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魔王(イケメン)よ、あたしをお嫁さんにしなさい!  作者: 風嵐むげん
【第三章】 勇者にだって弱点があるんだもん!
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エリート将軍は夢見がち

「そういえば。リイン、アナタ……ええっと、何だったかしら階級? 昨日は時間も遅かったし、聞きそびれてしまったのだけれど」


 二人を部屋に招き入れるなり、メノウが不思議そうにそう言った。もちろん、オリガには何のことかわからない。


「はい。自分は若輩者ですが、七十二の柱の一を担う悪魔なのです」

「七十二の柱?」

「悪魔は他の種族とは異なり、血筋の名を受け継ぐ風習はありません。己を示すのは己の魂に刻まれた名前だけ。そして、我々の国は他より優れた七十二人の悪魔によって成り立っているのです。自分の名前はリイン。そして、ビュレトという名前は七十二の階級の中の一つの位のようなものなのです」

「つまりー、このお城で言うと大臣とか将軍とか……そういう役職名みたいなものなのよぉ?」


 リインの説明に、シェーラが補足する。どうやらこの彼女達は魔王の重臣であり、年が近い女性同士であることから仲が良いらしい。

 何より、天使と悪魔の二人が並ぶと何とも見応えがある。絵画にして、居間の暖炉の上とかに飾っておきたい。


「自分は幼い頃から陛下の元で、いつかやって来るであろう勇者と死闘を繰り広げることを夢見ていたのです!」

「え、死闘?」

「リインちゃんはねぇ、歴代の魔王さまの活躍劇が大好きなのよー?」

「はい! 特に、魔王シキ様と勇者サルビア様の物語は何度も読み返しました。今なら最初から最後まで空で語れます。原書版で全十三巻、総文字数二百四十一万五千五十四字、語りましょうか!?」

「いえ、結構です」


 金色の双眸を子供のように輝かせるリインの申し出は、とりあえず丁重に断っておいて。


「ねえ、リイン。もしかしてアナタ……勇者と戦いたい、って思ってるの?」

「うえ!?」

「もしも、自分が三日前にこの城に駐在出来ていたら……とは思っております。ですが、オリガ殿は人間界の強者の中から選ばれし勇者。自分では、きっと手も足も出なかったでしょう」


 ですので、とリインが続ける。


「魔王の御身を護る立場でありながら、こういう発言は問題があるとは思いますが……オリガ殿にコテンパンにやられた屈辱を噛み締めながら、陛下とオリガ殿の死闘をこの目で拝見したかった……! 陛下は涼しいお顔をしていらっしゃいましたが、きっとこの上なく激しく! 苛烈で! それでいて命を賭け合う美しいものだったのでしょう!!」

「え……あー、えっと」


 なる程。この魔法将軍リインは、オリガとはまた少し違った方向で夢見がちな女であるらしい。真面目な性格ゆえか、どうにも他人を信じ過ぎる傾向があるようだ。

 十秒くらいで終わった――しかも、オリガの完敗という形で――あの戦いを見られなくて良かった。それに、もしもあの場にリインが居たとしたら、オリガ達は彼女に勝てたかどうかは正直疑問である。

 リインからは隙のない、洗練された強さを感じる。一筋縄ではいかない相手なのだろう。それも、悪魔の中でも特に強者の七十二人の一人。人間界でいうと、エリートというやつか。


「ああ、まさか自分が将軍位を任されている間に勇者殿とその相棒殿が魔界に来てくださるとは……! オリガ殿、メノウ殿! 是非とも自分に、これまでの冒険譚を聞かせてください!!」

「い、いやぁ……そんな語る程のことなんて何も――」

「ストップ、ストーップ! もう、リインちゃん。嬉しいのはわかるけどー、今日はちょっと忙しいんだよぉ? お話は、後でお茶でもしながらゆっくりとしようよ!」


 鼻息を荒げるリインを止めたのは、以外にもシェーラであった。可憐な顔にきびしい表情を飾って、まるで先生が生徒を注意するかのように人差し指を突き付ける。

 リインよりも小柄ではあるが、流石は医者。シェーラの迫力に、リインが慌てて口を噤む。


「うっ……そうでした、すみません。シェーラ」

「はい、よく出来ました。ごめんねー、オリガちゃんにメノウちゃん。実はねぇ、わたし達サギリ様から二人に伝言を預かっててー……朝ご飯を食べたら、一緒に陛下の執務室に来てくれるかなぁ?」

「あら、ボクちゃんから?」


 大臣から直々の招集に、オリガとメノウが顔を見合わせる。何だろう、まさか昨日のシキの件だろうか。確かによく考えてみれば、幽霊騒ぎの犯人がシキだとわかったのは良いものの、騒ぎ自体は何一つ解決していないのだ。

 ていうかあいつ、どこに行きやがったんだ? 天国か? それとも地獄か? 


「その……本日の魔界は、些か危険でして」

「え、世界規模の話だった?」

「はい、実は――」


 突如、リインの言葉を掻き消すかのような騒音が室内に飛び込んできた。まるで外から壁や窓を、誰かが思いっきり殴り付けてくるかのような……そんな暴力的な轟音だった。

 この音が意図するのは、一つしかない。


「ひいぃ!?」


 びくりと、オリガの肩が跳ねる。まさか、まさか! オリガの動揺に気がついたのか、メノウが窓際へと歩み寄りガラス越しに外の景色を覗いた。

 だが、手前の木の葉っぱを見つけることすら叶わなかった。


「うわ……何よこれ、猛吹雪じゃない!? 確かに、さっき窓を開けた時は冬みたいに寒かったけど……これじゃあ、外に出ることなんて絶対にムリねぇ?」


 

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