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夢聞き屋   作者: 伊都 空色
7/10

7 夢と夢の区別  第2シーズン-1 夢聞き屋

これからの話は、まだ、この店が『夢聞き屋』という名

になる前のことだ。私は自分の歳がいくつなのか本当に

忘れてしまった。もっと正確に言うと、覚えておく必要が

なくなっていた。

それは、私の姿が変わらないからだ。

いつから、この姿なのか、ずっと、この姿だったのか

そんなことは、どうでもよくなっていた。

幼女のような姿のままだが、特に不自由なことはなかった。


自分が、どうして、この店にいるのか。

それは、自分の意思ではないのだろう。

ただ、みちびかれるように、子猫の後を追ってここに来た。

迷子まいごになったのか、時間に閉じ込められたのか

店番(みせばんとして誰かが私を選んでくれたのか

それとも自分の意思で、ここに居るのか

もう、それもたいした問題ではなかった。


過ぎた時間が長いとは思ったこともなかった。

これからの時間が長すぎるとも思ったこともない。


『夢聞き屋』という看板をかかげる前は

ここは「職業お悩み相談所」という看板があった。

相談所と言っても、それでお金をもらっていたわけでは

なくて、ここに今でも置いてある古本や古い雑貨の商売

をしていた。

職業お悩みといっても、ようは夢と夢の区別のよう

なことをしてやるのが、私の仕事だった。


将来こうなりたいという夢も、眠っているときに見る夢も

どちらも夢ではあるが、特に、こうなりたいという夢の方

が自分の夢でありながら、一番自分が分かっていないとい

うことに気がついていないことが多いのが人間だ。


それは、夢に向かって頑張っているという者が、心がかわいて

しまって、ギスギスした心で、今の自分のままではダメだ

から、夢を手に入れないと自分の人生に価値がないような

風に考えてしまうと、それは馬の鼻先にぶら下げられては

いるが食べられないニンジンに、夢をしているだけだ。


言ってみれば「ニセモノ」の自分の夢を、夢だと思い込ん

でいるだけで、では本物の自分の夢をどうやって見つけれ

ばいいのか、それを私は、ここへ来た者に教えていた。


自分の本当の夢を見つけるのに、努力も頑張りも必要ない。

だからと言って、それが簡単というわけでもない。

簡単でないと言うのは、「このままの自分ではダメだ」と

いう意識が、そう簡単に変えられないし、てられない

からだ。


ヒーローものや戦隊もので、主人公たちは、最後に合体を

して敵を倒すが、人間も同じように、一番力を出せるのは

自分の中がバラバラではなく、1つに統合された時であり、

必要なのは、頑張ったり、努力したりという前に、自分の

心に、迷いや打算がないということだ。


だから、私は、ここへ来た人間たちに、「今のままの自分は

ダメだ」「今のままの自分は嫌いだ」というその考え方こそ

が、自分を1つにできない、本当に出せる自分の力を知らない

原因であると、ただただ、それを言い聞かせていくだけだ。


今の自分が嫌いだったり、今の自分ではダメだというのは、眠

っている時に見る夢さえも楽しい夢は少ないのかもしれないし、

眠っている時に見る夢が楽しいことが多い人間の方が、本当に

かなえたい自分の夢も知っているのかもしれない。


自分の心が1つでない人間が、追い求める夢は、「悪夢」なの

かもしれない。





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