第三話 トラウマと夢魔
2024年4月14日 朝7時
「ふわぁ....」
今日もまた憂鬱な1日が始まった。
あの事件以降、私は生きてる実感が湧かなくなった。
もう、 思い出したくもない。 あの凄惨な記憶を。
あの事件のせいで私は大罪人になった。
本当は私生きてちゃダメなのに。 消えたい、、、 消えてなくなりたい、、
でも、、 でも出来ない、、 出来ないの、、、
私は昔の事を思い出してパニック状態に陥ってしまった。
あの事件のせいで、、、あの事件のせいで!! 私のパパとママは!! 死ん
「祭、、 祭!! 落ち着いて!!」
紗理奈がパニックになった私に抱きついてきた。
「私の、、、 私の、、」
「祭!! 落ち着いて!! 一回落ち着いて息吸おう? ほら、ふ〜」
「はっ、、、 はっ、、、 ふ〜、、、」
「怖かったら私に抱きついてきていいからね?」
「さりな、、、 さりな、、」
「大丈夫、、 大丈夫だよ」
紗理奈は優しく私の頭を撫でてくれた。
その優しい手つきは私のお母さんにそっくりだった。
「さりなぁ、、、 わたし、、、 わたしっ、、 生きてていいの?」
「生きてていい、 生きてていいんだよ?」
「でも、、、 でも!!」
「大丈夫、、 大丈夫」
「さりな、、、 さりなぁぁぁ」
私は紗理奈の胸の中で子供のように泣きじゃくった。
その泣きじゃくる姿は、 葬式で永遠の別れを知った子供の様だった。
祭はあの凄惨な事件を止める事が本当は出来たのだ。
でも、 小さかった祭の言葉は大人の母親達には届かなかった。
あの時もし止めれていたら、、、
他に任せていれば、、、
アイツが居なければ、、、
そんな後悔が今も祭の身体を蝕んで、
その後悔が心を侵し、トラウマとなった。
心がまだ若い祭にとってそのトラウマは
辛く苦しく、死にたくなる様な痛みになっていた。
ただ祭達が犯した罪はそんな痛みで許される程優しくはない。
この人間社会の安全を脅かし、 安全を破壊されるという恐怖をもたらしたのだ。
祭にはその罰を背負いながら仕事をしていくしかないのだ、、、
________
同日 朝8時
「はい、コーヒー」
「ありがとう、、 紗理奈」
あの後なんとか私はパニックを抑えれた。 全部、、 紗理奈のおかげだ、、
「にしても、何があったの? 祭」
「その、、、 昔の事を思い出して、、」
「その昔の事、私になんで言ってくれないの?
親友なんだから言ってくれてもいいじゃん」
「私は、、、 大罪人だから、、」
「私もその罪背負うから教えてよ?
私、 過去の事忘れてるし、 それを聞いて何か思い出せるかもしんないじゃん?」
「そんな軽く背負えるものじゃないよ、、 それに紗理奈に背負わせたくないし」
「私達はこれからもずっと一緒に居るんだよ? だから隠し事はやめようよ」
「で、、、 でも」
「ま〜つ〜り〜!!」
紗理奈が私の頬っぺたを摘んできた。
「ちょっ、、 と、、 なにふるの」
「なんで言ってくれないの〜!! 私の事嫌いなの〜?」
「べ、、、 べつにそんなわけじゃ、、」
「だったら言ってよ〜!!」
「好きだから、、、 罪を背負わせたくないの、、、」
「えっ、、、 今、、なん、、」
紗理奈の顔が薄いピンク色に染まっていた。
なんか、、、 ホカホカしてきた、、、
「紗理奈、、、 紗理奈、、」
「祭、、、 祭、、」
「おやおや、、、 ここには夢魔でも居るのかねぇ?」
「お、、、 おばあちゃん!?」
「えっ? えっ? いつの間に!!」
私のおばあちゃんが音も立てずにこの事務所に入ってきていた。
「えっ、、、 ちょ、、 なんで!!」
「あんたが事務所に来てって言ってたじゃないの。 印を結んでほしいって」
「、、、、 確かに言ってたね、、」
「というかそんな事より、あんたらの隣に居る裸の人は誰だい? お友達かい?
