闇の民
《前回のあらすじ》ボッタクリが、森に逃げた。
「さぁて。俺達の獲物ちゃん達はどこかな。」
そう言って大男達は松明であたりを照らす。
しかし、何も見えないし、音すらしない。
「おい、爺さんよ。来てねえぞ?諦めたか、見失ったんじゃねえか?」
「馬鹿言うんじゃない!先住民の二つ名を知らないのか!『闇の民』だぞ!」
「だから何だってんだ。」
「彼奴等の本領は夜だと言ってるんだ!」
その時、ヒュン!という音とともに護衛の一人の足に矢が刺さった。
「ぐわぁぁ!」
「どうした!」
「先住民が来たんだ!」
全員が辺りを照らすが、姿は見えない。
しかし、時間が立つにつれ、護衛だけでなく、商人にも矢が刺さり、痛みと、見えない恐怖で、戦う気をなくした。
「クソ…今思えば、アイツのせいだ!あのクソガキ…あいつが指摘さえしなければ…数年間バレなかったのに…あの奴隷のせいで…あいつを殺せれば…」
商人が愚痴ったその時だった。
背後に黒い影が現れ、縄で締め付けられた。
「ぐぁ!」
「家のアランを殺るって?」
「うわぁぁぁぁぁ!」
その時の女の強い眼光に威圧され、商人は恐怖で失禁し、失神した。
そして、残りの奴らも一人残らず、捕獲され、村に連れられた。
村に連れ帰られ、全員に囲まれた時には商人の顔は死人のように白く、護衛の方も冷や汗ダラダラだった。
「…これが、先住民の力…」
俺はこんなの相手に対等にやろうとしてたのか…
強いのは知っていた。それでも対等にやっていきたかった。
けど、こんなに矢だらけのやつが通り過ぎるのを見て、自分もそうなるかもしれないという不安がよぎった。
今回は彼奴等が全面的に悪いから仕方がない。
けど、対等に接しようとした結果、部族の何かに触れてしまった場合、俺がこうなる未来も大いに想像できた。
俺も彼奴等も同じく部外者なんだから。
そんな事を考えていたら、突然肩に手が乗り、ビクッとなった。
「アラン、お手柄だったな。」
「…まぁ。」
罪人の荷物は皆で分けあって、そのままお開きとなった。
そして、俺はその日の分の飯を食べ、眠りについた。
次の日、俺は朝早く、アンに族長たちのところに連れられた。
「連れてきました。」
「ご苦労。」
何だか、あの日のような感じだった。
でも、何したか分からないから、今回は前みたいに強気には出れない。
「アラン、今回の事件はお前のおかげで、発覚した。礼を言う。
そこでだ、特に反抗も無かったし、今回の件を加味して、お前に、チャンスを与えることになった。
次の満月の夜、狩りがある。
お前がそこで、何かを仕留めることができたら、お前を部族の一員として、迎え入れる事とする。」
そう言って返された。
…うん。終わったな。俺は狩猟ができない。
手元にある道具は魔道具だけ。
道具と言うからもしかしたら武器も作れたりするのかもしれないが、俺は剣道とかを習ってないから一切剣を扱えない。
…だが、身の安全を確保するためには部族に入れてもらうしかない。
途中から入った奴がすぐに歓迎されるとは思わないが、それでも肩書はあったほうが良い。
しかし、認めてもらうためにはそれ相応の大きさの獲物がいる。
試しに、俺は昼ごはんを作る時、魔道具を包丁に変えていたが、それを剣にして、肉を切ってみる。
…一応切れた。何の肉かは分からんが、切れるんなら筋繊維が断ち切れるってことだからトドメには使えるかもしれない。
でも、とどめを刺すところまで持っていく方法が分からない。
結局、俺はご主人を頼ることにした。
「ご主人様、お願いがございます。」
「何だい?」
「弓を教えてください。」
「あぁ、そういう事か。肉が取れないのか。」
…嫌なところを突くな…初対面の時、できるけどやってない、みたいな雰囲気を出してたからそこを指摘されると…まぁ良いか。面倒だし、ご主人にならバレてもいいだろう。開き直ってやる。
「お願いします。」
「まぁ、良いよ。」
「ありがたき幸せ。」
こうして、俺は10日間ぐらいスパルタ教育を受けた。
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