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上が駄目なら上の上

 真っ暗な闇の中で、屋根の上を走っている2つの人影があった。

 この世界の家の屋根は真ん中が平らになっていて高所恐怖症でもなければ素人でも簡単に走れるのだ。

 大きい影が手招きをし、その後ろを小さい影が付いて行く。

 そしてそれらの影は急に止まった。


 「…え〜っと…次は…右か?

 あれ?でも、あそこがパン屋だろ?それなら左か?」

 「お兄ちゃん、大丈夫?

 地図、読める?」

 「大丈夫、多分あっちだ。」

 「見せて…うん。違うね。こっちだね。」

 「あれ?」


 現在、俺たちは皆から地図をもらって、隊長宅に向かっている途中である。

 そして、絶賛迷子である。

 こんな時に限って、俺の方向音痴ぶりが発揮され、時間がかかっている。


 「さっさと隊長の家に侵入して話を聞いてもらわなきゃいけないのに…」


 なんやかんやでその後も道を間違え、隊長の家に着くには三十分かかった。


 「この家か…」


 これといった特徴もない家。

 ぶっちゃけ、ここが本当に隊長の家なのかも分からない。


 「どうする?突撃する?それともノックする?」

 「突撃したら、第一印象最悪だよ?」

 「じゃあ、普通に尋ねようか。」


 俺たちは扉の前に立ちノックした。


 「は~い…」


 数秒後、中から寝間着姿の女性が出てきた。


 「夜分遅くに申し訳ございません。緊急のご相談があり、隊長様に尋ねてまいりました。」


 俺は喋りながら隣をチラッと見た。


 …なんだよユル。

 別に隣でそんな驚いた目で見なくていいだろ。

 …いくら方向音痴でも一定程度の常識は持ってるぞ?


 「確かに私が、隊長だが、用あるなら本部の方に行ってくれ。あそこならまだ開いている。」

 「そういうわけには行きません。」

 「何故だ。」

 「この問題を至急解決しませんと、隊長様の知らないところで、街全体に悪が蔓延る事となるためです。」

 「私が、知らないところ?」

 「そうです。その悪には副隊長が関与しております。」

 「…家に上がれ、その話に信憑性があるかどうか判断する。」


 俺たちは家に入れてもらえた。

 そして、暖炉の前の椅子に腰を下ろした。


 「こんな格好で悪いが、早速聞かせろ。」

 「はい。それではまず、…………」


 俺は事の一部始終を話した。

 俺の仲間の子供が攫われたこと。

 そいつらを追ってここにたどり着いこと。

 情報収集の過程で同士を見つけたこと。

 犯人が判明したこと。

 そいつの強力者の中に副隊長がいること。

 それに対処してもらうために隊長様に尋ねたこと。


 「……俄には信じがたい。商人の方は分かるが、アイツが加担するとは思えないな…」

 「商人と副隊長が文で奴隷関係のやり取りしていることも確認済みです。」

 「具体的にはどんな?」

 「何時に奴隷を入れた馬車が戻るのか。

 衛兵はどんなルートで誰が巡回するのか。

 金をいくら払うのか。」

 「…その文は絶対にアイツの物だと言えるのか。」


 俺は懐から文を一つ取り出した。


 「これが全ての証拠です。」


 そこには、今喋った内容と、商人、副隊長のそれぞれの印が押してあった。


 「…あぁ。 残念だ。ホントにアイツが関与しているんだな。」

 「…隊長様。是非ご協力願えませんか?」

 「良いだろう。この街にはびこる悪は何としてでも倒す。それが我々衛兵の仕事だ。」

 「では、そろそろ日が昇りそうなので、退散させていただきます。今日の夜にまた訪ねさせていただきます。」

 「分かった。」


 そうして、俺達は無事に隊長を説得することに成功した。

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