ここからは私たちの出番だ。
今日も俺はまた一人黙々と薪を割っています。
その時、アンがこっちに走ってきた。
「おーい。アラン!」
「ご主人様なんでしょう。」
「お前、この前、他の料理も作れるって言ってたよな。」
「え?えぇまぁ。」
「母…族長の命令だ!久々に商隊が来たからお前の腕を全員に振るえとのことだ!」
初めて魚を渡したあの日を境に俺の飯がうまそうだという噂が広まったのだ。
それが数日で族長の耳に入り、アンに味について聞いたところアンが大絶賛だった。
それで、食べたくなったが、魚はそんなにたくさんは捕れない。
だから商隊の買い物をするということらしい。
「商隊か…興味あるな。」
「良し!ついてこい!」
そう言って俺は首の紐を掴まれて勢いよく引きずられながら村の広場に連れて行かれた。
着いた時にはすでに村の広場はごった返していた。
アン曰く、ここには一部の重役を除き、全員がいるらしい。
なるほど、こう見ると、男そのものが少ないんだなこの村は。
一クラスほどの人数がいて、その七割が女。
残り3割が男とは言っても、そこには老人や、子供もいる。
だからこの村は女も狩りをしたりするのか。
というか、この村の女は狩りができるほど逞しいんだろうな。
商隊が売っているものは色々あったが、少し変だと思った。
「…なぁ、これ色々と高くないか?」
「え?こんなもんじゃないのか?」
「そうか…?」
しかし、これを見た途端に確信に変わった。
「おい!このクマの毛皮とこれを交換してくれ!」
「とうもろこしなら、5本ってところだな!」
とうもろこしは一本が銅貨一枚で売ってた。
しかし、毛皮の買い取りは銀貨七枚だ。
これは数少ない街で値段を確認したものだから間違いない!
コイツラはぼったくりだ!
「おい!ちょっと待て!おかしいだろう!」
「お客さん、興奮しないでください。」
「銀貨七枚の毛皮が銅貨五枚分との交換だと?笑わせるな!」
そう言った途端に店主達から笑顔が消えた。
目がキョドっている。
「ど、どうしたんだアラン。落ち着け。」
「コイツラは騙してるんだよ!
俺は街に行ったことがあるから知ってる。
みんなが交換しているものは本来もっと高価なものなんだ!
本当ならその皮一枚で、とうもろこし七百本買えるぞ!」
その瞬間、店の男達が逃げ出した。
「おい待て!」
追いかけようとしたが、紐を引っ張られて止められた。
「おい!何すんだ…」
普段ならこんな口の利き方をしたら怒られるが、そんな事は気にもとめられなかった。
「アラン、ここで待ってろ。」
「おい、早く追いかけろよ!逃げられるぞ!」
「分かってる。だが、お前は弱い。だからここからはお前の出番はない。
…ここからは私たちの出番だ。」
そう言うと、アンは振り向き、声を張り上げた。
「狩猟リーダー・アンの名において命令する!
狩人は弓をとり、三人一組を作り、罪人を捕らえろ!
もう時期暗闇になる。火を目印に捜索せよ!
捕まえたものは裸にして武器を取り上げ、縛って族長に差し出せ!」
《おう!》
そう言うと、全員が家の中に戻り、弓をとり、日が沈む中森の中に飛び込んでいった。
俺は驚きすぎて、暫くはボーッとしていた。
アンが権力があることは分かっていたが、まさかクラス一つ分を束ねられるほどの者だとは…。
俺は何時も魚をねだり、直ぐにぶっ叩くゴリラみたいな子供みたいなアンが、初めて頼もしく見えた。
〜一方ボッタクリたち〜
「ハァ…ハァ…おい!お前達!」
「お?何してんだおっさん。」
馬車の奥から出てきたのは剣を持ったガタイの良い冒険者だった。
「先住民にボッタクリがバレた!守ってくれ!」
「はぁ?面倒くせえな。まだ金も貰ってないのに。」
「ついてくるだけで、大銅貨五枚、外敵から守ったら数に応じて銀貨追加という契約だっただろう!」
「はいはい、分かってるよ。」
「俺たちが生き残れなかったら報酬もパーだからな!」
「ハッ!余裕で蹴散らしてやるよ。
お前達!やるぞ!」
そうして、奥からもガラの悪そうな奴らが3人出てきた。
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