色々バレる。
ドガ子爵がやって来ます。
親の過去も出てきてちょっとわちゃわちゃします。
ザカリーは3週間前に親に出した手紙でアランの報告はすっかり済ませていた。
妻が出産でバタバタしていた事もありクララベルの様子に最初は気が付かなかった。
しかし赤子を世話する嫁がなんの気無しにクララベルに声をかける。
『クララちゃんの赤ちゃんはアラン様に似るかしら?フフフ』
その一瞬で穏やかに微笑んでいたクララベルの顔が強張った。
『そうですね…赤ちゃんは女の子なら旦那様に似ると美人になると言いますものね。』
強張った表情のままクララベルは返事をしたがザカリーは見逃さなかった。
思い返せばアランはこの半年のうち一度も家に遊びにきていない。クララベルはアランの話を家で話すことはなく、会話は主だって学園の勉強などについてであった。
幼いクララベルには恋愛は早いしなぁと思いつつクララベルにアランのことを尋ねるも
『最終学年で色々お忙しいみたいで、会っていただけなくて』と申し訳なさそうに俯いただけだった。
クララベルは何も言わない。
ザカリーは過保護であると思いながら寮を訪れた時の『どうなってるんだ?』の答え合わせを始めた。
調べれば簡単なことであった。
まだ若いアランは自分の足跡を消すことなどしないし学園では堂々と浮名を流していたのだから。
しかも自分に婚約者がいることも殆ど明かしていなかった。
『アランは浮気を繰り返し、高級酒場でバイトをしていた。』
リンドバーグ子爵に送る手紙は何度も書き直しながら綴った。
クララベルが蔑ろにされたと思うと怒りでインクが滲みペンが止まる。だが若い男の気の迷いだと両親が流して仕舞えばいずれ結婚してアランは親戚に成ってしまう。ドガ家はリンドバーグ家とは家族包みで仲が良いのだが、真実を知ってしまうとザカリーも受け入れ難かった。
自分の一存では判断が難しいとリンドバーグ家に上手くことが伝わるように必死で手紙を書いた。
兄としてはそんな男が義弟となるのは避けたい。
クララベルは学園ではとても優秀で生徒会の執行部を手伝っていると聞く。
学園に挨拶に行けば教師たちがクララベルを褒め称えた。
その上、今年度卒業の王子妃となるヴィクトリア嬢に気に入られ現在王宮に共に通う友人となったそうだ。
知らなかったこととはいえ、我が妹は優秀である。
それに引き換え………
ドガ家の嫡男として甘やかされたアランはあまりにお粗末だった。
成績は下から数えた方が早く、寮にも戻らず遊び呆けているため内申点は最悪。
折角の貴族学院であるのに友人の質は悪く、高位貴族からは相手にされていない。周りをウロウロしているのは領地なしの見た目ばかり派手なその家の不良債権ばかり。
ザカリーは頭を抱えた。
『どうか……この手紙で父の気持ちが動きますように。』祈りを込めて手紙を出したのが3週間前。
そして数時間前にドガ子爵からザカリーは呼び出されたのだ。
『すまないが、息子のアランがとんでも無い事になっている。寮に一緒に来てもらえないだろうか?』
早馬で知らされた短文を読みながらザカリーは迷った。
(父からの返信が無いのに自分が事態を収めてしまって本当に良いのだろうか?)と。
手紙にはクララベルも連れてきて欲しいと書いていたが今は家にいない。
王宮に行っている妹は夕刻にならなければ戻らないであろうと分かっていても取り敢えず知らせを出す。
打ち合わせもせずにドガ子爵に会うことが躊躇われ『どうしよう!!』と小一時間ほど家で悩んでいると今度は父から手紙が届いた。
そしてザカリーはそれを引っ掴むようにして男子寮に向かったのである。
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ドアを開けると目の前には洒落た服を乱して蹲るアラン・ドガが居た。
