第八話 定例報告と嬉しい提案
私と紗理奈は定例報告が行われる奥の大広間まで来た。部屋の中に居るのは全員当主だ。
前まではおばあちゃんが当主代理としてここに来ていたが、 今回は私の番だ。
「九魂家当主の九魂寺 祭です。 隣に居るのは良き理解者の日比野紗理奈です。
今回はこの二人で定例報告に参加しに来ました」
「あぁ、今回はお母様とお父様は居ないのか。 あ、いやすまない。 もうとっくに死んでたのか」
二魂家の当主だけはこの言葉を聞いて笑わなかった。
だが、他の当主はみなケラケラと笑っていた。
「ふふっ、、 すまない。 座っていいぞ」
「分かりました」
私は一魂家当主の指示に従い座る事にした。 初めてこの体質で良いと思ったよ、、、
この体質じゃなかったら今頃殴ってたよ、、
「ちょっと、、 酷くない?」
「こういうのだから我慢して」
「、、、分かったよ、、」
私達が座ったと同時に大広間の襖が勢いよく開いた。
「すいませんねぇ? 遅れてしもて。ていうかさっきなんで笑っとったんですか? 皆さん方。
あ、、 もしかして自分の顔があまりにも不細工だった事に気づいて笑ったとかですか?
あ、、 ちゃうちゃう間違えた。 不細工なのはどうやら顔じゃなくてその心の方らしいね」
「ふっ、、 負け犬がよく吠える。 まぁ、いい。 子犬の声なんかノイズに等しい物だ。
早く座れ、 定例報告を始めるぞ」
「あんた達と違ってお利口なワンコやから座らしてもらいますね〜! わんわん〜!」
喜代太さんは私達の隣に座った。 ありがとう、、喜代太さん。 私の事を庇ってくれて、、、
『では、 皆揃ったので第1224回定例報告を始める』
「では、まず二魂家の当主二魂寺 朱雀から始めよ」
「承知致しました。 では、早速報告致します。 まず、 私朱雀は
奈良県で5体
京都府で3体
三重県で4体
和歌山県で2体 計14体祓いました。
続いて娘の宵宮
大阪府で10体
滋賀県で2体
福井県で4体
兵庫県で3体 計19体祓いました。 報告は以上です」
「ねぇねぇ祭。 宵宮って人の方が多いんだね? 祓った数」
「そりゃ、 あの子は若いしこの分野に関しては天才だからね」
「天才だけど、、 性格はアレなんだね、、、」
「はいはい、 その話は後で。 他の当主の報告聞くよ?」
「次、三魂家当主 玄武始めよ」
「はいはい、 分かりましたよ。 じゃあまず俺から
岐阜で4体
長野で6体
富山で3体
愛知で2体 計15体や
で、 息子と娘はまだ歳が歳やから無しや」
「次、四魂家当主 白虎始めよ」
「了解致しましたわ。 青竜様。 私白虎の祓った数は
鳥取県で2体
島根県で3体
山口県で3体
広島で2体
岡山で1体 計11体でございます。
息子娘は調査をしていた為祓えておりません」
「次五魂家 天空始めよ」
「ふわぁ〜、、、 はいはい。 始めますよ、、
香川県で3体
徳島県で2体
高知県で4体
愛媛県で1体 計10体です〜。
息子娘はまだ産んでないのでいませ〜ん」
「次六魂家 六合始めよ」
「了解致しまた。 長いのでまとめて言わさしてもらいます。 六魂家全員の数です。
山口県で2体
九州全体で20体 計22体でございます」
「次七魂家当主 天后始めよ」
「了解。 始めさして頂くわ、、 と言っても長いのは嫌だからまとめて言うわね。
東北地方で30体 七魂家全員でよ」
「次八魂家当主 喜代太始めよ」
「順番も来た事やし言ったるで〜?
って、 行きたいとこやけど今回は家族全員で旅行に行ってたからめちゃ少ないで
沖縄で2体 終わりや」
喜代太さんの報告数を聞いた他の当主はみな驚いた表情を浮かべていた。
まぁ、、、 旅行に行ってたなら仕方ないよ。
「、、、次九魂家当主 祭始めよ」
「始めさしていただきます。 まず、 東京、、、 と行きたい所ですが数が多いので省略させていただきます。 全国で計124体祓いました」
「お〜、、、 さすが祭ちゃん。 天才やな」
どうやらここの中で私の発言を信じてるのは朱雀さんと喜代太さんだけみたいだ、、
「祭ちゃん〜。 嘘は良くないよ〜」
「嘘じゃありません。 事実です。 このままじゃ皆さん信じないと思いますので報告書を渡しますね」
私は出発前に作った報告書を当主達に渡していった。 当主達は報告書をペラペラとめくり中身を見ていった。
「祭ちゃん〜、、、 本当だったんだね〜? 疑ってごめんね〜」
「慣れてますので大丈夫です」
「ねぇ、、、祭さん。 これ、全部貴方が祓ったの?」
「轆轤首以外は全て私です」
「え? じゃあ轆轤首は?」
「隣の紗理奈と協力して祓いました」
「へ〜、、、 なるほど〜」
「じゃあ私達の報告が終わったので次は一魂家の番じゃないですか?」
「言わなくても分かっている。 こちらも全国だ。 計98体だ」
へへ、、 私達の方が多いや。
「何ニヤついているんだ九魂家当主。 こんなに妖怪や呪いが溢れたのはお前達のせいだろう」
「ちょいちょいちょい!! 祓った数負けたからって変な所で噛み付かへんの!! あんたは犬か」
「ふん、今日はもういい。 解散だ」
どうやら喜代太さんの一言で頭に来たようだ。
一魂家当主は怒った形相を浮かべながら部屋から出て行ってしまった。
他の当主も終わったことに驚きつつも続いて出て行った。
部屋の中には私たちと喜代太さんが残った。
「もうちょい長くなるっておもてたんやけどめちゃ早く終わってもーたね」
「そうですね。 いつもより早いですね」
「どうすんの祭ちゃん達は?」
「京都観光と行きたかったですけど、あんな事あって動ける生力少なくなってるんで
どうしようかなって感じです」
「時間も時間だもんね、、、」
「んじゃあさ、八魂家に来るか? 祭ちゃん達まだまだ京都に居るつもりやろ?
ホテルに泊まんのもアレやからウチ泊まりなよ」
「私達としてはとても嬉しい提案ですけど、、新奈さんに聞かなくていいんですか?」
「連絡するから大丈夫やで、祭ちゃん。 ちょいと待っててな」
喜代太さんは大広間を出て行き新奈さんに電話をかけた。
その通話は数分もしないうちに終わり、 私達の元に戻ってきた。
「めちゃめちゃおーけい!! やってさ。 んじゃあ予定も決まった事やし行こか!」
やった!! ホテルに使うお金が減った!! えへ、えへへへ
「じゃ、いこっか!! 紗理奈!!」
「うん!」
私達は喜代太さん達が住む八魂寺に行くことになった。
本当は京都で観光〜!! と行きたかったが宵宮にあんな事をされて出来なくなってしまった。
だからこそこの様な提案はとても嬉しい、、!
私達は三魂家を出て八魂家の家がある方面へと車で向かう事にした。