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恋をすることのない僕が追憶で愛を語る  作者: カマドウマ
一章 招かれし転校生と招かれざる転校生
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非王道転校生 2

 

 ……一瞬思考に溺れそうになった頭を振るって門番に自分の名前を告げながら書類を見せ門を開けてもらい、敷地に入る。まあ、さっき立っていた門の前からこの学園の敷地みたいだが。


 坂を歩きながら周りを見渡す。この長い坂は体力のない人にはきついんだろう。僕は体力あるからいいが、歩きでこの坂を登る人間は滅多に居ないだろう。多分一般の特待などで入った外部生とかは歩いたんじゃなかろうか。

 坂の先にもまだ道があるぐらいだ。この学園は金持ちが多いから大抵車で移動するのを想定されて校舎が配置されている。そう考えたら僕が門の前から歩くのは不自然だったかもしれない。そのせいか門番の人に不振がられていたように思う。


 だが、それもしょうがないだろう。此処は男子校で、校則で意味もなく身内ではない女性を不用意に連れ出来てはいけないというルールがある。兄さん(安曇 苑)の乗る車には女性である幼馴染(静留)が僕を見送るためと言って乗ってたからね。


 ……まぁ、門番に不振に見られた理由はそれだけじゃないだろうけど。


 優しい風が僕の髪を揺らし、風に乗った桜色がちらちらと視界に映り込む。


「…綺麗だな」


 そこら辺に植えられてる桜は今年は咲くのが遅かったのもあって、その殆どが七分咲きぐらいに咲いたばかりだが、既に咲ききってる花からはぱらぱらと花弁が散って降ってくる。


 今歩いている坂から見える中等科や高等科の校舎が立ち並び、さっき外から入ってきた門とは違う校門まである長い坂に植えられた樹齢何歳だかも分からない大きな桜の木が何十と並び咲き乱れるこの景色はとても迫力満点で、人一人居ない状態での桜見はかなり贅沢だ。


 けど、と散った後花びらがしなしなになって道端に集まって見た目悪くなって、新緑が生える頃には毛虫が多く出るんだろう、と夢のない事を考える。見えてる桜は綺麗で好きだけど、ついつい無駄なことを心配してしまった。


 転校の時期がまだ桜が咲いている時期、と言うより満開になったばかりなんだけど……。前の高校の入学式から一週間程しか経っていない。

 この鳳凰学園も先週入学式があったと聞いたし。何なら今日も何処かの学校では入学式をしてるかもしれない。


 僕は一週間より少し前に高校2年に進級したばっかりだ。

 一昨日にこの学園の編入テストを形式的に受けて、昨日制服のサイズを測って注文した。だから今着ている制服は前の学校の物のまま。

 既存の制服もあったが、僕の体のサイズに微妙に合わなかったので特注で作ることになった。針子さんが「作りがいがありますわッ!!!」と言いながら異常に張り切ってたのを思い出す。早く作ってくれればいいよ……。


 その針子さんに聞いた話によるともう一人転校生が居て、その生徒も特注のサイズで新入生全体に行き渡った後、入学式開会直後に突然注文が来て制服を作ったために布とかの材料が切れてしまったらしい。

 また材料もどこかのブランドと同じもので、高級で上質なものだから余計入荷が遅いみたいだ。布やらボタンやらに上質とつく点、流石金持ち学園で有名な鳳凰なだけあるが、どっかのブランドと一緒とか実にどうでもいい。

 それで僕の制服は準備できなかった為、前の学校の制服の物なのだ。まぁ、転校決まったのが有り得ないほど急だったから制服についてはしょうが無い。もう一人転校生が居るのは知っていたし、その転校生の家柄を考えれば後で誂えるわけにはいかず、制服を急ぎで作るのも無理はない話だから。



 僕は数日前のことを思い出した。




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