角部屋の一室でドガ子爵は青褪めたまま息子が口を開くのを待っているが彼は一言も喋らない。
「あぁ、ザカリー君!すまない!」
ドガ子爵は少し白いものが混じり始めた頭を下げてザカリーに詫びた。
(この人は本当に良い人なんだけどな…)ザカリーは迷いなく年下の自分に頭を下げる子爵の姿を見て非常に残念に思う。
本当に……どこで間違ってしまったのか……
アランは殴られたのであろう。
頬を腫らし虚に床を睨んだまま動こうとしない。
貴族の寮は三年生は一人一室が与えられるのでその広い空間はアランのものであった。
壁には高そうなコートが2着も掛けられており、机の上は乱雑にものが置かれているが高級宝飾店の紙袋が2つ鎮座していた。
学生の小遣いでは到底買えないような宝飾店の紙袋にザカリーは目眩を覚える。子爵は店が分からないから気がついていないだろうがこれは、若いツバメに向けた夫人たちからの贈り物なのであろうと察せられる。
ザカリーは仁王立ちしたままのドガ子爵に椅子を勧め自分はベッドの縁に腰掛けた。
「アラン君……やっと会えたね。」
声を掛けると幼馴染の青年はビクリと肩を震わせた。
しかしその一言でドガ子爵は察したのだろう。
「お前はリンドバーグ家に挨拶もしていなかったのか?!」と声を怒りで震わせる。
アランは目鼻立ちの整った華奢な青年である。婚約式の時はスラリとしたアランの隣に立つクララベルが贔屓目に見ても見劣りしたのは確かだ。しかし妹には頭の良さと気立の良さがある。
どうか幸せになりますようにと家族共々祝ったのはついこの間だ。
その記憶が薄れることもない今、彼の怯える姿はザカリーには気の毒にも思える。だがクララベルの兄として言わなければ事態は進まないだろう。
「実はアラン君の生活がかなり乱れていたんですよ。父からお聞きになりませんでしたか?」
ザカリーが問えばドガ子爵は力無く首を振った。
「妻の妹にあたるメアリーアンが王都に来ていてね。酒場でアランを捕まえたんだ。
報告を受けたのは2日前だよ。」
そうか…………。父達は何も言ってなかったのだな…………。
ザカリーは仕方なくドガ子爵に説明を始めた。
「アラン君は王都に来てから浮かれてしまったようで私達とも連絡を絶っていたんです。寮にも殆ど戻らなくて会うのも久しぶりで。
そして…アラン君はモテるから沢山の女性とその、……………お付き合いも激しかったようでクララベルは距離を置いていたんですよ。」
そう言うとアランの頬が真っ赤に染まった。
ドガ子爵は息子をキッと睨みつけると素早く胸ぐらを掴んだ。
「お前っっっ!なんて事を!!」
ザカリーは予想していたのでサッと立ち上がるとドガ子爵の腕を掴む。
「落ち着いて。
クララベルもアラン君に蔑ろにされたことが恥ずかしくて言い出せなかったのでしょう。
私たちも最近知ったのです。」
そう言えばドガ子爵はドサリと力無く椅子に再び腰掛けた。
「何故?何故そんな馬鹿げた事を…………?」
確かに王都の女性は田舎者から見れば洗練されて魅力的であったに違いない。しかし同じ田舎の出であるクララベルを捨て置いて他の女に走るなんてドガ子爵からすれば全く思いもよらないことであった。
「ダサいんだよ…………。クララベルは。」
アランはやっと口を開いた。
「俺から見て彼女はただの幼馴染だ。妹みたいなもんだろ?学園にいる間くらい恋人を作ってみたかったし、楽しいことが目の前に沢山あるのにやってみたかった。」
「だからと言ってそんな不誠実な事をしてはダメだろうがっ!!」
大柄なドガ子爵が声を上げるとドアまで揺れるような感覚に陥る。
「興味が持てなかったんだよね?」ザカリーが静かに聞くとアランは子供のようにコクンと頷いた。
まだ若いアラン。
自分だって学園に通っていた時は浮き足立っていた瞬間もあった。
