帰城
ラード・・・この物語の主人公、ディスバード第一将軍
トム=ヴァードウェイ・・・ラードの副官
カトレア・フルート・・・ラードの副官
ベルセルク城・・・ラードが城主の城、ディスバードの西北部に位置する。
緊急の打ち合わせがあった翌日、ディスバード中で発表があった。
「二週間後の午前10時に、隣の第六大陸ヘレンに攻めいるために進軍を開始する!!必ずこの戦に勝つために、民からの支援を頼みたい!!」
開戦の発表がされて一週間がたった頃
、第五大陸「ディスバード」の主城、アラサーク城から、ラードの城「ベルセルク城」に向かう馬上にて。
俺、ラードは自城に帰城していた。
俺はディスバードの西北部に位置する、ベルセルクという地域を貰っていた。
まぁ、要するにベルセルクの領主様兼ディスバード第一将軍てとこかな。
アラサーク城で雑務をこなしていたので、帰城するのは1ヵ月ぶりになる。
行きも帰りも護衛を含めて5人だけ。本当は護衛なんて要らないけどね。でもうちの副官がうるさいから付けているだけ。
特にすることもなく気持ちよく歌を歌っていると、
「し、将軍、うるさいです。」
「鼓膜破れそうです。」
「耳から血を流して死にそうです。」
「頭がおかしくなりそうです。」
と、不評だった。
「俺の歌をそんなに聞きたくないのか?」
と聞くと光の速さで、
「「「「聞きたくないです」」」」
と、即答された。
完全に心が折れた俺は、城に着くまでは黙っていようと心に決めた。
30分位完全に沈黙してると、ベルセルク城が見えてきた。
まだ、昼前だから兵士達が訓練に励んでいるところだろう。
門の前に着くと、副官の一人トム=ヴァードウェイが、迎えに出てくれていた。
「おかえりなさい、将軍。」
「おう、ただいま。」
トムは少し気の弱そうだが、行動力があり、戦闘の腕も立つ、しっかり者だ。
「カトレアはどこだ?」
「カトレアさんなら、訓練所で指導中です。」
「カトレア直々に指導しているのか。珍しいな。」
「そうでしょうね、開戦の発表がありましたしね、やる気が湧き出てきたんでしょう。」
カトレアは女性の副官で、貴族の血筋を継いでいる。 ちなみにトムは平民だ。
カトレアは貴族の娘ながら、剣の腕が立ち、ディスバード三大女剣士として、名が通っている。
因みに俺も平民の出身で、コロッセオで、戦っているうちに、ユミ様の目に留まり、将軍にスカウトされた。魔法も使えるが、威力が強すぎるので、普段は使ってない。
魔法、それは太古の技術。
約50年前、創世の謎が解明された時の、副産物。
大昔の戦いで、使われていた異能の力、その謎が解明され、復活した力。
魔法はイメージが重要だ。
想いが強ければ強い程魔法も強くなる。
詠唱をし、神との意思の疎通を図り、力を得る。
簡単なように見えるが、実はそうではない。神との意思の疎通が出来るのは、生まれつき魔力量が多い者か、修行をして魔力量を増やした者だ。
神との意思の疎通は魔力を介して行われる。だから魔力量の多いものは、強力な魔法が撃てる。更にイメージの力を上乗せしたら、更に強い魔法が撃てるようになる。
俺は生まれつきだが、魔力量が他人とケタ違いらしい。無闇に撃つと被害が出るので、普段は使ってない。
しかし、剣の強度増加や、肉体強化は魔力を操作して行っている。
「将軍!おかえりなさい!帰りを心待ちにしておりました!」
「おー!カトレア!訓練ご苦労さん。」
「将軍の方も雑務もつかれさまです!」
「戦の準備は進んでいるか?」
「はい、着々と進んでおります。兵も1万2000は集められそうです。」
「よく頑張った!しかしまだ一週間はあるからな、訓練はしっかりな!」
とカトレアの頭をつい撫でてしまう。
「ちょ、ちょと将軍!?」
「悪い悪い、ついてが置きやすい位置にお前の頭があるもんでな。」
カトレアは小柄だし、俺も身長は高い方だから、ちょうど置きやすい位置なんだよな。
「まぁ、気を緩めることのないようにな。」
そう言ってその場から去る。
自室に戻ると、シャワーを浴び、服を着替えてベットに潜り込む。久々に自城に帰って安心したのか、気持ちの良い昼寝が出来た。
起きると夕方になっていた。
もう少しで夕食かと思っていた時に、ドアをノックする音が聞こえた。
「将軍、起きましたか?」
トムが起こしに来たらしい。
「起きてるぞー。」
するとドアが開き、ドアの隙間からトムが覗いた。
「どうかしたか?」
「もうすぐ夕食なので起こしに来ました。」
「そうか、すぐ行く。」
俺は一応将軍だ。なのでわざわざ食堂に行かなくても、メイドや使用人が食事を運んできてくれるが、そんなことしてもらわなくても、食堂に行けば皆と食べれるし、楽しいから食事を持ってきてもらう必要は無い。
しかし、カトレアは食堂には来ず部屋で食べてるようだった。
「将軍~、こっち取っときました。」
トムが先に行って席をとってくれていたようだ。
「おお、悪いな。」
「将軍お久しぶりです。」
「主城での雑務お疲れ様です。」
会うと多くの兵士が、挨拶をして来てくれる。こんな当たり前の光景が嬉しく思うのは何故だろう。
主城では、
「こいつが、女長様のお慈悲で、将軍に取り立てられた若僧か。」
とか、
「こんな若いヤツに何ができるというのだ。」
とか、白い目で見られている。
そりゃそうだろう、試験も何もせずに一国の将軍になれたのだから、憎まれるのも仕方がない。
まぁ、もう少ししたら戦だ。戦場に私情は持ち込まないだろうし。
夕食を皆で頂いた後、すぐに部屋で爆睡した。




