第六話 危険因子と二魂家当主
同日 9時
私達は喜代太さんの車で三魂家が住んでる、三魂神社まで来る事が出来た。
やっぱりここら辺は何も変わんないなぁ〜
「じゃあ、三魂家に着いた事やし降りよか。 もちろん、祭ちゃんは降りるの一番最後やで」
「は〜い」
私以外のみんなが続々と車から降りて行き私一人車に取り残されてしまった。
まぁ、でも仕方ない。 安全確認は大事だ。
喜代太さんは周りを十分に調べたのか、私が居る車に戻ってきて私を仔猫のように
持ちながら車から降ろしてくれた。
「見た感じ安全そうやから一緒に行こか、 祭ちゃん」
「はい、ありがとうございます」
「これぐらい大したことないよ」
私は喜代太さんの背中に隠れながらみんなについて行き
三魂家の中へと入っていった。
、、、、 やっぱり昔と何も変わってないなぁ、、
「みんな大広間で待ってるやろうから、 僕たちも急いで大広間向かおか」
「はい、 分かりました」
私は喜代太さんと紗理奈に守られながら大広間まで向かう事にした。
でも、、、 移動しようとしたその時聞き馴染みがある声が後ろから聞こえてきた、、
「あれ? 黄泉ちゃんじゃ〜ん。 なんで死体がここに来てるの〜?」
この言い方、、、 この声、、 間違いない、、 宵宮だ。
「宵宮ちゃん? 今の言葉は僕良くないと思うけどなぁ?」
「え? なになに? アンタはその動く死体を守るの?」
「死体が動くわけないやろ? 宵宮ちゃん。
頭が悪い幽霊にでも取り憑かれてしもたんか?」
「そっちこそ、 喋る死体と隣の着物に取り憑かれてるんじゃないのぉ?」
「宵宮ちゃん? 煽る相手はよぉ選んだ方がええよ?
そんなに祭ちゃんの悪口言うなら僕は口だけじゃなくなるよ?」
「そもそもさぁ? なんでこんな神聖な場所に黄泉を連れてきてるのぉ?
神聖な場所を汚しにきたの?」
「そんなん言ったら僕らだってここの神聖な場所を汚してるよ?」
「、、、ッ」
「何も言えんくなったね。そや、 宵宮ちゃん。 僕がいい事教えといてあげる」
「ん? 何?」
「口喧嘩したいんやったら相手をちゃんと見極めた方がええよ?
勝てん戦いをしてる宵宮ちゃんは惨めそのものやったよ」
「、、、八魂家のくせに大きい口がよく叩けるねぇ。
二魂家に喧嘩でも売りたいのぉ?」
「僕が宵宮ちゃんのようなマヌケで性格が終わってる二魂家に喧嘩売るわけないや ん!! っぷははは!! ほんっま君の良いところは顔だけやなぁ!!
宵宮ちゃぁん!!」
「、、、、ッ」
宵宮が何かを言おうとした、その時私達の後ろから男の声が聞こえてきた。
「おい、 宮。 恥を晒すのもそこまでにしろ。 早く大広間に帰ってこい」
「パパぁ!!」
袴を着て銀髪、、 それに頬に傷痕、、、 この人は二魂家の、、
男の声の正体は、二魂家当主 二魂 朱雀 だった。
「ねぇ、 パパ!! 八魂家当主が二魂家侮辱してきた!! これを見過ごしていいのぉ?」
「宮。 言っただろ、恥を晒すなと。 それ以上恥を晒すなら三魂家から摘み出すぞ」
「、、、ッ!! はぁ〜い。 分かりました〜」
「八魂家の皆と、九魂家の生き残りの祭さん。 すまなかった。
俺の娘が愚かな行動や言動をしてしまって」
「いやいや、こちらこそすんませんね。 マヌケとか言ってしもて」
「それぐらいいいさ、喜代太さん。 それより美味い酒と食事が俺らを待ってますから
こんな所で立ち止まらずに早く大広間に向かいましょう」
「さっすが当主。 心が広い。 んじゃあみんな、 当主の言うとおりにしよか」
「そうしましょうか。 喜代太さん」
「分かったパパ」
「うん、わかった」
ふぅ、、、 なんとかこの場を乗り切れたのかな?
にしても、さすが喜代太さんだな、、、 あの宵宮に口で勝つとは、、、
口も達者だし、強さもある。 やっぱり喜代太さんって凄い人だな、、、
私がそう思いに耽っていると紗理奈が手を優しく掴んでくれた。
「え? どうしたの? いきなり」
「なになに? あの子。 すんごい口悪いじゃん!!」
「宵宮は昔からそういう子だから気にしなくていいよ〜。
それに当主に注意されたから、もう口は開けなくなったと思うよ?