けれど…
けれど、家族や領民のことを考えたら羽目を外し過ぎる行動は控えたものだ。
実直な父達から育てられたザカリーにはアランほど女性も寄って来なかったし遊ぶ金も無かった。だから自分は道を外さなかったが、この青年は自ら踏み外してしまったのだ。
見た目が良かったせいもあるだろう。
田舎より派手に遊ぶ女生徒の甘言に惑わされた哀れな幼馴染。
ザカリーは会うまでは腹立たしく気持ちが昂っていたが目の前で震える華奢な青年に僅かばかり同情心を捨て切れずにいた。
妹は贔屓目に見ても田舎の子だ。男なら少しでも綺麗な嫁をと望むのもわかる。
一番下の子だと甘やかしたせいもあり、淑女としては足りない部分も多かった。金のないクララベルは洒落た服も持っていなければ、化粧も薄いまま。両親も婚約者を充てがった満足感からか、益々金を掛けてやらなかった。
最近は王宮に通うために周囲が手を貸してくれるので髪型もドレスの着方も変わってきたとは思うが…
「俺は親に決められた婚約者が一番良いなんて思えなかった。父さんだって母さん1人と付き合った訳じゃないだろ?!」アランは怨みがましい目線でドガ子爵を睨みつける。
その視線にドガ子爵はたじろいだ。
心当たりがあり過ぎる。
アランはドガ子爵が随分歳を重ねてからの子供だ。夫人は16歳も年下の男爵家の末娘で無垢なまま嫁いだと聞いたことがある。
散々放蕩の限りを尽くし、父と遊び歩いていたドガ子爵は貴族としては遅い32歳で結婚。
デビュタントの令嬢を気に入ってそのまま嫁にしたのだ。
遊び尽くした男には初々しい16歳は何者にも代え難かったらしい。
今では相思相愛で仲睦まじい夫婦ではあるが、夫達は過去の武勇伝でこっそり酒を呑む。
両親からしたら友人同士で男の武勇伝など単なる笑い話であるがそれが娘に置き換えられたら…
リンドバーグ家も見逃すことは難しかった。
手紙が3週間と時間が掛かったのもザカリーは理解できる。
父達はかなり話し合ったようだ。
そして書かれた手紙には
《クララベルが望む通りに》
と書かれていた。
父親としての葛藤、友人の息子に対する愛情。
家同士、奥方同士が仲が良かったことも決断できなかった要因である。
リンドバーグ子爵はザカリーからの手紙で当初ドガ家に怒鳴り込みに行きそうになったが母親から止められたそうだ。
『貴方にだって褒められない過去はあるでしょう?』と。
母たちは知っていたのだ。
男どもが武勇伝だと笑い話にしていた色事の内容を。
父はそのまま萎れたように小さくなり暫し考え込むようになったという。
自分が遊び呆けてきたツケが回ってきたような錯覚を起こしたとリンドバーグ子爵は後に語った。
自分達は男の勲章だと女遊びを楽しんだ癖に娘が粗雑に扱われたら憤慨するのか?
リンドバーグ子爵は学園在学中にアランと同様、親に婚約を決められた。
そして婚約者の母は伯爵位の娘であった。母は当初体が弱く結婚式は6年延期されたと聞くが本当は遊びの限りを尽くしていた婚約者を許せず、修道院と結婚のどちらの未来を選ぶか、かなり躊躇っていたらしい。
両親のとんでも無い経緯にザカリーは驚かされた。
現在は母の尻に敷かれて実直に家族に向き合っているように見えるが、そのような過去があっての夫婦関係なのだ。
『どうか私と結婚してください』と我に返ったリンドバーグ子爵が3年頭を下げ続けてようやく認められた結婚であった。
母は婚期をとうに逃した22歳で諦めたように承諾したそうだ。
父の頭が上がらないのも無理はない。
(危ない……下手したら俺は生まれていなかったじゃないか。)
ザカリーはその長い手紙に驚かされてばかりいた。
しかも四人も子供をこさえて母は質素倹約を強いられている。正直条件で見れば恵まれた結婚ではなかっただろう。
浮気を許せるのだろうか?
