【短編】自殺して異世界転移した俺は女神や王女と共に万能召喚隷属能力を使って俺たちをいじめていた奴らを召喚しそいつらを武器や魔法として使役して復讐する!
短編投下します!
俺たちの目の前に現れたのはバーサークドラゴン。
知性を失い狂暴化した災害級の魔物だ。
「喰らえ!ライトニングボルト!」
俺は『召喚ボックス』に仕舞われていた竹中浩介を呼び出すと、それをバーサークドラゴンに向けて射出した。
「やめてくれええええええっ!」
悲鳴を上げながら竹中は飛んでいく。
彼はジャージ姿で胸には『ライトニングボルト』というゼッケンが付いており、体中が電気を帯びてバチバチと光っていた。
「アグウ?」
光る人間が飛んできたのを見て反射的に餌だと思ったのか、バーサークドラゴンはそれに喰いつき、その瞬間に激しく感電した。
「グギャアアアアア!」
「ぐわあああああっ!」
バーサークドラゴンだけでなく、噛みつかれた竹中浩介も断末魔の悲鳴を上げた。
「ちっ、即死か。よし、今度は新しい奴を召喚しよう」
俺が学生だった時に昼食に様々な虫を入れて食べることを強要してきた『畑山拓斗』を召喚する。
「なっ?!ここはどこだ?!」
「畑山。俺が誰かわかるか?」
「大門健太?!お前は死んだはず?!」
「ここは異世界だ。そして俺がお前を召喚した」
「な、何だと?!」
「そしてお前は今から俺の『ファイアーボール』だ」
「何言ってやがる?げっ?!」
学生服を着ていた畑山は強制的にジャージに着替えさせられ、その胸のゼッケンには『ファイアーボール』と書かれていた。
「目標はあのドラゴンだ。死ななければ戦闘中は何度でも使い回せるから胴体に命中しろよ」
そう言って俺は畑山健斗を射出すると、それは炎を纏ってバーサークドラゴンの胴体に命中する。
「グオオオオオオ!」
「いでえええええ!」
「痛いか?だが耐久度は上げてあるからそう簡単には死なないぞ」
「何でこんなことしやがる!」
「復讐だ」
その言葉だけで畑山健斗は押し黙った。
自分が俺に何をしてきたかわかっているからだ。
「まさか次々とみんなが行方不明になったのは…」
「そう、俺が異世界召喚したからだ」
「こ、こんなことをしてタダで済むと思って」
「うるさい」
俺はバーサークドラゴンに近づいて畑山を召喚ボックスに格納すると、今度は『武器』を取り出した。
ジャージ姿の女子高生の大きな胸に付けられたゼッケンには『エクスカリバー』と書かれている。
「くらえええっ!」
「いやあああっ!」
俺は九条院麗華の両足を掴んでバーサークドラゴンに叩きつけ、その尻尾を斬り飛ばした。
「グアアアッ!」
バーサークドラゴンはブレスを吐き出してきたが、それは仲間の元王女のアメリアが召喚した『ブロックシールド1~3号』によって遮られる。
「やめてえええっ!」
「助けええええっ!」
「許してえええっ!」
「姉さんたち、その程度の痛みで何言ってるんだよ?ボクが受けた苦しみはその程度じゃないんだよ」
ハイライトの消えた目でそう言うアメリア。
「さあ、突撃だよ」
「「「いやああああっ!」」」
アメリアの姉であった第1から第3王女たちはブレスを押し返すように前進していく。
「とどめは任せて!雷神ハンマー!」
仲間の元女神であるメルが召喚ボックスから取り出したのは、『ハンマー』というゼッケンを付けた雷神ケルフ・フィンバルド。
メルはそれを軽々と振り回すとバーサークドラゴンの脳天に叩きつけ、その瞬間に落雷が発生してバーサークドラゴンの頭を黒焦げにする。
バチイッ!ズガガガガガーン!
