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第四話 パーティー

~side 彰人・アルネイル城~


門を潜ると、中には物凄い光景が広がっていた。


「うわ・・・・」


言葉も出ない程の人、人、人・・・最近あまり外に出ることのなかった彰人にとって、そこの某ネズミの国のような人口密度は恐るべきものだった。

無意識の内に後退りをしていたが、そんな抵抗は無駄に等しい。


「勇者殿がいらしてくれて、我等は本当に僥倖ぞ!!」

「何と言っても、勇者さまは地球と呼ばれる星に住む最強の人間ですからね!」

「け、結構素敵、かも・・・」

「あっ、ずるーい!!私が先に目を付けたんだからね!」


ワイワイガヤガヤと様々な会話がホールで飛び交っている。

勇者と呼ばれるのはむず痒いが、それでも悪い気はしなかった。無意識に身体は後ずさるけど。


「勇者さま」

「ん?どうしたの、ユ──」


ユキの声だと思い振り向くと、そこには先程まで一緒にいた可愛らしい少女──ではなく、美しさの際立つ淑女のような佇まいの美少女が立っていた。


「・・・・」

「?どうか、なさいしたか?」

「えっ?あ、いや、えっと・・・」


突然の衝撃に言葉が全く出てこなかった。

声自体はユキのものだと思えたが、それと目前の少女が一致しない。

背の高さも全然違うし、同じと言えば桃色の髪の色くらいだろうか。

しかしそれも、先程までは背中まで伸びていたはずなのだが、今は肩の高さ辺りまで──いわゆるショートカットになっていた。


「えっと、魔法・・・かな?」

「魔法?」

「いや、その、さっきも可愛かったけど、とっても大人らしいって感じが・・・」

「えっ・・・?」


彰人は混乱しており、自分が何を口走っているのかすら分かっていない。

ただ、少女はなるほど・・・と苦笑を浮かべた。


「私は姫様ではありませんよ」

「そ、そうなの?」

「はい、ユノ=フルール=アルネイルともうします」

「あ、えっと、如月・・・彰人です」


彰人がしどろもどろに名前を告げると、ユノと名乗った少女は微笑んだ。


「ユノ、とお呼びくださいね。ユキとは双子なんです」


秘密なんですけど、とユノは続けた。

ユノはユキの妹(母体から取り上げられた差らしい)で、普段は戦場に出ているらしい。

この世界での戦争はゲームのようなもので、10対10のチーム戦が主である。

これの指揮官的役割をしているのがユノなのだそうだ。


「じゃあ、やっぱりここはあのゲームの世界と同じ、と考えていいんだね?」

「はい。死ぬこともありませんから、勇者さまは今までどうり"ゲームの延長"として考えてくださって大丈夫ですよ」

「なるほど・・・ありがとうユノ、気が楽になったよ」

「いえ、勇者さまの混乱などは当然のことですから」


ニコニコと擬音がつけられそうな程よく笑う少女だ。

しかもそれが大人っぽい雰囲気とともに絶妙にミスマッチな印象を与えていて、天真爛漫なユキとはまた違った魅力を感じる。


「そういえば、ユキ知らないかな?さっきから見当たらないんだけど」

「ああ、それなら──」

「勇者さまっ!!」


彰人達が話していた廊下の扉の一枚が開くと、パーティー用のドレスを身に纏ったユキ(今度は間違いなく本人)とルル、そしてもう一人、ユキの肩に乗った妖精のような少女が現れた。


「もー、どこに行ってたんですか、勇者さま」

「ごめんごめん・・・と言っても、僕を放置して突然消えたのはルル達だからね!?」

「あーあー、聞こえないデスー」


何とも可愛らしい反応だった。


「まあ、いいけどさ・・・そうだ、ユキ」

「はい、何ですか?」

「お願いがあるんだ」

「はい?」


それは、ごく単純なものだった。

今回短めです。

次話はもう少し早めに更新しますねー

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