ザカリーはアランを見つめながらクララベルを思った。
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その頃王宮ではクララベルが早馬の知らせを読んで素っ頓狂な悲鳴をあげた。
「ヴィクトリア様!大変です!ドガ子爵がアラン様に会いに来てしまいました!」
この時ばかりはヴィクトリアはクララベルの声量を責める様なことはしなかった。
王太子妃と王子の婚約者であるヴィクトリアは二人揃って歴史の授業が丁度終了したところでお茶の支度を済ませたばかり。
さあ皆様ご一緒に!とロイドに王太子も部屋に入室してきたタイミングで手紙が届いた。
クララベルは『すみません!本日はお暇させていただきます!』とバッグを片手に飛び出て行こうとしていたがそれを王太子が引き止める。
「クララちゃん。少し待った方がいいよ。ロイドもそう思うだろう?」
その声にロイドはメガネを押し上げながらクララベルに向かってこう告げた。
「焦ってはいけない。先ずはどのような状況下にあるのかを確認してから動こう。お前が飛び出て行ってもきっとアラン殿に罵られて終わりだ。」
するとヴィクトリアもそうねぇと頬杖をつく。
「確かに今慌てて戻っても父親が息子を怒鳴り上げている修羅場に行くだけで生産的な話は出来ないわよ。
どの道話し合いが行われることには変わりは無いのだからクララもきちんと武装して行かねばとんだ負け戦を強いられるわよ?」
負け戦!?私負けるのですか!!とクララベルがプルプル震えればロイドは呆れたようにアドヴァイスをする。
「馬鹿、お前アランに一泡吹かせるつもりで今まで頑張ってきたんだろ?どこに着地するのか決めているのか?」
そう言われてクララベルは、はて?と首を傾げる。
すると優しい王太子妃が微笑んだ。
「婚約を続行するのか、解消するのか…
クララちゃんは決めていらっしゃるの?」
そう言われてビックリする。
確かに自分は目の前の課題を熟すばかりで将来のことまで考えていなかった。彼らの言う通りだ。飛び出て行ったところで何をどうするつもりなのか。
王太子は困ったように言う。
「アラン殿は恐らく恋人達と体の関係もあっただろうし、酒場の女性達とも閨を共にしている。クララちゃんはそんな婚約者と将来子供は作れそうかな?」
上品な王太子の口から飛び出た直接的な表現にクララベルは更にぶったまげた。
あ!!その!!あの……!!と言葉を繋げようとするが初心な15歳には天地がひっくり返ったような想像もつかない内容である。
瞬間的にクララベルの頭は沸騰し自然と涙が溢れてきた。
するとロイドがサッと立ち上がりクララベルの肩を抱き抱えた。
「向こうで話そう。」
いつもは馬鹿だの阿呆だのと辛辣なロイドであるが、その温もりがクララベルは有り難かった。
ティールームの隣にある簡素な小部屋でクララベルは止まらない涙に自分でも死にたくなった。
「ズズ、ズビバゼン……」
涙を拭き拭き言葉を発しようとするが上手くいかない。
王宮に上がるようになって閨の教育もヴィクトリアと一緒に受けたクララベルは半年前には知らなかったことも既に知っている。
男の人と女の人がどうやって赤ちゃんを作るのか教えてもらったのだ。
純粋なクララベルはその授業の一環である女性の体の仕組みに興味を持ち、月のモノや体の構造について書かれた本まで医者の翁に借りてしまった程である。
だが……そういう行為は結婚する人同士や恋人同士のものでどこか遠く、他人事であった。
王太子の発言に生々しく性を感じた少女は動揺からくる色々でひっくり返りそうではあったが、そこは麦の穂。