「グワアアアアアアッ!」
「うぎゃあああああっ!」
バーサークドラゴンと雷神ケルフが共に悲鳴を上げ、ついにバーサークドラゴンは地に伏せた。
「き、貴様…下級神の分際で何度も俺様をこのような目に遭わせて…」
「うるさいわね」
女神メルは3mもの長身の雷神ケルフを軽々と振り回して地面に顔面から叩きつける。
「うごっ!」
「あなたが天界で私に何をしたかわかっているのでしょう?」
「貴様のような出来損ないの神に何をしようが俺たちの勝手、うごあっ?!や、やめてくれえっ!」
「まだ自分の立場が分かっていないようね」
再び雷神ケルフを振り上げる女神メル。
「メルがうらやましい。そんなに復讐しがいのある丈夫な奴なんて」
「そうだな。俺やアメリアの召喚した『いじめっ子』たちは脆いから、強化してもすぐ使えなくなるからな」
使えなくなっても召喚ボックスに戻して時間が経てば元通りにはなるものの、すぐに死んでは気分も晴れない。
「やっぱりランクの低いクエストを受注して、すぐに死なせないようにしてじわじわ苦しませるべき」
相変らずハイライトの消えた目でそう言うアメリア。
「そうだな、今度はそうしよう」
俺たちは『剥ぎ取り要員』を召喚ボックスから出すと、バーサークドラゴンの死体の剥ぎ取りを命じた。
「やめろおお!何度もこんなことをさせるなっ!くっ!抵抗できない!」
「口ではぎ取らせるなんてひどすぎるっ!おええええっ!」
「私は美を司る女神ですわよ!それなのになんてことを!うええええっ!」
吐こうとしても漏らそうとしても、『道具』でしかない奴らにはそんなことはできない。
こいつらは俺たちの復讐心を満たすためだけに存在しているのだ。
「さあ、帰るか」
俺たち3人のパーティ、『ダーク・リベンジャーズ』は日の暮れかけた道を引き返していった。
そもそものきっかけは、この俺、大門健太が自殺したことだった。
クラスメイトにいじめられ、先輩にも後輩にもいじめられ、教師からもいじめられていた俺は、誰一人味方の居ないいじめられっ子だった。
そんな俺がずっといじめを耐えていたのは、たった一人の肉親である妹を守るためだった。
『お前が抵抗したり自殺したりしたら、妹を同じ目に遭わせる』
そう言われて俺はずっと耐え続けた。
中1から高2までの5年間。
ひたすたいじめに耐え続けた。
しかし、俺は知ってしまった。
妹とその友人の会話を立ち聞きしてしまったのだ。
『アニキってなかなかしぶといよね。殴られたり、虫を食べさせられたり、拷問の実験台にされたり、私なら発狂して死ぬのに』
『一応妹であるあなたを守るために頑張ってるのにひどい言い草ね』
『だって毎日寝る前に『私のためにごめんね』って言うの面倒なんだもの』
『本当に最低の妹ね』
『何が最低よ。そう仕向けたのはあなたたちじゃないの』
『あなただってみんなからお金をもらっているからいいでしょう?』
『アニキが死んだら次はどうするのよ?』
『さあ?また適当な奴をターゲットにするんじゃないの?』
絶望した俺は、妹を責めるよりも先に自分自身に嫌気がさして、そのまま学校の屋上から飛び降りた。
痛みは無かった。
気が付くと白い世界に立っており、目の前には女神様らしき人が立っていた。
「もしかして、異世界転生できるんですか?!」
ようやく自由になれる。
いじめられなくて済む。
俺はそう期待して女神様に聞いた。
「う、う、うわああああああん!」
しかし女神様は俺の質問に答えずに泣き出した。
泣き止んだ女神様に泣いた理由を聞くと、俺の人生を見て泣いたのだという。
「あなたも私と同じように苦しんでいたのですね。でも…私は死んで逃げる場所なんて無いんです」
何とこの女神様も他の神々から俺に負けないくらいのいじめを受けていたというのだ。
「女神は死ねないんです。飛び降りても刃物で刺してもここでは死ねませんから」
同志だった。
俺にとって、初めての仲間だった。
「チート能力をもらえるんですよね?それなら、女神様を助けられるかもしれません」
俺と女神様はどんなチート能力ならここから女神様を助け出せるか、そして…
俺たちをいじめていた奴らに復讐できるかを話し合った。
そして俺に授けられた能力は『万物召喚隷属術』。
『真名』を知ってさえいればどんな相手でも召喚して思い通りにすることができる、『禁忌とされたチート能力』だ。
「これをあなたに授けたら、私は間違いなく罰せられて神々の牢に送られるでしょう」
「大丈夫。異世界転移したら、すぐにメルを召喚するから」
「信じていいんですよね?」
「信じてください」
俺もメルも、お互いを信じきられなかった。
そのくらい激しいいじめを受けてきて、誰一人助けてくれなかったから。
だけど、これからは違う。
俺は、俺たちは…
一緒に『復讐』をするのだから。
異世界転生でなく転移なのは、俺をいじめていた奴らを呼び出した時にすぐに俺の仕業だとわかるようにするためだ。
そんな俺が転移した先はある村の近くだった。
「ブヒ!」
そしていきなり奇声を上げて俺に突っ込んできた角の生えたイノシシのような魔物に対し、
「伊藤一馬を異世界召喚。楯となれ」
俺は驚くほど冷静に能力を行使し、最初の復讐相手を召喚して楯とした。
「な、何だここは?!うごおっ!」
召喚された伊藤は学生服からジャージに着替えさせられて、胸のゼッケンに『シールド』と書かれて角イノシシの前に置かれ、その攻撃をしっかりと受け止めた。
「楯として扱うとこのくらいではケガをしたり死んだりはしないみたいだな」
「一体何のことだ?あっ?!お前は死んだはずじゃあ?!」
「異世界に転移してきたんだ。そしてお前を『楯』として異世界召喚した」
「何だって?!くっ?!体が動かねえっ!」
「お前は俺が自由に扱える。また出番があるまで『召喚ボックス』に入って待機していろ」
