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新たな役職『権力者』

 コンコン

 次の日の同じ刻に再び隊長宅の扉が叩かれた。


 「君か。」

 「お迎えに上がりました。」


 出てきた隊長の服は黒く、夜の中では目立ちにくい格好であった。


 「準備はできている。念の為、明日は休みを取っているから時間は心配するな。」

 「分かりました。では。」


 俺はユルと共に走り出した。

 日本ではこんなに長く走っていられなかっただろう。

 この世界は俺が知らないだけかもしれないが、娯楽が無い。

 だから俺は暇があれば探索をしたり、運動をしたりしていた。

 今ならマラソン五キロ位なら息切れ無しで走れる自信がある。

 しかし、そんな俺を追い越すような勢いで二人は走っている。

 ユルは…よく分かんないが、隊長に関しては流石隊長と言ったところだろう。


 大通りを避け、路地の角を曲がりまくった時、一軒の明かりのついたバーがあった。


 「…ここです。」

 「こんなところにこんな店があったのか…」


 隊長が知らないというのなら他に誰が知るというのだろうか。

 この店は隠れ家として最高なのだと改めて実感した。


 俺は隊長とともに中に入る。

 扉を開けるとカランカランと音がした。


 「いらっしゃい。何が良いかな。」


 ゼゴンは始めの時のようにマスターをしている。


 「…おい、ホントにここなのか?

 普通のガラガラな店みたいだぞ?」


 俺は隊長の言葉を無視して続けた。


 「熟れた桃を買ってきた。」

 「…今日はもう閉店だ。」


 そう言うと、ゼゴンは動き始めた。

 ちなみにこの世界に桃というものは無い。

 だからこそ、暗号にしたのだ。

 店のドアを閉め、そして地下への入り口を開けた。

 そうしてくるりと振り返り、元気よく喋りだした。


 「おかえり、アラン。

 そちらが隊長のアルマ様だね。」

 「ただいま。ゼゴンさん。」

 「…アラン、疑って悪かった。

 はじめまして、衛兵隊長のアルマだ。

 …ここが隠れ家なのか。」

 「まだですよ。」


 そう言って地下を降り、また少し歩いた。

 そうして本当の隠れ家に辿り着いた。

 そこにはレイとルイがいた。


 「お初にお目にかかります。ルイです。」

 「レイです。」

 「はじめまして、アルマだ。」

 「ルイ、レイ、状況説明を始めてくれ。」


 そうして二人による現状の説明が始まった。


《数分後》


 「…なるほど…」

 「協力していただけませんか?」

 「…今の話を聞くと、君たちも色々悪いことをしていないかい?

 君達はそれを堂々と私に話したわけだが…捕まえようと思えば、すぐ捕まえられるぞ?」


 そして何かの道具を見せた。

 恐らく捕獲用の何かだろう。

 俺は念の為胸の短刀に手をかけた。

 ユルもガチの警戒モードだ。


 「文の盗み、下水道跡地の違法使用、他にもいくつか罪を犯していることは事実です。

 しかし、私達は違法な方法で仇を取りたくない。

 できる事なら、しっかりと法の下で裁きを下し、社会的にもアイツを殺したい。

 だからこそ、その為になら幾らでも罪を犯します。

 アイツが無事、納得のいく裁きを受けた暁にはゼゴン、ルイ、レイはそれぞれ自首することを誓います。

 この事を条件に商人バイカルの検挙に協力して頂けませんでしょうか。」


 全員が頭を下げた。

 俺もユルも下げたが、絶対に警戒だけは解かなかった。


 「…不問にするよ。」

 「…え?」

 「今回の事件を検挙するにあたって起こした事は不問にする。

 こちらにも気が付けなかった落ち度があるからね。」


 会話の途中。

 しかしその時、明らかに言葉に憎悪による重みが付与された。


 「それに私は、権力を使って好き勝手するやつが一番キライなんだ。

 副隊長…アイツは絶対に許さん。」


 皆その言葉に威圧されながらも今まで居なかった『権力者』が仲間になった。

 これにより、商人…バイカルの検挙に一歩近づいた。

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