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夢聞き屋   作者: 伊都 空色
6/10

6 2年先からの「2年前の事件」  夢聞き屋

どこへ行くのか、何をするのか分からないまま、僕と

その子は、店を出て走り出した。

僕は、その子におくれないように後をった。

考えずに、感じたことにしたがえと、心の中でり返し

となえながら、ただ子供のように走った。


右手に見慣れない公園が見えて来た。

僕は、その子に合図あいずした。

その子も気づいて、公園にあった不釣合ふつりあいな門に

近づいて止まった。


その子は、門の前で地面に何かをえがき始めた。

魔法円のようなものだった。

空は夕焼けになって来た。

ボスの説明だと、僕たちは今より2年前の世界に行く

ことになるはずだ。

門が、風にでも動かされたように、ゆっくりといた

その先は、ただの噴水ふんすい場しかなかったが、2人とも

無言で進んだ。

僕たちは、噴水ふんすいの水のアーチの中に入った。

水のアーチが急に、氷ついてしまったかのように止ま

った。


「着いたみたいね」

女の子が言った。

「君の名前を聞いてもいい?」

僕が聞くと

「マナミだけど、マナって呼ばれている」

彼女はスマホを取り出しながら言った。

そしてお互いのスマホのカレンダーを確認した。

彼女のカレンダーでは、2年前になっていたが

僕のカレンダーは今のままだ。

ここが彼女の世界なら、僕だけ2年先と連絡がつく

ということになる。


僕にラインのメッセージが入った。

ボスからだ。

「2年前の事件」?

2年前に何もなくて、彼女は救われたって言っていた

はずなのに、今送られてきた2年先からのこの時代の

事件の内容は、彼女が大きな被害にあったということ

になっていた。

確かに、これを彼女に直接見せるわけにはいかないし、

それを僕が彼女に、うまく伝える役目なのも分かった。

彼女が救われなかったという部分だけは伝えずに、2

年先からの「2年前の事件」の内容を彼女に伝えた。


「ツカサ君、手伝ってくれる?」

今さら、ここに来て手伝わない選択はないと思うが、

彼女が初めて僕を名前で呼んでくれたことに、少し

キュンとしてしまった。

「あと5回、世界を救うために手伝うよ」

僕は君を助けるとは恥ずかしくて言えずそう言った。


2年先から送られてきた「2年前の事件」とは、こうだ。


この街のある中学校で、生徒のSNSでのトラブルで発覚

したSMクラブの常連客との接点が、中学の運動部の顧問

の教師にあるとマスコミ報道があって、まったく関係の

なかった中学の運動部の女子数十人の顔写真がネットに

拡散されてしまった。

そして、その写真の中には、当時はまだ小学生だったマナ

の写真も入っていたのだった。小学生のときでも高校生に

間違われる位だったらしかったが、どうしてそこに混入さ

れてしまったかは、いまだに不明らしい。

それからが事件の本論で、その拡散した写真の学生をター

ゲットした連続傷害事件が起こった。

犯人は声明を出して、これは大人たちの性を道具にした犯罪

ではあるが、大人を罰するよりも、子供つまり、中学生の女子

を傷つける方が、大人は反省するはずだという勝手な理屈の

犯行だった。

そして最初の被害者が出た後、次はこの中の誰かだと犯行を

予告していた。警察も拡散された全部の中学生のガードを徹

てっていしたが、裏をかかれて、被害は小さいものの

どんどんと予告通りに傷害事件に巻き込まれていった。

そんな中、マナの母親が刑事であったこともあり、マナが囮

(おとり)捜査に協力をさせられた。そして本当の事件が起

こったというわけだ。

本当の事件については、今日は時間がなくなったので、次の

機会に説明をするので、しからず。





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