持ち堪えていた。
「殿下はああ見えてハッキリ言っちゃう人だからね。ショックだった?」
「………私………あの日以来アラン様に会ってませんでしたから想像したことなかったのです。その……浮気の先にある………体の関係に。」
恥ずかしそうに真っ赤になって俯くクララベルは可愛らしい。ロイドは思わず肩に回した手に力が篭った。
正直に言えばロイドだって恋愛は初心者だ。
バランティーノ侯爵家に生まれたロイドは未だ婚約者が決まっていない。性格の悪さと口の悪さが災いしているのだ。
勿論成績はかなり優秀である。身長は人並みにあるし顔は中の上だと自負しているが太れない体質と運動神経が悪いので、もしかしたら男の魅力はマイナスに傾いているかもしれない。
15歳の時から持ち込まれた縁談は鋭利な見た目と優しくない物言いのせいで連敗。恥ずかしいのでクララベルに話したことはないが母親からは最近見放されているくらいだ。
生徒会のみんなは当然事情を知っており、見合いの翌日は期待を込められた視線で結果発表を待たれるくらいだ。『連敗記録更新だね。』最近では生徒会長でさえクスクス笑うくらいである。
侯爵家の兄が全部良いところを持って行ったんじゃなかろうか?と神様を恨んだ時期もあった。
兄は学年トップの成績だった上に濃い金髪で碧眼の長身。社交界の有名人なのだ。
そんなロイドを引き上げてくれたのがヴィクトリア・リラシクである。
一学年上の第三王子の婚約者は同位の侯爵家出身。幼少期から付き合いのあるロイドの捻くれた性格をわかった上で活躍の場を与えてくれた。
そして可愛い後輩も。
クララベルはクスンクスンと鼻を啜りながら迷惑をこれ以上かけまいと必死である。
(俺くらいには迷惑をかけて欲しい)自然とそういう気持ちが湧き上がってくる。
いつの間にかこの子リスにロイドは夢中になっていたのだ。
世話をし、磨き上げる行程で素直で無垢な彼女にどんどん惹かれた。
捻くれ屋で口の悪い自分は『ダセェ田舎者ラビット』とこの少女を罵っていたがクララベルはロイドを慕い素直に努力を重ねた。
美人だとは思えなかった顔立ちも化粧と髪型をヴィクトリアがテコ入れしていけばあっという間に可愛らしくなった。
ロイドが指摘した仕草やマナーに神経を行き渡らせ、言いつけを必ず守る。
男達の視線に気がつかない鈍臭いところも好ましい。
艶やかなハニーブラウンの髪を撫でてやる。
すると子リスは気持ち良さげに少し目を細めた。
「危なかったです。優しいドガ子爵を前にして決断を迫られたら[婚約続行で]と情に流されて言っちゃうところでした。」
気持ちを落ち着けたクララベルは苦しそうに笑って見せた。
「でも逃げ回ってばかりではダメですよね。
明日にはきっと皆で話し合いでしょう。
ここで知らせが貰えたのは幸運だったと思います。皆様に相談できたのですから。」
クララベルはどうやら結論を出し始めているようである。
「その……アラン殿のことをクララは好きなのか?」
ロイドは思い切って聞いてみた。
何度も涙を見せていることからアランに恋心を抱いている可能性を感じていたのだ。
するとキョトンとした表情のままクララベルは鼻をズズズッと吸い上げた。
「私にとってアラン様は…身近な親戚のような感じでした。
婚約者になってくれたときはこんなカッコイイ人が私のお婿さんになるんだって思ったら誇らしかったです。でも知ってたんです。
アラン様が私のことを好きじゃないのは。」
自嘲気味に笑うクララベルは痛々しい。
「なんか違うなぁって思ったのは誕生日の時だったかな?」
そう言うとクララベルはハンカチを握りしめた。
モブが王太子と王太子姫…的な。