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第2話 奇妙な体験

~side 彰人・???~


目の回るような速さで、不思議な空間を落っこちていく。突如目の前に現れた巨大なゲートに呑み込まれてからはや数分、実際に身体がぐるんぐるん回っているので比喩ではなく本当に目が回っていた。


「うわああああああああああああっっ!!?」


終わりの見えない自由落下が続く。あまりの急展開に絶叫をあげることしか出来ない。出来ることといえば、混乱した頭で先程までの呑気だった自分を恨むことぐらいだった。


「いやあああああああああああぁぁぁ!!!」


そういえば昔から、妹が苛められたときなどには後先考えずに暴れまわったりもしたなぁ・・・と、人助けになると我を忘れる性質に今更ながら呆れるしかない。正義感とかそういったものではなく単純に人に手を貸す行為が好きなだけのことだから、昔よく"お人好しの塊"なんて言われても何か違和感のようなものを感じたのだった。


そして、そんな足るに足らない思い出話や家族のこと、愛すべきマイPCのことなどが次々と脳裏をよぎっていき──


──いや、これって、もしかして、走馬灯ですか?


なんということでしょう。つい先程まで自室に置かれていた普通のPCは、匠の粋な計らいにより不思議なゲートを発動させたのです。

この死ぬような感覚をいつでも気軽に発動できるところに、匠の遊び心が感じられますね。


「られねえよぉおおおおおおおっっ!!!」


自分のボケに自分でツッコむ、見事なセルフツッコミだった。




しばらくすると、真っ暗な空間の急落下は唐突に終わりを告げた。何か光のようなものが見えたと思った次の瞬間、彰人の身体はそこに放り出されたのだ。視界が一瞬白く染まり、その後徐々に視力が回復していくにつれて脳が今日もう何度目かの驚愕を感じ取る。


「なっ────」


先程までとは違い、急激な落下でもなければ視界が悪いわけでもない。むしろ目の前に広がるのは、テレビで紹介されてもおかしくないような大絶景だ。海は絵画で描かれるような透明感溢れる青色だし、そこに浮かぶ島々──大きな大陸が中央にあり、それを囲むように大小様々な島々が浮かんでいる──はどこも綺麗であるだろうと思わせる圧倒的な緑と白(おそらく住民地であろう)で覆われている。


「あ・・・あ・・あああ・・・」


しかし、そんな光景を楽しむ余裕など彼にはなかった。もう言葉を発する気力も失せつつあるが、それでも叫ばずにはいられない。


「なんで空なんだよおおおおおおおっっ!?」


パラシュートも持たずにスカイダイビングをしている錯覚に陥りながら、混乱した頭を必死に回転させる。


どうしてこうなった?PCのメールから始まり現在こうして大空をフライトすることになった過程を思い出すが、何一つ科学で説明のつく事柄がない。突如あらわれたゲート、暗黒の穴(?)落下、そしてその出口が上空およそ2000メートルの絶景オマケ付き。


考えれば考えるほど訳がわからなくなっていく。そんな中で、彰人はやけに落下の速度が緩やかになっていくのを感じていた。



~side ???・アルネイル城~


一方、こちらはアルネイル王国の城内にあるとある部屋。


「本当に召喚は成功したのですかっ!?」


そんな声と共に、少女が部屋の中へ飛び込んできた。薄く透明感のある桜色の長髪が揺れ、年齢相応に発育の進んだ身体を上下させながら息を整えている。美しい、というより可愛い、といった方がよりしっくりくるであろう整いつつもあどけなさを残した童顔には、大粒の汗が浮かんでおりここまで走って来たことを分かりやすく示していた。


「はい、姫さま。今、ここの上空約1600メートル辺りにいらっしゃいますですよ!」


部屋の主である少女はにこっと微笑むと、可愛いクマがアップリケされたハンカチを少女に差し出した。こちらは目の前の少女よりさらに年下のようで、やや長めの茶髪をツインテールにしている。ぶかぶかの白衣がまたミスマッチな感じだが、頭脳明晰であることは間違いない。それこそ、召喚するデータを転送する機械や現在行っている風系魔法での重力相殺が全て彼女によるものであることが良い証明材料であるだろう。


「まったく・・・お姉さま、廊下を走るのははしたないですよ?気持ちは分かりますけど・・・」


少女が息を整え終わるのとほぼ同時くらいに、扉が開かれもう一人の少女が入室してきた。


「わはぁ!!お久しぶりですぅー!!」


相手の顔を見たツインテ少女はより一層表情を輝かせ、飛び付き抱きついた。


「もう、いきなり飛び付くと危ないと何度も言っているではありませんか」


桜と比べるとやや色の濃い桃色の髪はまるで双子を思わせるようだが、横に立つ少女に比べて少し背が高い。そのくせ服の上からだが身体の発育はあまり芳しくないように見える。ただ、ツインテ少女が飛び付いたのを悠々と抱き止めるのだから、それなりに筋力などもあるのだろう。


優しくたしなめられると、ツインテ少女は慌てて飛び退いた。


「あっ・・・そうでした。ごめんなさいです」


「いえ、怒っているわけではないのですよ?ただ、色々と・・・ね?」


「そうですねぇ・・・最近は物騒になってきましたですしねぇ・・・」


二人はここ最近の出来事をいくつか思い出し、どちらともなく溜め息を吐く。


「だ、大丈夫ですよっ!勇者さまが来てくださったんですから!!」


そんな空気を打ち払うかのように、姫と呼ばれた少女は机を両手で叩いた。その後、椅子に座って続ける。


「まずは、勇者さまのおもてなしをしましょう。たぶん色々と混乱なさっているでしょうから」


二人はその意見に賛同し、相談を始めた。

えっと、いきなり話が急展開になりましたが、取り敢えず言っておくとこれは異世界ハーレムのバトルとラブコメ和え・・・みたいな感じで書いていく予定です。


キャラや技名なんかはふと変わることがあるかもしれませんので、予めご了承くださいませ。


感想や、ネタ提供なんかがいただけたらとても嬉しいです。もしお暇でしたら新人に付き合ってやってください。


それでは、また次話でお会いしましょう~。

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