2/2
巻二
明治
慌ただしい毎日
裾をたたく 音のみ
緑が 眼窩に はいる
「そこの、建物 後世に のこす 害悪 消して みせましょう」
傘を放ち
赤茶色のかべを
叩く
「人が棲んでいねえ」
迅水は 腹を抱えて おおわらい
「人がいねえ」
清水を 徳利で のみ
「不味い」
「水じゃ無くした」
「不愉快だ」
糸瓜の清い水を
いえの 屋根に ぶちまける
詩を吟ずる
半刻
「そろそろ」
きたねえ 白衣が 怯えながら
出てきて
「もう、お代は いただきません」
吟ずる止まる
おそい
「人か?」
「人です」白衣
「聞こえねえ」
「人です」
「ありがてえ」「人は 人と いわん」
害薬 製造 文字が 踊った
「その煮〆た 服」「いえ」
ひとがいねえ
棲んでいねえ
「どこから」
「来た」
「もうすぐ 役人がくるよ」
すがりつく おっさん
足を とく
「もうだめですか」
「おれは その くすり 飲んだ方が 良いと思う」迅水 平静に語を放つ
「きさま」白衣
迅水飲ます
「わきまえろ」
苦しむ白衣
汗 汗 汗
「どのみち しぬ 薬」 「ここで 吐け」
銀色
濡れた葉
しごき歩
迅水
野犬の 遠吠え を きき
野原を行く
巻二 完