俺たちの戦いはここで終わりだ
俺の名前は高木伴睦。田んぼの中に新幹線の駅を作った某政治家に憧れて親が名づけたようだ。俺には理解できないのでさっさと改名したいと思っている。俺は第二陣と言われるそこそこの大学を卒業し、今は従業員500人ほどのいわゆる大企業に勤めている。 大学では史学を学んでいたため就職先は教師か学芸員かと思っていたが、意外にも民間企業に就職してしまった。そんな俺だが、とてつもない危機に瀕している。
今年は2023年、世界経済はインドなどの経済発展に伴い世界規模で物価が急上昇、物資は不足し特に生産性の低い日本ではスタグフレーションが進行し始めている。2016年のGDPを見ても国全体では3位だが、一人当たりで見ると30位とまあ昔から国際競争力もあまり高くなかったくせにろくな対策もしてこなかったから当然といえば当然のことだが…
そんな世界の波に飲まれ、我が社もまた解散の危機に直面している。やはり経営は厳しいらしく、このままでは利益が出る見込みがないらしい。
我が社は輸出入貿易や国内における物資の販売を業務の中心にした、いわゆる商社というやつで、世界経済の影響をモロに受けるのだ。そして今、社運をかけて新天地を求めるプロジェクトが立ち上がった。その辛く厳しそうなプロジェクトメンバーにこの俺、高木伴睦が入ってしまっていた。その上、会社に残された余力は少なく、予算もスズメの涙ほどしかないのである。これは完全に終わった。どうにかしてこの仕事、止める方法はないものか…