俺は『万物召喚隷属術』のオプションである『召喚ボックス』に伊藤を放り込んだ。
それはいわゆる物品を自在に出し入れできるアイテムボックスと同じで、俺が召喚した奴を保管することができる。
「こいつを倒すには剣が必要だな。異世界から九条院麗華を召喚!剣となれ!」
九条院はお嬢様だがジャージを着せられてその胸のゼッケンに『エクスカリバー』と記されていた。
「え?うそ?!何?ここはどこ?」
俺は麗華の言葉を無視して、空中に現れた彼女の足首を掴んで振り下ろし、角イノシシを真っ二つに切り裂く。
さすがエクスカリバー。
ただの楯にしかならなかったあいつとの違いは何かわからないが、麗華は長らく俺の復讐心を満たしてくれるだろう。
「あなたは死んだはず…」
返事をせずに俺は麗華を召喚ボックスに仕舞った。
恨みの言葉をぶつけたいが、それは後でいい。
今は一刻も早くメルを召喚したかったからだ。
「メル・ベルロイドを異世界召喚し、俺の能力を分け与える!」
目の前にメルが現れ俺に半泣きで微笑んでくれる。
「私にもあなたの能力を分けてくださったのですね。私を信じてくれて嬉しいです!」
「俺たちはこれから仲間になるんだからな。せめて俺たちだけでも信じあうようにしよう」
「はい。この世界で私たちの復讐心を満たしましょう」
「ああ」
「ちょうどあそこに村があるから、そこでゆっくり話そうか」
「そうね」
そして俺たちは近くの村に入っていった。
いじめられていた俺の唯一の趣味はベッドの中で読むネット小説だった。
だから異世界に転移してからやることはあるていどわかっているつもりだった。
「冒険者として登録したいんですけど」
身分証を作るために村にある冒険者ギルドに登録を済ませ、アイテムボックスに入れてある角イノシシを買い取ってもらう。
「これ、お二人で仕留められたんですか?!Eランクの魔物ですよ?!」
「ああ」
「なんて綺麗な切り口…でも見た所、剣とかは持っていないのに」
「ここの職員は冒険者の手口の詮索をするのか?」
「い、いえっ!失礼しました!」
そして手に入れたお金でこの世界の衣服と寝床を確保する。
「しばらくはここを拠点として、それからもっと大きな町に行こう」
「ねえ、ねえ!私、一刻も早く『召喚』をしたいの!だから早くクエストを受けましょう!」
「休まなくていいのか?」
「だって、今すぐにでもあいつらに思い知らせてやりたいもの!」
「わかった。でも新規召喚は1日に3人までだからな」
「一緒に考えた能力だもの、わかってるわ!」
俺たちは再び冒険者ギルドに戻って依頼の貼られた掲示板を見る。
「何だよ、その美人なねーちゃん、さっきのヒラヒラした服やめたのかよ」
「もしかしてお仲間の趣味かあ?」
「ケケッ。そんなセンスの無い男より俺たちと付き合いなよ」
やっぱりテンプレってあるんだな。
そして他の冒険者はもちろん、ギルドの職員もそれを止めようとはしない。
「遠慮するわ」
「お前、このギルド最強のDランクパーティー『シルバー・ウルフ』に逆らえると思っているのか?」
「彼女に手を出さないでください」
「生意気な奴だな。おい、お前ら、思い知らせてやれ」
「「おう」」
俺はそいつら3人に殴られ続けた。
その間、メルと目が合ったが、彼女は俺の気持ちを察してくれてじっと耐えていてくれた。
いや、ただ耐えていただけではない。
依頼を1つ掲示板から剥がすと、受付に持っていったのだ。
「これを受注します」
「ゾンビ退治ですか?!これはEランクで4人以上居ないと難しいクエストで、Fランク2人ではでは厳しいですよ?!」
「そこに居るDランクの人たちとの共同受注ならできるんでしょう?」
「そ、そうですが…シルバーウルフさん!一緒に受けられますか?」
「ゾンビ退治かよ!そのくらい楽勝だぜ!」
「終わったら俺たちにサービスしてくれるんだろうな?」
「ええ、いいわよ」
「マジかよ!ほら、テメーも立てよ!とっとと墓地に行くぞ!」
シルバーウルフは墓地に行く途中、代わる代わるメルにボディタッチをしている。
「そしてあなたがリーダーのアルバ・フェイルさんなんですね」
「おう。この3人がこの村を守る最高の冒険者だ!」
「オラ、テメーも早くついてこい!」
ボロボロにされた俺はどうにかついていく。
そして目的の墓地にたどり着いた。
「居る居る!ゾンビがわんさかだぜ!」
「テメーらはおとなしく俺たちの戦いっぷりを見ていな」
「いや、あいつらは俺とメルだけで倒す」
「Fランクのくせに生意気じゃねーかよ!」
「先にお前を殺してやろうか?」
「そうだな。ゾンビに喰われたことにすればいいからな!」
馬鹿な奴らだ。
こいつらは自分たちが復讐される立場だということに気づいてないのだから。
「アルバ・フェイルをロックブラストとして召喚!」
俺がそう言うとアルバは光に包まれて消え、俺の真上に出現した。
その姿はジャージを着せられており、胸のっゼッケンには『ロックブラスト』と書かれている。
「リーダー!なんて格好に?!」
「何しやがった?!早くリーダーを下ろしやがれ!」
「死にたいのか!早くしろ!」
「うるさいわね。エディ・カブスをホーリーアローとして召喚。ケイジャン・ハリーをホーリーシールドとして召喚!」
シルバーウルフの残り2人も光に包まれて姿を消し、ジャージとゼッケン姿で俺たちの周囲に召喚された。
「う、動けねえ?」
「魔法も使えないだと?!」
「どうなってやがる?!」
「貴様ら、一体何者だっ!」
「俺たちは…」
「私たちは…」
「「ダーク・リベンジャーズ!」」
名乗りを上げている間にゾンビたちが襲い掛かってきた。
「行け!ロックブラスト!」
全身が岩のように固くなったアルバが宙を舞い、襲い掛かってきたゾンビたちをまとめて弾き飛ばした!
