4 因縁(いんねん) 夢聞き屋
恐る恐る鏡を見た。
最初は何も変わっていないと思っていたら、
確かに、僕は幼くなっていた。
中学2年の僕が、小学6年生位にもどってしまって
いた。
「うそじゃないだろう。
だが、何とかして、その理由を自分で知れば、勝
手に変わっていると思っていたものも、自分でコン
トロールが出来るようになってくるんだ。ただし、
色々と条件はあるんだがな。
それに、もどると言ったって4、5歳位で止まるか
ら安心をしろ。ほら私は逆に、大人になっていて、今
は中学1年位になったから、お前と変わらない感じに
なったぞ」
『夢聞き屋』のボスの言うことに、いちいち反応して
いたら、僕の頭が変になりそうだった。
考えるのはよそう。とにかく、今日を何とか乗り切る
ことだけに集中しよう。
「こんにちは」
突然、そこに中学生か高校生の女子が1人入って来た。
ここは誰でも入れる店だが、お客さんが来るのを僕は
初めて見た。
だが、この女子も、この店の呪いのような姿
が日ごとに幼くなったり、逆になったりに
してしまうのだろうか?
そうならないように、早く追い返したらいいのかもしれ
ない。僕はその子に適当なことを言って、ここをすぐに
出て行かせようと思った。
「ごめんなさい。今日は今から棚卸なん
で、お店はもう閉めるんだ」
その子は、不思議そうな顔をして
「この店の子なの? しっかりしてるね。でも、ちょうど
手頃な欲しいものがありそうだから、あと15分位だけな
らいいでしょう?」
その子は、何も知らないから、そんなのん気なことを言っ
てる。どうしたらいいだろう。
「あの、値段とか、付いてないのも多いから、買うのも困
(こま)るでしょう」
僕は、この子に何とか早く帰ってもらえるように言った。
「あら本当だ。値段が付いていないみたいね。だけど、買
う前に教えてもらえれば問題ないから、大丈夫だよ」
この子は一体ここで何を探そうとしているのだろうか。
誰かへあげる物? それとも今から必要な物?
もう、タイムオーバーだ。
そう思って、ボスの方を見ると、寝ていた。
ヨダレを垂らして寝ていた。
「あった。これこれ。この箱に入ったやつは、いくらか
教えて欲しいんだけど」
その子は手にした箱を、僕に差し出した。
ボスを起こして、箱入りの品の値段を聞いた。
「それは、売れない、非売品だ」
もしかして、値段が付いていない物は全部が非売品なのか?
ここは、物は売らずに、展示しているだけの店なのか?
「まあ、どうしても欲しいというなら、出来なくはないが」
持って回った言い方がボスは好きだな。
女こ子が、ボスの前に来て言った。
「今日はダメだけど、違う日なら大丈夫ってこと?
それとも、お金じゃないってこと?」
「お前さんの時間を少しだけ、分けてもらえればいいんだ。
無理にとは言わない。
後でこんなことだとは思わなかったとかクレームを言われ
ても困るからな。
時間を分けてもらうって言ったって、少し若くなる程度の
ことだからな」
ボスは、僕にはしてくれなかった説明を、その子には普通に
していた。でも、その程度の説明だと、クレームを当然つけ
られるよ。
「わかった。私はそれでいいから、それを買ったっていう
ことでいいわね」
その子は、そう言って店を出て行った。
「あの子、また、ここに来ますかね?
それよりも、どうして僕には、さっきのような説明はして
くれなかったんですか」
僕は、ふてくされ気味に行った。
「説明してなかったか? てっきり説明したと思っていたが」
この人なら答えそうなことだった。
「あの子とは、私らは何か、因縁があるんだよ」
ボスがボソっとつぶやいた。




