目を閉じた。セファの回想の翼は、故郷であるドイツのハイデルベルクでの、エリスとの出会いへと飛んだ。


(続く)

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