家の秘密
次の日
「良し、ユルちゃん!始めてくれ!」
「ユル、頼む。」
「は~い」
ユルは屈み込み、虫と見つめあっている。
時々相槌を打ち、最後には手に持っていたミルクを追加で渡していた。
「ミルクはもう払ったんじゃないのか?」
「お兄ちゃん焦りすぎ、一から説明するから待ってて。」
そう言って俺たちは会議室に行き、ユルの報告を聞くことにした。
「まず見取り図ね。」
そう言うと、ユルは図面を描き始めた。
「…これ、三階?」
レイが地図を覗き込んで言った。
「え?地下を調べるんじゃないの?」
「追加で調べてもらったの。
その時に犠牲が大量に出たから追加でミルクを渡したの。」
「…あれ?」
ゼゴンが首を傾げた。
「ゼゴン、どうしたんだ?」
「レイが描いた見取り図に、こんな所あったかな?」
丁度三階の真ん中に空間があった。
「ユル、ここは何があったんだ?」
「縦に長くて、所々に出っ張りがある木があったんだって。」
「…木を丸ごと使ったタイプの螺旋階段か?」
「それは変じゃない?アイツの家にはちゃんと普通の階段があるわ。」
次に二階を描いた。そこにもさっきと同じ位置に空間があった。
そして、一階にも地下へと続くそれがあった。
他にも一階には普通の地下への階段もあった。
「次が地下ね。」
「…!」
「これは…!」
全員が驚くのも無理はなかった。
地下につながっていたところにあるのは全て同じ大きさの無数の部屋。
普通の階段が繋がっていたのは区切られている別の所だった。
「間違いない…牢屋だ。」
「こんなに多くの部屋…一体何人居るんだ!」
「秘密の階段を使ったタイプの部屋におとりの地下階段…どおりで見つからないわけだ。」
「このまま地下に行ったら怪しまれてたかもしれないわね。」
俺たちと繋がる地下への入り口はそこの端っこにあった。
「ここからだと、バレたとしても人が集まるまで時間に余裕があるわね。」
「だが、助けようとしても素直に従ってくれるかどうか…」
「人が多ければその分リスクが上がってしまいます。」
「だが、やるなら全員助けないと…」
予想外の広さ、そのため作戦は少し止まってしまった。
「…少し聞きたいんですが、皆さんは皆を助けた後、商人をどうするつもりなんですか?」
「無論、成敗する。」
「つまり殺すと?」
「当たり前よ。あんな奴は即刻死んだほうが良いわ。」
「…裁けないんですか?」
「前にも言ったが、ここの衛兵の上層部が買収されている。この街で裁くのは無理だ。」
「でも、町人は買収されてませんよね?」
「そうだな。」
「なら、皆の前で証拠を提示すれば何とかなりませんか?」
「仮にやるなら、どうするんだ。」
「助ける時に交換条件をつけるんです。
何処でどんなふうに捕まったのか。何をされてきたのか。それらを証言してもらうんです。」
「…」
「それに、上層部って言ってましたけど、具体的には何処なんですか?」
「衛兵の副隊長だ。隊長は真面目で正義感が強い素晴らしい方だが、仕事が多過ぎるせいで基本的に巡回に行ったりする暇もなく、動けない。だから副隊長が実質的な権力を持っている。」
「副隊長と商人が繋がっている証拠は?」
「彼奴等の過去の秘密文を二十通ほど持っている。」
「それが彼らのものと言える客観的な証拠は?」
「全ての秘密文に副隊長と商人の両方の印が押されている。」
「つまり、証拠は揃っていると。」
俺はにやりと笑った。
「…おい待て、何をする気だ。」
「俺はこれから捕まるかもしれませんが、賭けに出ます。」
「ホントに何する気なの?!」
全員が俺を凝視する。
俺は、ユルの手をつなぎ、力強く言った。
「俺は、副隊長と商人を法的に裁くために、隊長が家にいるタイミングで、家に侵入し、協力してもらえるように、直訴しに行きます!」
「「…はぁ〜?!」」
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