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恋をすることのない僕が追憶で愛を語る  作者: カマドウマ
一章 招かれし転校生と招かれざる転校生
6/9

非王道転校生 4

 そんなこんなで、やっと高等科の校門近くまで来た。


 門の前を見てみると1人の人影があった。


「oh......…もじゃもじゃ」


 風が吹いた為か、髪を手で抑えた男を見た。

 校門の前に立つ人物は制服を作る時によくある入学後の成長を予測して作ったらこうなるだろうサイズの緩そうなブレザータイプの学園の制服にでかい眼鏡。その眼鏡に被るぐらい長いもじゃもじゃした黒髪。


 正しく王道と言える変装ルックだった。

 そいつとの距離が数メートルに来てもっと良く見える様になってわかったが、眼鏡のレンズの分厚さが半端ない。1cm近いんじゃないかってぐらいだ。いや、誇張しすぎた。実際は6、7mmちょっとぐらいだと思うけど、あれ見えてるのか?


 まあ、稀にああいうの居るなっていう容姿。しかし、金のかかった綺麗な校門の前では異物に見えるが。


 もじゃ男もこちらに気づき驚いたように口を動かす。多分「サングラス」とでも言ったのかな。


「……あれ、君も転校生?」


 真新しい制服を着て門の前に立ってるんだから自分と同じ転校生に決まってるが、予想以上の見た目に創作物でも無いのに、と思いながら一応聞いてみる。


「そ、そうだけど…えっと、なんで青嵐の…?え?サングラス??」


 もじゃ男くんは男にしてはかなり高い声で喋った。それに少し違和感を感じた。


 このもじゃ男が僕の通っていた青嵐の名前を呟いたのはここら辺では有名な進学校だからだろう。

 今僕が着ているのは青嵐の制服である濃紺色の学ランだ。

 先程まで一緒に居た静留もこれから学校があるからと、青嵐の制服であるセーラー服を着ていた。今頃は兄に学校まで送ってもらっているだろう。


「ん?それは制服が今日までに間に合わなかったからだよ」


 昨日図ったばっかだからな!

 わざと後半の言葉を無視して答える。

 考えてみれば、多分急ぎの注文が入った同じ転校生ということは、このもじゃ男だよな。もじゃ男が特注で制服作ったせいで僕は制服を作れなかったことになるよな……。特注の割にはかなりダボダボじゃないか?


「なんでも僕が注文する前に丁度生地の在庫が無くなっちゃったんだって」


「ご、ごめん」


 遠回しに嫌味になってしまったが、別にもじゃ男を責めるつもりは無い。


 聞いた話によると、一緒に転校してくる転校生ーー理事長子息は僕と同じ二年生。制服は高二の時点で成長なんてあっても微々たるものなのに大袈裟に大きくして…。ピッタリのサイズで制服を作ることは高校二年での転校であってもこれからの成長を見通してあまり無いだろうが、逆に体格を隠すようにダボダボに大きなサイズも可笑しい。なによりこの学園に通うのは基本金に余裕のある家庭の子供であるからして、今のサイズぴったりに作って、成長して合わなくなったらまた作り直すような生徒が多いだろう。そしてもじゃ男は理事長の身内なのだから、簡単に同じことが出来るだろう。勿論本人や家族の希望で余裕あるサイズに作ってもらう人は居るし、もじゃ男がそういうパターンだったのかもしれない。

 し・か・し。特注のくせにサイズがあってないのは解せないが、制服を注文したのはあちらが先だ。もし僕が一足先に注文していても理事長の息子であれば理事長としても格好がつかないという理由で優先されたのはあちらだろう。

 けど、それなら理事長子息としてであればちゃんとした制服を着ろよと結局は思ってしまうが、それを言うのは野暮なのだろう。


 まあ、こんな変な時期に転校してくる時点で訳ありだ。予想、というか確信持って言えるが、もじゃもじゃと眼鏡は変装なんだろう。見えている口元や輪郭が綺麗だし。と不躾にならない程度に観察して思った。


 因みに僕は腐った男子では無い。友人が腐っていたから知識として王道があると知っているだけだ。あと僕の個人的知識。


「君が謝ることじゃないよ。僕は突然転校することになったからしょうが無いし」


「う、うん。……でもなんでサングラス?しかも星型」


 もじゃ男は僕が怒っていると思っていたのか、ほっと安心したように息を吐いたあと、また同じことを聞いてきた。


 それはさっきも聞かれた、ついでに言えば静留も言っていた「サングラス(ソレ)」。僕はさっきから、ついでに言えば今日家を出てからずっと静留に言われて星型のサングラスを着けている。


 そうシャレオツな星型。

 理由は言わずもがな顔を隠すための安易的な意味で着けている。逆に目立つのは言わずもがな。


「(★∀★)」


 だがこのもじゃ男だって僕のサングラスに突っ込める立場では無い。


「君の眼鏡も中々凄いよ」


 絶対実用的でない過剰なレンズの厚さと大きさをした、所謂瓶底メガネは近くで見ても本人の目が見えない。

 目がよく見えないのは長い前髪のせいもあるけど、初めてそんな眼鏡見たよ。


「そ、れは……」


 触れられたくないことなのか黙ってしまった。その態度があからさま過ぎて隠す気あるのか疑う。そんな嘘のつけなそうな素直な反応も王道らしいが。

 もじゃ男自身の意思でその格好してるのかは分からないが、この態度的には個人の意思では無さそうだな。





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