「グシャアアア!」
「ぐわああああ!」
ゾンビとアルバの悲鳴がハモる。
「ホーリーアロー!」
聖なる光に包まれたエディはゾンビたちの中を突き進み、体当たりしながら次々とゾンビたちを浄化していく。
「うげえええっ!ゾンビの臓物があっ!おええええっ!」
吐こうとしても俺たちの『道具』になったこいつらは吐くことも排泄することもできない。
「ホーリーシールド!」
「俺を楯にするだとおおおっ?!うごおっ!」
ホーリーシールドにぶつかったゾンビは溶けて消えていく。
「メル、やりすぎるなよ。コイツを使えない」
俺はエクスカリバーである九条院麗華を召喚すると、ゾンビたちをぶった切り始めた。
「いやあああっ!くさいいいいっ!どうしてわたくしがこんな目にいいっ?!」
「決まっている。復讐のためだ」
「あ、あなたのような庶民にそんな権利などありませんわ!」
「権利ならたった今手に入れた。そしてお前は全ての権利を失ったんだよ」
「そんな…いだいっ!くさいいっ!いやあああっ!」
俺は叫ぶエクスカリバーを振るうたびに心が満たされていく気がした。
コイツが散々俺を召使いのようにこき使った挙句、ストレス解消のためにピンヒールで穴が開くほど踏みつけられたり、飼い犬の猟犬たちに襲わせたりと散々な目に遭わされてきた。
「これからじっくりと復讐してやるからな」
そう言うと、俺は最期のゾンビの首を掻き切った。
「さて終わったな」
「貴様ら…俺たちをこんな目に遭わせてどうなるかわかってるんだろうな?」
「絶対に許さないからな!」
「早く俺たちを開放しやがれ!」
「じゃあ開放してやろう」
「「開放!」」
俺とメルの宣言と共に、シルバーウルフの3人は隷属化から解放されて元の姿に戻った。
「やった!ぐっ、ぐえ?!」
「よくもやってくれたな!うぐっ?!ゲエエエッ!」
「いでえ!苦しい!ぐああああっ!」
3人とも吐きながら体がどんどん紫に染まっていく。
「それだけゾンビに噛まれたら当然よね」
「開放せずに召喚ボックスに収納すれば良かったのだけどな」
「おのええええ…ぎざまらああああああっ!」
「ぐええええ!」
「がああああ!」
ゾンビ化した奴らの動きはすさまじかった。
どうやら元よりも強くなるのだろう。
しかし、その動きは俺に向かってくるだけの単調なものだった。
「メル!」
「ええ。雷神ケルフ・フィンバルドをハンマーとして召喚するわ!」
身長3mはあろうかという逞しい雷神がそこに現れ、ポカンとした表情をしている。
「俺はどうして下界なんぞに?!」
『ハンマー』と胸のゼッケンに書かれたジャージを着た雷神はその答えを得る前に、その足を掴まれて、元シルバーウルフたち3人の所に叩きつけられた!
ズドドーーーーン!
