第二話 不可解
すると、啓介以外の皆も続々と集まってきだした。
「はあ?」
啓介は中嶋の胸に耳を当て、中嶋の手首に手を当てて脈を測った。
「ないかも」
「ホンマに?」
櫻井は啓介に代わって同じように脈を測りだした。
「死んどるわけな…」
「おい、静かにして」
櫻井は渡辺が言いかけた言葉に割って入って止めさせた。
「はい」
渡辺は食い気味に答えた。
少しの間、張り詰めた静寂が場の空気を支配した。葉が風が揺れる音だけがある。
「うわぁ、ビクックリした!」
その急な櫻井の声に物音すら立たせず
中嶋は目をこすりながらゆっくりと起き上がった。
「うん……、何?」
群がってを中嶋を見守っている俺達と何故か樹海にいる状況にかなり混乱している様だった。
「お前マジ…はぁ、びっくりしたぁ」
「どこ?ここ」
「またかよ」
啓介が乾いた笑いを浮かべた。
「どゆこと?」
そんな率直な質問には混乱しているのが感じ取れる。
「いや〜それがな、誰にもわからんのよ」
啓介は眉間をかきながら言った。
「え?なんやそれ」
「ホンマに、マジどうするよ〜」
さっきまでの緊張感が無くなり、櫻井が話しだした。
「テレビとかのドッキリとかちゃうんかよこれ」
朝日は不機嫌そうだ。
朝日は面倒事を嫌うタイプなのでこういう意図不明のイタズラみたいなのは好ましくないのだろう。
「んなわけ、俺ら一般人やぞ」
中嶋はゆっくりとふらつきながら立ち上がった。
「まあ、森を出るのが先決?」
「いやいや、の前に情報交換が先でしょ」
渡辺の案はすぐに櫻井が否定した。
「えーっと、まず、ここに来るまでの記憶はある?」
啓介は続けて話した。
「トラックがな、転がってきたのは覚えとる。ただ、そっからがない」
中嶋が付いた土を振り払う。
「やっぱそうやんな。けど、サトショウは死んだ?感覚があったんじゃろ?」
櫻井が頭を掻く。
「うん…」
正直不快だ。
思い出しもしたくないし、それについて触れられるのもして欲しくない。
これ以上想起させられるのは真っ平御免なので、注意する気すら失せる。
「え?まじで?」
朝日が口元を右手で隠しながらせせら笑う。
「まあまあ、ホンマに死んどるとするとどうするよ…」
渡辺は気を利かせてくれた。
「けどさ服も制服のままやで、それに佐藤がいっつもつけとる時計とか櫻井のメガネだって」
啓介に言われて、いまさら気づいたが確かに服や靴は元のままだった。バッグや乗っていた自転車こそないものの装着品は着たままだ。
「ガチやん、前取れたボタンの位置まで一緒やん」
中嶋はズボンの後ろポケットを触った。
「なんか色々変じゃない?…。なんか怖」
啓介がそう言った。
「なんで?」
アホな中嶋は聞き返した。
「だって、ほんとに轢かれたんだったら服もビリビリなはずやろ?」
「確かにそうかも…」
しばらく沈黙が続いた。
皆色々と考えている様だった。
そんな時、中嶋の後ろで何か動いた気がした。
風も止んで静まり返った森の中、その緑色だけは動いていた。
半信半疑の中俺はそれに目を凝らした。
人型だが肌が汚い緑色、1メートル位の小柄な体型で髪は無く、棍棒を片手に持っている。
尖り、垂れた耳にどことなく卑しく醜い顔。
―――まさにゴブリンそのものだった。