おばあちゃん目がボヤけてて分からないわ」
「え? 裸の人? そんなの居るわけ」
横を向いた紗理奈が急に固まってしまった。
「ん? どうしたの? さり」
私には紗理奈が固まった理由がすぐ分かった。
本当に、、、 本当に居たのだ。 『夢魔』 が
「ほぉ、、、 妾を見つけるとはなかなかの逸材じゃな」
「おま、、、、」
「おま? どうしたのじゃ? 妾に会えて嬉しくなっておるのか?
まぁそれも仕方ない事じゃ」
「おま、、、 おま!!」
「言いたい事があるのならハッキリ妾に言わんかい。 もっと強く呪っちゃうわよ?」
「お前は何見とんじゃい!! 『封印』!!」
「えっ、、、 ちょっ、、、 妾匂い出してただけ、、」
「言い訳は瓶の中でして!!」
「えっ、、、 ちょっ!!」
わたしは夢魔の心臓に手を突っ込み夢魔の魂を取った。
その魂を近くにあった瓶に入れた。
「捕まえるのが遅れてたらどうなってた事やら、、、」
「おや? どうしたんだい? 祭や」
「おばあちゃんの言うとおり、本当に夢魔が居たよ、、、。 まぁ、、捕まえたけど」
「おや、本当に居たのかい、、。 まぁ、 でも捕まえれたのなら後々楽じゃな。
なぁ? 祭や」
「まぁ、、そうだね。 おばあちゃん。 じゃあ夢魔も捕まえれた事だし、印と轆轤首と夢魔の再封印、今から出来る?」
「ふふふ、、 このおばあちゃんに任せなさい」
「ありがと、 おばあちゃん。
じゃあ紗理奈は暇だろうし何かしといて、、、 って紗理奈? どうしたの?」
「まつり.... まつり.... あたしから離れないで.... まつりぃ...」
「え? 本当にどうしたの、、、 って、、、 この目、、 この匂い!!」
「まつり..... まつりぃ.... ギュってして?」
うん、やっぱり。 紗理奈は夢魔の匂いにやられてる、、、
駄目だ、、、 かわいすぎる、、、 服もはだけてて少しエッチだ、、
「まつり.... まつりぃ.... こっちきて?」
「おばあちゃん、、、 先に轆轤首と夢魔の封印しといてくれない? 私、 紗理奈に憑いた残穢解くから」
「はいよ。 おばあちゃんに任せんしゃい」
私はおばあちゃんに夢魔が入った瓶を渡し封印部屋まで一緒に着いて行った。 おばあちゃんは中に入り封印の印と印詩を唱え始めた。
私は私で呪いの残穢を解いてあげないと、、、
「紗理奈、、、 隣に居てあげるからそこで止まっててね」
「まつり.... まつりぃ....」
私は身体をモジモジしている紗理奈の隣に座った。
「はい、 じゃあその呪い解くね?」
『反転反生 人気流流 破魔滅失 この者から消え去りたまっ、、、
ってちょっと、、 紗理奈!!」
印を結んでいた私に紗理奈が飛びついてきた。
紗理奈は息を荒くしながら私の口元にどんどんと口を近づけてきた。
「ちょっ、、、 ちょっ、、、 紗理奈!!」
「まつり.... まつりぃ...」
「ちょっ、、、 んむ」
私は紗理奈によって口を塞がれてしまった。
まずいまずい、、、 私も夢魔に呪われちゃう、、唾液から呪いが入ってきちゃう、、
早く、、 早く印を結ばないと
「まつり... まつりぃ...」
効果が薄れるかもしれないけど、今はこれしかない!!
〔反転反生 人気流流 破魔滅失 この者から消え去りたまえ!!〕
私は心の中でそう唱え、空に描いた太極図を紗理奈の背中に貼り付けた。
紗理奈は私の印を喰らい、私の上で意識を失ってしまった。
「私も印やっとこ、、」
私は再度印を結び自分の頭に貼った。
「ふぅ、、、 ちょっと、、疲れた。 待って、、 なんか、、 眠気が急に、、」
私と紗理奈は仲良くソファの上で眠てしまった。