その瞬間に雷光が走り、ゾンビたちは木っ端みじんになる。
「いでええっ!き、貴様は女神メルっ!下級神の分際で俺様になんてことしやがるんだっ!」
「それはこちらのセリフよ!上級神だからって私に魔法の試し打ちをしてきたり、家を木っ端みじんにして私を生き埋めにしたりしてきたわね」
「フン!何も司るものもない、転生転移の下請けしかできない下級神に『使い道』を与えてやってるんだ!感謝するべきだろうが!」
「そうね。だから私もあなたの『使い道』を与えることにしたのよ。これからあなたは私の『武器』よ。こうやって振り回されて敵を殲滅するのがその仕事よ」
「くううっ。どうしてこんな下級女神などに俺様が束縛されるのだっ?!」
「私はあなたたち上級神に虐げられながらも必死にあなたたちの真名を探したのよ」
「俺の真名を盗んだだと?!しかし下級神の力ではどうしようもできないはず!」
「私はこの世界に召喚されて、そこの人間の力を分け与えてもらったのよ」
「異世界転移のチート能力かああっ!」
くやしそうに叫ぶ雷神。
それをもう一回地面に叩きつけると、召喚ボックスに仕舞う。
「終わったな」
「そうね。ちょっとすっきりしたわ。でも、いじめられた上に真名を知らないと召喚できないのは不便ね」
「条件が厳しいほど能力の効果が高くなるんだろ?」
「そうよ。でも早く強くなって、さっきみたいなやつらに馬鹿にされないようになりたいわ」
「少なくとも、ここのギルドで馬鹿にされることは無くなると思うぞ」
俺たちはギルドに帰ると、『ゾンビは全滅させた。しかしシルバーウルフの3人はゾンビに噛まれてゾンビになった』と報告した。
「じゃあシルバーウルフの3人がまだゾンビとしてそこに居るんですか?!」
「いや、俺たちが倒した」
「倒したですって?!」
ギルドの受付嬢は驚いて立ち上がる。
「ゾンビ化するとランクが1つ上がるくらい強くなるんですよ!ありえません!」
「じゃあ、見て来いよ」
俺たちが待っている間に冒険者を伴ったギルド職員が墓場に出かけてすぐに戻ってきた。
「本当です!ゾンビたちの死体の中にシルバーウルフと思われるゾンビ化している死体を見つけました!」
「襲ってこなかったのか?」
「ほとんどミンチのようにされていました」
ブルっと震える受付嬢とギルド内に居る冒険者たち。
「ど、どうしましょう。Dランクハンターの彼らが居ないとこの村は誰を頼れば…」
「そいつらを頼るしかないだろ?」
そう言いながら奥から出てきたのは、でっぷりとして赤い顔をしたおっさん。
「俺はここのギルドマスターのウィルム。お前たちはCランクのゾンビを倒したということで特例でDランクに格上げする。これから頼むぞ」
それだけ言うとさっさと引っ込んでしまった。
「ここのギルドマスターは仕事中に酒を飲んでいるのか?」
「そろそろ夕方だからいいんです」
どうやらここは腐った人間ばかりのようだな。
しかし、俺たちの『足がかり』にするにはちょうどいいし、見捨てたところで心は痛まない。
「メル、宿に戻ろうか」
「ええ」
「一部屋でいいのか?」
「ええ。だって…きっと悪夢にうなされるから」
「神様も悪夢を見るんだな」
「あなたは見ないの?」
「俺はいつも悔しくて寝付けなくて、小説をひたすら読んで疲れてから寝ていたから夢とか見なかったな」
「そう。あなたもつらかったのね」
「メルもな」
俺たちは隣り合ったベッドから手を伸ばすが届かない。
「ベッド寄せようか?」
「そうね」
ベッドを動かしてくっつけると、手を握り合う。
「これで寝れるかな」
「きっと良く眠れるわ」
「メル。幸せになろうな」
「えっ?!あっ、えっと、まだそういうのは早いというか…」
「あっ…そうじゃなくて、これから俺たちは復讐をしていくけど、苦しんだ分幸せになろうなって意味だから」
「そ、そうよね。勘違いしてごめんなさい。でも、あなたとなら幸せになれる気がするわ」
「…」
「あっ、わ、私もう寝るから!おやすみなさい!」
しばらくドキドキしていたけど、俺はいつもよりずっと早く眠ることができた。
「いや、いやあっ!助けてえ!やめてえっ!」
「ん?メル?!」
まだ夜だ。
しかしメルは俺の手を握ったまま苦しんでいる。
「メル!しっかりしろ!」
俺はメルの手を握りつつ、もう片手で頭をなでてやる。
「いやあっ!あうっ!はあ、はあ、はあ…はう…」
苦しんでいたメルはだんだん落ち着いていき、やがて目を開けた。
「…健太さん?ごめんなさい。起こしてしまいました?」
「まだ寝付いていなかったから大丈夫だ」
「…健太さん優しいんですね。そんな健太さんをいじめた奴らなんて、私も許せません」
「メルをいじめた奴らを俺も許さないよ」
「ありがとうございます。あの…ぎゅっと…いいえ、その、おやすみなさい」
そういうと布団を頭からかぶって眠ってしまった。