危険因子が静かになったから、 そんなに身構えなくていいよ? 紗理奈」
「いやいや、まだ何かしてくるかもしれないからずっと身構えておくよ。
今、私に出来る仕事はこれだけだし」
「ふふ、そこまでしなくてもいいのに〜。 まぁ、 でもありがと。
じゃ、 他の家の面々が待ってるし行こっか」
「うん、そうだね」
私達が大広間に向かおうとしたその瞬間。
宵宮が私に急接近して私の背中に何かを貼ってきた。
ヤバい.... 急にクラクラしてきた... それに目の前も.... 見え... なく.. なって..
「祭!?」
私はその場で力が抜け倒れてしまった。
「どした!! 何があったんや!! 紗理奈ちゃん!!」
「宵宮って人が、、、 祭の背中に何かを貼って、、、」
「ちょっとそこどいてくれるか? 紗理奈ちゃん」
「は、、はい、、、」
喜代太は紗理奈に支えられた祭に印詩を唱えて背中に貼られた札を剥ぎ取った。
「なぁ、宵宮ちゃん。 コレはやり過ぎとちゃうかなぁ!!!」
「コイツのせいで、、、 恥かいちゃったもん。 こうなって当たり前じゃん」
「もう少しでもこの札を剥がすのが遅れてたら祭ちゃん死んでたんやで!?」
「別にもう死んでるも同然だから良いじゃん」
「、、、、 なぁ、 宵宮ちゃん。 ちょっと外で話し合おか」
「いいや、その必要はない。 喜代太さん」
怒りに染まった喜代太の肩に手を置き、喜代太を静止させた。
「パパぁ!! 私、、 私!! もう少しで黄泉を祓えそうだっ」
パァン
風船が破裂するような音が、廊下中に響き渡った。
朱雀は実の娘に平手打ちをした。
その平手打ちは手加減なんてものはなく怒りと力だけが詰まった平手打ちだった。
「パパ、、、?」
「宮。 俺は人殺しを育てた覚えはないぞ。
これ以上、 愚行をするなら二魂家から追い出すぞ。 分かったな」
「え、、、 でも、、」
「言い訳をするなら、今すぐにでも絶縁してお前を祭さんと同じ苦しみに遭わせるぞ。
お前はやった罪の重さをその身で味わえ。 後で、 お婆様がお前を迎えに来るから
今日は帰れ。 今の宮は、 二魂家の恥だ」
「婆様は、、、 婆様は嫌!! お願い!! 許して、パパ!!」
「謝る相手が違うだろ。 宮」
「でも、、、 黄泉は、、」
「祭さんだろ? 今からその黄泉って言葉出したら平手打ちするからな」
「、、、、まつ.. 祭さんは.. 今は反応しないじゃん、、」
「お前がそうさしたからだろ。 もういい、 今すぐにでも出てけ。
お婆様の所で叱られてこい。 二魂家の面汚しが」
「、、、、」
実の父に人殺しと言われた宵宮は口が開けなくなっていた。
「出てけって言っただろ!! 早く俺の目の前から消えろ!!!」
「、、、、」
宵宮は静かに泣いていた。 宵宮は父親の強烈な威圧で萎縮して動けなくなっていた。
「泣いて許されると思うな!! この、、、 面汚しが!!」
朱雀は宵宮の首根っこを掴み庭園の方へと投げ飛ばした。
扉は外れ、窓は割れ。 色々カオスな状況になってしまっていた。
「よし、とりあえず今は祭さんへの印が最優先です。 紗理奈さん? でしたっけ。
九魂家のお婆様から札を渡されましたよね?
その札を俺に渡してください」
「は、、はい!!」
紗理奈はバックから札を取り出し、 朱雀に札を渡した。
「今ここですぐに、、、と いきたい所ですが、
周りの目もあるし奥の部屋を借りたいので、喜代太さん、 貴女に頼みがある。
三魂家の当主に許可を取ってきてもらいたい。
もし、 渋って当主が決断を下さなそうであれば俺の名前を出してください。
頼みましたよ」
「了解です。 朱雀さん」
「わ、、、 わたしは、、」
「紗理奈さんは、喜代太さん達の娘達のサポートをしといてください。
あんなに酷い光景を見せたもんですから、 心に残られては可哀想ですから」
「わ、、、 分かりました!!」
「では、みなさん。 頼みましたよ」
二魂家当主 二魂 朱雀 の手によってなんとかその場はおさまった。
私は、またもや死の淵を彷徨う事になってしまった。