表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/9

お買い物に出発です!

「ふっふ~ん」

「じょうきげんだな」

「シン様とお買い物ができるなんて、テンションが上がるに決まっています!」


 髪の色を変えたシンと、さっそく街に繰り出した。


 王宮のある街は、王都と呼ばれていてとても栄えている。

 文化と商業の中心地なだけあって人が多く、衛兵が多く常駐しているため治安もいい。


「へいみんがいに来るのはひさしぶりだ」

「普段は王宮か、行くとしても貴族街ですもんね~」


 貴族の屋敷が並ぶ貴族街と、平民が暮らす平民街は高い壁で分断されている。

 閑静な貴族街と比べ、平民街は活気に満ちていて、楽しそうだ。


「平民街といっても、私からしたら皆さん貴族みたいなものです。王都に住めるというだけで、かなりの富豪ですから。エバーグリーン領は農家さんが多いので、もっと長閑な感じですよ」

「そうなのか。おれのしらないせかいだな」

「まあ、シン様は王子様ですからね。知らないのは当たり前です」

「いや、王になるいじょう、民のせいかつはしっておくべきだ。民なくして、くにはなりたたないのだから」


 シンが真剣な表情で、難しいことを言っている。


 ああ、身体は小さくなっても、彼の心はなにも変わっていないみたいだ。

 誰よりも誠実で、誰よりも真面目で、誰よりも、国のことを思っている。第一王子の立場に甘んじず努力を続ける彼を、メルティは好ましく思っていた。


「では、今日は視察ということですね! 奇しくも、お忍びにぴったりです」

「そうだな。まさかおれが王子だとはおもうまい」

「ふふふ、殿下が街に降りたら、大騒ぎになりますもんね~。有名人ですし、絵姿も大人気だそうですよ」

「まて、なんのはなしだ」

「あら、おほほほ」


 いけない、あれはシンクリッドには絶対に秘密なんだった。

 一部のシンクリッド好きの令嬢、マダムたちが先導して、秘密裏に取引されている、精巧なシンクリッドの絵姿。王都にも少数だが流れており、プレミア価格がついているものもあるのだとか。


 なぜメルティが知っているのかというと、婚約者であるためリーダー格の少女からお伺いをたてられたからである。

 一枚融通してもらう代わりに見逃している身としては、シンに真実を言うわけにはいかない。


「第一王子としての支持は盤石、ということですよ! さすがシン様」

「ふん、とうぜんだ」


 シンが誇らし気に鼻を鳴らす。


(お子様になってから、なんだか単純になってませんか……?)


 心の中で失礼なことを思うメルティだった。


 なんにしても可愛いからいいのだけれど。


「そろそろ商店街に出ますね。シン様、お手を」

「なんだと?」

「この人混みの中ではぐれたら大変ですから。手を繋いでいきましょう」

「こどもあつかいするな、といっている。人ごみなど……」


 シンはメルティの手を振り払って、大通りに一歩踏み出した。


 そんな彼を、大人たちは一瞥だけして、そのまま通り過ぎていく。

 商業が盛んなこの地区は、大勢の大人が忙しなく働いていて、道はごった返している。


「うっ……」


 シンは人の波に圧倒されて、数歩後ずさった。背後に立っていたメルティにぶつかる。


 シンから見たら、見上げるような身長の人たちばかりだ。それは、恐ろしいだろう。

 元が高身長だったからなおさら。


「シンさまっ」


 膝を抱えてしゃがみ込んで、にっこりと微笑む。

 手を差し出すと、シンは不本意そうに目を逸らしながら、手を取った。


「しかたないから、おれがえすこーと(・・・・・)してやる。こんやくしゃだからな」

「はいっ、お願いしますね」

「ふん、ぞうさもない」


 シンはなにやら格好をつけてから、歩き始めた。

 あくまで、シンがエスコートする側らしい。あまりプライドを傷つけても良くないので、何も言わないことにする。


 そんなことより。


(手ちっっちゃ〜〜い! 柔らかい!! なんですかこれ、私を楽園を連れて行こうとしてるんですか!?)


 シンと手を繋げるならなんでもいいや、と思った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