俺の手を強く握りしめたまま。
1か月後。
俺たちは冒険者家業をしながら召喚を使わなくてもいいくらいに鍛えることができた。
「どんな武器も使えるなんて、健太は本当に器用ね」
「独学だから適当だけどな」
「でも、それはきっとその足さばきのおかげよね。相手との間合いの取り方が完璧だからどんな武器も使いこなせているのよ」
「足さばきか」
また嫌なことを思い出してしまった。
俺が中学校の部活でサッカーのレギュラーに選抜された時、選ばれなかった奴らに呼び出されて襲われて、足に大けがをさせられた。
そして俺はサッカーをできない体になってしまったんだ。
成績でトップを取ると2位になった奴に指をつぶされたこともある。
でも、そんな俺を誰も助けてくれなかった。
俺は…俺を見捨てていた教師やクラスメイトに対しても復讐をするつもりだ。
「何もしていなくても、俺のいじめを黙認している時点で復讐の対象なんだよ」
「そうよね。だから私もいつか最高神の真名を知って召喚してやるんだから!」
真名を知らないと召喚できない。
そして、俺は俺を一番傷つけた妹を召喚できないでいる。
なぜなら、俺が死んですぐに妹は誰かの養女になって転校したからだ。
「妹の友人を召喚できれば聞き出せるんだがな」
俺は召喚した奴らから妹といつも一緒に居た友人のことを聞き出そうとしたが、今のところ誰も知らなかった。
「健太」
「メル?どうした?」
「やっと『万物召喚隷属術』にオプションを追加で来たわ!」
「例のやつか!」
「そうよ!」
「やったな!」
俺とメルは手を取って喜び合い、顔を見合わせて赤くなり、ささっと手を離す。
「そ、それでね。さっそく試したらどうかな?」
「よし、召喚!エクスカリバー!」
俺の目の前に九条院が現れる。
「あなた、またわたくしを…」
「そしてこれを相応しい姿に『形状変化』するっ!」
「な、何をきゃああああああああっ」
悲鳴と共に九条院の体はドロドロと溶けるように変形していき、美しい剣の姿になった。
「これなら普段から持ち歩いて使っても問題ないな」
今まで召喚してきたいじめっ子たちは強力な武器や魔法であったが、人前で使うわけにはいかなかった。
しかし、これなら問題なく人前でも使うことができる。
「その代わり、能力は大幅に低下するわ」
「そうだったな」
ヒュンっとエクスカリバーを振るうと、伸びて来た自分の前髪を切り落とす。
「それでも十分な切れ味だ」
『何するのよ!元に戻して!』
「声もちゃんと聞こえるな」
「そりゃあ、苦しむ声が聞こえないと意味がないもの」
『なんですってえ?!』
「ああ、心配しなくても九条院の声は俺とメルにしか聞こえないから」
『この人でなしっ!死ねっ!死んでっ!』
この罵倒すら今の俺にとっては心地いい。
九条院が苦しんでいる証だからだ。
「じゃあ私はハンマーを形状変化させるわね」
『おのれ、メルうううっ!』
「ふふん。いい気味だわ。これでいつでも蹴飛ばしたり叩いたりできるわね。ほらっ」
『ぐほっ!や、やめてくれええっ!』
「やめてほしかったら、お前の知っている神の『真名』を言うのね」
『言うものかっ!』
「そう。ねえ健太。またどぶ掃除のクエスト受けない?固まった汚物をこのハンマーで叩きたいのよ」
『そ、それだけはいやだあああっ!』
さらに2か月後。
俺たちはCランクに上がれるだけの実績を上げて、大きな町の冒険者ギルドに試験を受けに行くことになった。
「Cランクになったら、ここにはもう戻ってこないのですよね」
悲しそうに言う受付嬢。
彼女には最初の時から色々と世話になったな。
「またすぐに会えるわ」
「はい。待っています。行ってらっしゃいませ」
ギルド職員や冒険者たちに送りだされて、俺は冒険者ギルドを出て、村を出て、街道を進んだ。
「ここらで休むか」
俺は街道から少し外れた所にテントを張る。
「そろそろ夜中だからいいだろう」
俺は月明かりの中、テントを出る。
「エリザ・フェイルをウォーホースとして召喚!」
俺の目の前に現れたのはジャージ姿で『ウォーホース』というゼッケンを付けた受付嬢のエリザだった。
「ん…えええっ?な、なんで私浮いているの?!それにこの格好はいったい?!」
「お前はこれから俺の『道具』になるんだ」
「健太さん?!あなたの仕業ですかっ?!どうしてこんなことを?!」
「復讐のためだ」
俺の言葉にビクッと体を震わすエリザ。
「お前は俺がギルド長に報告に行く時は必ずお茶を出してくれていたが、そのお茶は普通のお茶だったのか?」
「も、もちろんよ」
「そうか。それを一杯アイテムボックスにしまってあるから、飲ませてやろう」
俺はアイテムボックスからまだ湯気の立つ飲み物の入ったカップを取り出した。
「け、結構です!そんなもの飲みたくありませんから!」
「そんなもの?」
