一緒に練習しない?
「今日の練習はここまで!」
先輩の声が響き、俺たちは一斉に礼をする。
「ありがとうございました!」
練習を終えて道場を出ると、心地よい疲労が体に広がっていく。
「ふぅ……今日はずっと弓を引く練習だったね」
隣で綾音が腕を伸ばしながら呟く。俺も肩を回しながら頷いた。
「でも、弓を持つのにも慣れてきた気がする」
「うん! 最初は全然引けなかったけど、少しずつコツが掴めてきた感じがするよね」
そう言って、綾音は楽しそうに笑う。
道場の戸締まりを先輩に任せ、俺たちは並んで帰路についた。
「ねえ、一緒に練習しない?」
綾音がふとそう言った。
「え?」
「家で、一緒に弓道の練習しようよ」
突然の誘いに俺は少し驚いた。
「でも、家に弓とかあるの?」
「さすがに弓はないけど、基本の姿勢とか動作の練習ならできるでしょ? それに、射法八節の動きとかも、まだまだ体に馴染んでないし……一緒にやれば、お互いに確認できるかなって」
なるほど、それは確かに良いかもしれない。
「そうだな……じゃあ、やってみようか」
俺がそう答えると、綾音は嬉しそうに微笑んだ。
「やった! じゃあ、帰ったらちょっと休憩してから始めよっか」
俺たちは並んで歩きながら、家に向かう。
「でも、どうして急に一緒に練習しようって思ったんだ?」
ふと気になって尋ねると、綾音は少し考え込むような仕草を見せた後、ゆっくりと口を開いた。
「うーん……なんだろう。やっぱり、せっかく弓道部に入ったからには、ちゃんと上手くなりたいし……それに、一人でやるより誰かと一緒の方が、楽しいかなって」
「なるほどな」
確かに、家で一人で練習するよりも、お互いに確認しながらやった方が効率が良いし、何より続けやすい。
「それにね……」
綾音が少しだけ声を落とす。
「私、昔から運動とか苦手で……だから、こういうのも最初は不安だったんだ。でも、あんたと一緒にやってると、不思議と頑張れる気がする」
そう言って、綾音は少し恥ずかしそうに笑った。
「だから、もし迷惑じゃなかったら、一緒に練習してくれると嬉しいな」
「迷惑なんてことはないさ。むしろ、一緒にやった方が俺も助かるし」
そう答えると、綾音はパッと明るい表情になった。
「じゃあ決まり! 帰ったらちょっと休憩してから、さっそく練習しよ!」
こうして、俺たちは弓道の練習を家でも続けることになった。
——まだまだ始まったばかりの弓道生活。でも、この小さな積み重ねが、きっと俺たちを成長させてくれるはずだ。