村娘です。見た目だけで魔法使いと勘違いされた私は、戦場にいます。いやいや私、花嫁修業に向かう村娘なんですけど?誰か私の話を聞いて下さい。(村娘一人目)
「すまないが魔法使い、手伝ってくれ。緊急事態なのだ」
魔法使い?
「はい?いや私は……」
ガシッ。ぴゅーんッ。パカラッ、パカラッ、パカラ――。
馬を止めた騎馬隊の一人に話すまもなく、首根っこを掴まれ、私は強引に連れ去られていた。
私は花嫁修業の為に、王都に向かっている村娘ですけど?
はい?
なんで勘違いされたのだろう?
私には、思い当たる点が一つあった。
私の姿だ。
おばあちゃんがくれた、黒のローブ。
親友が日除けにとくれた黒の三角帽子。
村長が長旅にとくれた杖。
そして、私のこの長い黒髪。
総合すると……魔法使いかな?魔法?
騎士さん、私こう見えて、花嫁スペックは高いよ。
ハイスペックをお求めならこの私。
…………。
違うんですー。私は魔法使いではないんですっ。
ただの村娘なんですー。
あたふたする私を構わず、馬は走り続ける。
風のせいか私の声は騎馬隊には聞こえていないようだ。
騎士や冒険者、合わせて百人程が重々しい空気で集まっている。
そこで私はやっと下ろされた。
早く誤解を解かないと……。
戦闘が始まってしまう。
「あのー……私、魔法使いじゃ……」
「時間がない。あそこの魔法使い達にまざってくれ」
「いや、私はですねー」
「聞こえなかったのかっ?時間がないと言っている。早くしろっ」
「はっ、はい」
こっ、怖っ。
偉そうだし。私の苦手なタイプ。将来禿げるやつだ。
頭ごなしに言われると、昔から体が反応してしまう。
騎士に言われた通り、私は後方の冒険者の列へと向かう。
まだ冒険者達の方が話がわかるだろう。
「よろしく」
列に並んだ私の横にいる男性は、高そうな服装と、これまた高そうな魔石の付いた杖を持っている。
将来禿げるやつだ。
まぁ、優しい雰囲気からして、話を聞いてくれそうだ。
よしっ今ならまだ間にあう。
「宜しくお願いします。じゃなくて、すみません。私、魔法使いじゃないんです」
「君もか?私も魔法使いではない」
はい?も?
「私は賢者だ。私もよく間違われる」
あなたが賢者でも、ロリコンでも、キャンディペロペロでも私はいいんです。
「いやそうじゃなくて……私は……」
その時だった。どこからともなく前方から聞こえた。
「来るぞーっ」
そして、地鳴りが響く。
ドドドドドッー。
イノシシみたいな魔物が沢山こちらに向かってきている。
間に合わなかった。アーメン私。
神様ー、戦場に戦えない村娘がここにいますよー。
「魔法使いチーム、第一射、よーい」
ヤバいッ。わ、わたしも何かしないと、周りから睨まれそうだ。振りだけでもしておかなきゃっ。
周りの魔法使いは呪文を唱え始める。
私は目を閉じて、周りの詠唱を必死に聞く。
うん。長くて覚えれないっ。
よ、よしっ。それっぽく言ってみよう。
「火の聖霊よ………燃えさかる萌え?私も萌えみーん」
前方の指揮官が叫ぶ。
「放てーっ」
「うりゃー」
周りとのタイミングはバッチリである。
辺りは放たれた魔法で、煙が舞っていた。
我ながら良い出来だ。
はっはっはっ魔法使いのようだ。
ふう。終わった。私はやりとげたぞ。
私は思わず笑っていた。戦場を生き抜いたよ神様。
私のうりゃー聞いた神様?
臨場感だけ、凄くなかった?
「突撃ー」
????
まだ終わってはいなかった。
魔物はまだ生きているようだ。
武装した騎士や冒険者が駆け出した。
「魔法使いも前方に向かえー。騎士達の補助を頼むー」
…………。
もう私には無理だ。いつわれない。
騎士に迷惑がかかる。
最悪、私のせいで人が死ぬ。
隣の賢者様へ顔を向けた。
「あのー?私、補助呪文できないので、帰っても……」
「なら、君に出来る事をすればいい。ここからは乱戦だ。また会おう」
賢者様は周りの者と共に走り出した。
…………。
私の目の前で、沢山の人が必死に戦っている。
でも、私は一歩も動けない。
…………。
私に出来る事…………補助?魔法?
ある。私に出来る事は………ある。一つだけ。
集中しろっ。
私は自分の拳を力一杯握り、お腹に力を込めた。
「みんなーガンバレー!」
??!?
皆が初めて、私の言葉を聞いた。
――――その後、私は聞かれた。
「どこのチームの応援?」
クスッとなる所はありましたか?
『私はハイスペック』『俺は禿げじゃねえし』『花嫁修業中』『こいつ私の事すきなんじゃね?』と思った方。
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村娘四人目まで投稿しました。
連載のコメディーも投稿してます。
よかったらそちらも、読んでみて下さい。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
コメディーに祝福を。