「そんな汚い雑巾の汁の入ったお茶なんて飲めないわよ!」
「どうしてそんなことをした?」
「だって、あなたは私の兄さんを殺したのよ!」
「アルバ・フェイルのことだな」
「知っていたの?!」
「名字が一緒だからな。それに俺にたびたび低俗な嫌がらせをしていたからそうだとは思っていた」
クエストの地図をわざと危険な場所を経由する道に書き換えて渡したり、俺たちの冒険者証に触れる機会があるたびに『毒』を塗りつけたきていた。
「まさか嫌がらせに気づいていたの?」
「ああ」
「それなのにどうしてギルド長に言わなかったのよ?!」
「だから言ったろ?お前に『復讐』するためだ」
俺たちをいじめる奴らがただ叱られて終わるとか謝っておしまいなんて甘い結末を許しはしない。
「さて、乗り心地を貯めさせてもらうか」
「え?何をするのよ?や、そ、そんな…いや、そんな所触らないでっ!」
「いやあああああああああああああああああああっ!」
深夜の街道にエリザの悲鳴が響き渡った。
翌朝。
形状変化により巨大な戦闘馬となったエリザに俺とメルが跨る。
もちろん形状変化の時に鞍や鐙や手綱なども設置されている。
「これで早く移動できるな」
「買った馬と違って出し入れ自由なのがいいわね」
「そのうちエリザに馬車を引かせてもいいな。馬車ならアイテムボックスに入れられる」
この世界の一般的な人が持つアイテムボックスは大きくてもせいぜい荷車1台分程度の要領だが、俺のアイテムボックスは限界が見えないほどの大容量だ。
「行くぞエリザ!」
ぴしっとエリザの尻を叩く。
『いやあっ!やめてえっ!』
例え嫌がってもエリザは俺の『道具』だ。
だから意思とは関係なくその体を動かすことになる。
『いやあっ!走りたくないのにいっ!馬の人生なんていやあっ!』
「俺の道具だから排泄はしなくて済むが、オス馬には気を付けろよ」
『どうしてよ?』
「お前はメスだから、盛られるかもしれんぞ」
『いやあああっ!馬相手に初めてを奪われるなんて絶対に嫌あっ!』
そんなエリザの心地よい鳴き声をメルと聞きながら町を目指す。
さすがウォーホース。普通なら馬車で1週間の道のりをわずか2日で到着したぞ。
俺は街に入る前にエリザを召喚ボックスに放り込み、メルと町に入った。
町に入るには城門の脇にある部屋に一組ずつ入って受付をしないといけない。
「ようこそ。ここはケセラの町だ。…なんだ黒目黒髪の東方人か」
俺を見るなり蔑むように言う町の受付。
「20000ゴールドだ。もちろん一人あたりだぞ」
事前に聞いていた話では身分証明書があれば2000ゴールド(2000円相当)で済んでいたはず。
「目や髪の色で区別するんですか?!」
「嫌なら帰れ。もし誰かに告げ口しても無駄だぞ。俺はお前が『この町に入るのに不適格だと判断した』と言えばいいだけなんだからな」
「今までもこういうことをしてきたんだな?」
「それがどうした?」
ニヤニヤしている男に俺は20000ゴールドを支払う。
「女、お前も出すんだ」
「ねえ、カッコいいおじさん。お名前は?」
「お世辞を言っても安くはならんぞ。そんな奴と一緒に居るお前が悪いのだからな」
「なんだ。名無しなのね」
「俺様にはヘンゼル・グラクールという名前があるっ!由緒ある王国騎士団員の甥の妹の夫を兄に持つのだぞ!」
どれだけ遠いんだよそれは。
俺たちは40000ゴールドもの大金を払って町に入っていった。
「ねえ健太。あいつはどうしてやるの?」
「俺たちには1回しか悪さをしていないが、今までも同じことをしていたみたいだし、これからもやるだろう。そういう奴には『相応の罰』が要るよな」
「そうよね!」
「召喚してから送還した相手に『何かを刻み付けられる』ようなことってできないかな?」
「新しい機能ね。頑張ってみるわ」
「ああ、頼むよメル」
「任せて」
メルも笑うようになってきた。
復讐のために『道具』を使っている時は黒い雰囲気を出しているけど、俺と二人の時は明るい表情になってきた。
俺たちの復讐が終わったらこんな『道具』は全部捨てて、新しい人生を歩むことができるのだろうか?
そのためには、やっぱり俺は妹を、メルは最高神を召喚して復讐しないと終われないよな。
そんな中で声が響く。
「第8王女アメリア様が通られるぞ!道を開けよ!」
大勢が一斉に道を開けて傅く。
そして豪奢な馬車が通ろうとしたところで、子供がその前に飛び出した。
慌てて馬車は止まるが間に合わない!
俺は無意識のうちにその子供を抱えると、そのまま馬に弾き飛ばされた。
「貴様ら!よくも王女様の目の前に飛び出すなどとっ!」
近衛兵かこの町の騎士か知らないが、俺に向かって剣を振り上げて来た。
「やめなさい!」
そこに凛とした声が響いた。
そして馬車から王女様が顔を出された。
年齢は12歳くらいだろうか?
