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雪の日  作者: ぷりてぃ
15/17

喪失

由の後姿も消え、真っ白な世界に僕一人が残された。


北風の吹きすさぶ音に体を強張らせながら、さっきまでの背中の温もりを思い出しつつ自転車を押す。


大好きなバンドのコンサートに行った時の帰り道も、なんだかこんな感じだった。


熱狂的なライブの余韻に浸りながら、夜になった帰りの道を歩いて、楽しかったはずなのに、楽しすぎてどこか心にぽっかり穴が開いたような感じにさせられる、そんな感じ。


でも、ライブだけじゃ涙は出ないか。そう思いながら、情けないほどに溢れてくる涙を制服の袖で拭き、鼻水をすする。


そういえば、あのバンドのCDも、由が「センスがいい」って言ってくれたっけ。


そう思い出して、また無性に悲しくなる。


どんなくだらない小さなことでも、僕の思い出の中には由が入り込みすぎていて、何を考えても彼女が顔を出す。

そして、また涙を流す。


そうすると体育祭の時に「男のくせに情けない」と言ってきた由の顔が浮かぶ。


やっぱり、何を考えても浮かぶのはこの人だ。




「ただいま……」


家に着いて、体中の雪を払い、制服を脱ぎ捨てる。


その時パサっと乾いた音がして、制服のポケットから紙が出てきた。


「何だ?」と言いながら拾い上げると、見慣れた字で「市村桜くんへ」と書かれた紙が入っていた。


僕は驚き、急いでそれを広げる。


可愛らしいピンク色の紙に白いラインが何本も引かれ、右下に四葉のクローバーの絵が描いてあるシンプルな便箋。


いかにも由らしいと思いながら、僕は読み進めた。


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