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初投稿です。私が好きな異世界トリップ。
「おや?キミは、ここで一体何をやっているの?」
地面に座り込んだ私の目線に合わせるかのように、その人はしゃがみこんで、心持ち首を右に傾けてそう尋ねた。
銀色で、女の私にとって羨ましいほどのサラサラな髪の毛がそれに合わせて右へ揺れた。
ここで何をやっているか…?
そんなのは、私が一番知りたいことだ。
目の前のひどく美しい顔をした男性(髪は長いし、整った顔で間違えそうになるが声は低く響いたので男性に違いない)は誰なのか。
銀色の髪の毛がこの世界に存在したのか。
そもそも、明らかに日本人ではないその顔なのに、日本語を喋っているのはナゼなのか。
それらのことよりも、ここはどこなのか。
見たことのない立派な西洋のお城がそびえ立つのを目前に、手入れの行き届いた広大な庭のような所に、なぜ私がいるのか。
私は、確かに先ほどまでは________
「おや、キミは口がきけないの?それとも、ボクが言ってる言葉が分からないの?そういえば、その顔立ちはこの国ではあんまり見かけないなぁ。黒の瞳は珍しいね。茶色の髪は一般的だけどね。キミ、どこの国の客人?それよりさ、そんな地面に座り込んで冷たくないの?せっかくの衣装が汚れてしまうよ。キレイなドレスなのに。もしかして、転んでしまってどこか打ち所が悪くて立てないのかな?どう?」
呆然としてしまって言葉を発しない私に、その人は一人で矢継ぎ早に喋りかけてくる。
とりあえず、目の前に差し出されたその人の手の平に、無意識のうちに自分の手を重ね合わせた。
と、その人が立ち上がると同時に私の手も引っ張られ、必然的に私も立ち上がる。
「うん、立てるね。どこも痛くなさそうだし。はぐれて迷子になってしまったのかな?ご両親から離れてはいけないよ。ここの敷地は複雑に入り組んでいるからね、他国の客人がこの国の護衛もつけずに入り込んでしまってはなかなか抜け出せないよ。それにしても、どうやってここにたどり着いたんだろうね。今日は要所要所に警備のものをいつも以上に配置しているのに」
この人は、喋りだすと長いのだろうか____そう思うくらいには、私は僅かながらも冷静になれたらしい。
それとも、柔らかく喋るこの人のお陰だろうか。肩から足首までを覆うゆったりした純白のローブのような衣装が、どこか神聖なものを思わせたのも加わったかもしれない。
これが威圧感たっぷりのムキムキマッチョの男性ならば、こうはいかなかっただろう。
この人の話からすると、私はどうやら思いかけない場所に迷い込んでしまったらしい。
でも、そんな筈はない。
だが、夢とも思えない。先ほどから繋がったままのこの人の手は生身の人間の暖かさだ。
そして、妙にリアルに肌に触れる心地よい風。景色。
それよりも何よりも、頭を占めるのは…
「どうしよう……」
くしゃりと自分の顔が歪むのが分かる。
鼻の奥がツンとする。
去年成人式を迎えたばかりだというのに。情けない。
「おや?喋れるし、通じているようだね。それにしてもその声______ 」
どうしようどうしよう。どうして。
至近距離にいるはずのその人の声が途中で聞こえなくなるくらい、私の頭は「どうして」が回る。
大切な、大切な日だったのに。
大切な瞬間だったのに。今日のこの日のために。私は私は。
いつもの心地よい緊張感とは比べ物にならないくらいの重圧感。大丈夫、私なら大丈夫。いつも通りにやれば大丈夫。そう無理矢理に思いこまないと倒れそうになった。
もしかしたら、一生がここで決まるかもしれない。
舞台袖で、私は胸の前で固く手を握り合わせた。いつものやりきった後の喜びと快感を思い浮かべて。
そうして、私はスポットライトのあたる場所へと舞台袖から一歩を踏み出し_______
気付いたら、ここにいたのだ。ほんの瞬きほどにもならない一瞬。
足に力が入らず、ヘタリと座り込んでいた。
「どうして……」
知らぬうちに流れていたらしい涙を、目の前の男性の指がそっと拭った。
「やっと喋ったかと思ったら、『どうして』ばかりだね、キミは。とりあえず広間に戻ろうか。キミの付き添いもそこにいるだろうからね。あぁ、でも泣き止んでくれないと、まるでボクが泣かせたみたいじゃないか。困ったな。兄上たちに何を言われることやら…。普段からあのヒトたちはボクのやることなすことに文句言うんだから。ねぇ、キミ______」
「連れてって!お願いします!早く私を連れてってください!私の出番の直前だったんです!大切な、大切なコンクールなんです!」
「おぉっと」
広間とは控え室のこと?付き添いって、先生のこと?この人は関係者?
そうしたら、ここはもしかしたら会場の敷地内かもしれない。こんな場所があるなんて、そもそもこんなに広いなんて聞いたことがない。
でも、私がきっと知らないだけ。何度かコンクールで足を運んだ馴染みのある会場だけど、そう。知らなかっただけ。
一縷の望みにかけて、私は必死に目の前の人に縋った。
「こんくーる?出番?ん~、何のことか分からないけど。ご両親の元へ行きたいんだね。心細くなるのも分かるよ。キミみたいな年齢の子は、まだ庇護されてるべき頃だしね。あぁ、でも「もう子供じゃないわ!」って反抗したくなる年頃になったのだろうか。それで一人抜け出してきたのかな?よく分かるよ、その気持ち。ボクも、いっつも兄上たちに閉じ込められそうになるんだ。もう成人して久しいのにね!それにしても、キミの声はなんてキレイなんだろう。透き通るようでいて、耳に心地いいね。女性特有の高い声ではあるけれど、キンキンと耳障りではないし。もっと話してくれないかな。ずっと聞いていたいよ」
私の手をいつの間にか両手で握り締めて、その人は見下ろしてくる。
なんて話が長い人なんだろう。口を挟む隙間もない。もしかしたら、私に聞いてほしいのではなく、自分が喋りたいだけなのではないか・・・
そう思っていたのだが、声のことを言われてハッとした。
(いけない、少し叫んでしまった。喉は大切にしないと。全ては、今日のため)
「あ、あの。お願いします。早く連れていってください。私、どうやらこの場所を知らないようで・・・」
はやる気持ちを抑えてお願いする。
「うん、いいよ。だってボクはここの_____」
「あのっ。ごめんなさい。私、少し・・というか、かなり急いでいるんです」
会場への道が分からない以上、頼るのはこの人しかいない。
また喋り続けそうな雰囲気を慌てて制した。
「じゃぁ、少し走る?」
「お願いします」
「え、ホント?キミって面白いね~」
ニヤって笑みを浮かべたと思ったら、今度は驚かれた。
だけどそんなことに構ってるヒマはない。
自分の出番には確実に間に合ってないだろう。だけど、私が舞台袖でスタンバイしていたことは知られてるはず。
急激な腹痛で、とか言えば、最後に回してくれるかもしれない。
一縷の望みにかける。
こんな時に、ドレスと高いヒールが不便でならない。
美容院でセットした髪も、走ったらきっとほつれてしまうだろう。
走りにくい私に合わせてか、小走りなその人の背中を必死に追いかけた。
その先で、絶望が待っているとも知らずに。
短編にしようと思ったのですが、1話で終わりきれませんでした。短めで終わる予定です。(希望)




