表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋をすることのない僕が追憶で愛を語る  作者: カマドウマ
一章 招かれし転校生と招かれざる転校生
7/9

非王道転校生 5

 それにしてもその眼鏡重そうだ、とまじまじと見つめる。自分も普段は眼鏡(決してサングラスでも瓶底メガネでは無い)を掛けてるから分かるけど、絶対耳痛くなるよね、それ。


「あ、ネクタイ曲がってるよ」


 学年を表す緑色のネクタイが上手く結ばれてないのか、バランス悪く曲がっているのが目につき、勝手に直させてもらう。

 解いてから直そうと手を動かすともじゃ男はビクリと過剰に反応した。


「っ!?」

「ごめんね?つい気になって。ネクタイって慣れてないと結びづらいよね」

「う、ありがとう…」


 青嵐の中等部も高等部も僅かにデザインが変わるだけだった影響で、ずっと学ランを着ている僕も慣れるほどネクタイを結んでいる訳では無いけど、今の玉結びみたいな状態よりはまともに結べる自信がある。


 このもじゃもじゃの髪の毛も整えたいところだが、それはあまり宜しくないのだろう。


 だって王道だろ?


 きっと誰かに「男子校は危ない所だから変装しろ」とか言われて、意味も分からずにお世辞にも綺麗とは言えない髪型の鬘に顔半分以上隠す瓶底メガネを掛けて変だなとは思いながらそのまま転校。何だかんだあって周りの何故か美形を惚れさせながらその内美形とバレたりして総受け。……うん、二次元ならあるだろう。


 だから髪型を整えてしまったら只の凄い分厚くってデカい眼鏡掛けた人になってしまう。本当に鬘かわからないけど、よく見ると質感とかに違和感があるから鬘だと断定する。



 僕は腐男子でないが、友人が好きだったからそういうジャンルがあることを知ってる。転校生に限らず眼鏡を掛けた地味な人が実は美形だった~っていうのはBLに限らず漫画とかでよくある展開だろう。それが目の前の人間にも起きるかもしれないのは面白そうだと、不謹慎にも思ってしまう。


 少女漫画とかでも眼鏡かけた地味子=美人って、毎回思うけどこのもじゃ男みたいに髪と眼鏡で不自然なぐらい覆う程じゃないと美形は隠れないだろう。寧ろ眼鏡は良いアクセントになってお洒落になるだろうが、もじゃ男みたいな眼鏡であれば変に浮くだけだ。

 まぁ、もじゃ男レベルに隠してもこんな如何にもな格好、相当鈍感じゃない限り気づくだろう。この学園では特に。

 最初は変装について言わなくても人間誰しも隠しているものを暴きたくなる生き物、きっとこのもじゃ男の変装は遠からずバレて素の姿を晒すことになるんだろう。


 それを言ったら僕も変装した方がいいが、それは面倒臭い。静留の案でサングラスを掛けてるけど、普段は伊達ではあるが眼鏡掛けてる。このサングラスは早い内に外す予定だ。

 変装もそうだが普通のじゃないサングラスを掛けてずっと生活するのは邪魔だ。


 前の学校が自分の容姿のせいで色々問題起こしてたからある意味退学のように転校になった訳だけど、中学時代の同級生で、高校でこの学園に進学した親友にはこう言われた。


『お前は見た目も中身もチート。そらストーカーしたくなる。結婚して』


 意味不明だ。いや、意味は分かるけど……。いくら親友が美形であっても、結婚してと言われて一切嬉しくなかった。

 親友の趣味は変わってたが容姿は滅多に見かけないぐらいイケメンだ。あいつだって本気出せば人一人惚れさせるぐらい簡単だろうに、人のこと言えるのかとその時は思った。そしてさり気ないプロポーズは別の女か男に言え。


話を戻すと、隠してでもいないかぎり人は寄ってくるし、問題が起きる。マスクでもしてればいいんだが、一時期着けているのに普段と変わらず人が集まって来たので意味がなかった。自分のことながら、辟易する。

 要はこちらから問題を起こさなければいいのだ。動くのは相手が行動を起こした時だけ。自分から問題は起こさないように注意せねば。



 ただ目の前のもじゃ男がいい意味の非王道である事に期待する。さっきの制服の件で謝ってきたからいい子そうだけど。

 もじゃ男が起こす事が親友の言っていた通りになったら楽しそうな気がする。


 ちらりと校門を見る。

 物語の王道だったら、転校生は開いていない門を登って生徒会役員(大抵副会長)を驚かせ、表情だかなんだかを初対面でありながら指摘し気に入られたりなんだかするイベント。

 僕が来たからか、迎えが来ると言われていたのか門を登るなんてことは起きなかったが。


(……それにしても、こんな子居たか?それにネクタイの色が……)


 一瞬浮かんだ疑問を頭の片隅に追いやり、目の前のもじゃ男に視線を戻すと顔で唯一見えてる部分である頰を真っ赤にしながら口をパクパクさせてる。……??今はサングラスしてるからもじゃ男同様顔の半分しか見えてないはずなのにな。横から顔見えてたか?


 …あぁ、そうか。王道の転校生って洞察力が凄いらしいから、それで気付いたのか?それなら納得だ。または近くてサングラス越しに顔が見えてるか、単に恥ずかしくて照れてるだけかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