「その者は子供を助けようとしただけ。どうして剣を向けますの?!」
「し、しかしこいつは黒目黒髪の異邦人!王女様に仇なす刺客かもしれません!」
「そんなわけないでしょう?剣を納めなさい!あなた、怪我はしてないかしら?」
「ええ、大丈夫です。頑丈ですから」
それは嘘だ。さすがに馬に蹴られたから肋骨くらい折れていると思う。
まあ、あとでメルの神聖魔法で治してもらうけどな。
「ならばついてきなさい。その子供を救った褒美を取らせます」
しばらく王女の行列に付いていくとそのまま大きな屋敷に入っていき、俺たちは部屋に通された。
するとそこに居たのは王女一人だった。
「良く来てくれました」
「王女様。わざわざ褒美をもらうほどのことではありません」
「褒美だけではありません。実はあなたの正義感を見込んでやってほしいことがあるのです」
「やってほしいこと?」
「私をさらって、遠くへ連れて行ってください」
…とんでもないことを言ったぞ。
「夜のうちに抜け出します。そして私を連れて、エウレア王国まで送ってください」
エウレア王国と言えば、このアランド皇国と敵対している国か。
「どうしてですか?」
「もう私は…ボクはこれ以上姉さんたちのおもちゃにされるのは嫌なんだっ!」
「ボク?それにその話し方は?」
「これが本来の口調だよ。うちの王家は7人ずっと王女ばかり生まれて王子が生まれなかったから、8番目のボクは男の子として育てられたんだよ!王子じゃないから継承権1位になるわけじゃないのに、姉さんたちからずっといじめられ続けて…とうとうこの町の『白豚伯爵』の所に嫁入りさせられることになったんだ!」
「まだ若すぎませんか?」
「実際の結婚はまだ先だよ。でも、幼女趣味の白豚伯爵が大人になる前に手を出そうとしているのを姉さんたちが知って、私をこの町に送り出したんだ!近衛兵も無しでね!」
さっきの兵士はその白豚伯爵の部下で、この町の衛兵は白豚伯爵の影響で遠くの国の異人を激しく差別しているらしい。
「王女をさらえば死罪と承知で頼まれているのですか?」
「もちろんだ。だからもし引き受けてもらえるならこれを渡すよ」
机の上に置いたのは大きなダイヤの付いたネックレス。
その価値は大きな屋敷が買えるどころではない。
「これは母の形見なんだけど、もうボクには必要ないものだから」
「これがあればエウレア王国で暮らすのに十分では?」
「他に持っているものが無いから仕方ないよ。エウレア王国に付いたら冒険者をして暮らしていこうと思っている」
「王女が冒険者になれると思っているんですか?」
もう俺の気持ちは決まっていたが、あえてそういう質問をする。
「王子として育てられたから、剣術や攻撃魔法はかなりの腕と自負してるよ」
「それならその白豚を去勢してやればいいのに」
ぼそっとそう言うメル。
「ぷくくっ。君のお連れの人って面白いね。それにしても綺麗な人だね。姉さんたちなんか足元にも及ばないくらいだよ」
「それは私が女神だからよ」
「ふふっ。それが冗談と思えないくらいだね。そうだ。君の隣に居て男装していれば、きっと誰もボクが王女って気づかないよね。みんな君に目が行っちゃうから」
王女はちょいちょい笑っているが俺たちにはわかる。
それが『強がり』だということに。
「王女様、いえ、アメリア」
「この依頼、受けさせてもらいますわ」
「やったあ!」
屋敷を抜け出す必要なんてない。
俺たちはどこからでも彼女を呼び出せるのだから。
宿に泊まった俺はさっそくアメリアを召喚することにした。
「アメリア・クラフハートを『Cランク昇格試験を受験する男性冒険者』として召喚する!」
俺たちの目の前に現れたのは『男性冒険者』というゼッケンを付けたアメリア。
「こ、これはなんだい?!変な格好なんだけど?!」
「アメリアが見つからないように、変装させます」
「変装?」
「アメリアは男性冒険者になってもらいます。形状変化!」
「あ、ああああっ!」
王女様はあっと言う間に男性冒険者に姿を変えた。
「ちんまい」
「ほんとね」
「どうしてこうなったんだよ?」
アメリアは12歳のままの姿かたちで男性冒険者の服装を着こんでいた。
「身長とかそのまんまじゃないか!」
「まあ、元々見た目が中性的だからね」
「でも、胸とか、その、あっちはどうなの?」
メルがもじもじしながら言っているのは『男性特有のモノ』のことだろう。
「待ってて…あっ、胸が無い!こっちはついてるっ!」
自分の体を確かめて目を白黒させているアメリア。
「胸は元々無いようなものだからいいけど、こんなものぶら下げているなんて嫌だよお」
「女性と知られたら連れ戻されますよ」
「でもずっとこうなの?」
「いえ、誰にも見られない時や宿屋の中で寝る時くらいは元に戻っていいですよ」
「それなら仕方ない…ん?ポケットに何か入っているよ。これは『Cランク昇格試験依頼書』とギルドカード?!」
身分証明が無いとここから出るのが難しいと思ったから『Cランク昇格試験を受験する男性冒険者』なんてことを言ったけど、どうやらうまくいったようだ。
「これで一緒に試験を受けられるな」
「そうね」
「ちょっと待ってよ!この書類とギルドカードの名前、ボクの本名そのままだよ!」
「「え?」」
すぐに『Cランク昇格試験を受験する男性冒険者アメリ・ハザード』と言って再召喚することになった。
「よろしくアメリ」
「こちらこそ、よろしく。健太とメル」
こうして俺たちは仲間になった。
そして王女が虐められていた内容を吐露して俺たちの『復讐の仲間』になるのは少し先の話だ。
「俺たちは」
「天に仇なす」
「復讐の使徒」
「「「ダーク・リベンジャーズ!」」」
決めポーズは無い。
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