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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界4 ファイナルドラゴンテイルズ/アルティメットエディション
99/122

その17

 最近泣きゲーや泣きアニメを求めてしまいます。

ゲームで泣きゲーと言えばFF10、アニメで泣きアニメといえばAngelBeats!とかKey作品でしょうか。

 そういえばどっちも消える消えないとか言ってますね(聞いてない)


 ラノベだと半分の月が上る空がうるうるきたり青春を感じて好きですね(聞いてない)

 そして時は戻り―――。




 ショーくんからの緊急メッセージを聞いた俺たちは急いで時の神殿を目指していた。


 落ち着いた普段の彼からはかけ離れた声色を聞いた俺たちの間には緊張感がただよう。


 それに気になることを言っていた。


 彼女とは一体……。


「見えてきたぞ」


 前方を見ればかつて訪れたままの時の神殿が見えてきた。


「クレト……」


「ああ……ビンビンに感じている」


 だが、周囲に漂うプレッシャー。


 これは……時の力なのか。


 ガレリアをテキトーに停めて神殿内に入る。


 その時だった。


 轟音と共に土煙が巻き上げ、人影が飛び出してくる。


「なんだ!」


「その声は……クレトか!」


 飛び出してきたものの正体は……ショーくんだった。


 体中に傷を負っていて、立っているのも不思議な状態だ。


『一体なにがあったの……?』


「おっさん、すみません……シスタが……!」


『シスタ……?』


 そういえば彼女はあれからどうなったか気になっていた。


 ショーくんの口ぶりからして生きてはいるようだが……。


 あれだけの傷が数週間で癒えるとは思えなかった。


 彼は何を知っているのか。


「俺がもっと気を付けていれば……今ほど自分の無力さを感じたことはありません……」


「しっかりしてください! ショーさん」


 ごふっと血を吐き出すショーくん。

だが、それでも伝えたいことがあったのか、言葉を続ける。


「落ちついて聞いてください……預言書の管理者は……」


 ごくり……。


「シスタなんです!!!」


『なん……だって?』


 とうとつに告げられた真実に理解が追いつかない。


 彼女が……預言書の管理者?


 それに彼女はアジトで治療を受けているのではなかったか。


 灯台下暗しとはまさにこのことだった。


「俺が彼女を連れださなければ……俺のわがままであなたを傷つけることになってしまった……」


 ショーくん……。


 なんだか分からないが彼は責任を感じているようだった。


「異分子よ」


 そこに覚えのある声が聞こえてきた。


 今までの旅で、近くで、散々聞いてきた声だ。


 土煙が消え、その姿が通路の奥から現れる。


「どこまで逃げるつもりだ」


 その姿は……まぎれもない、苦楽を共にした仲間だった。


『シスタ……!』


「あなたですか、やはり……そんな気はしていました」


 かつての天真爛漫な彼女からは見られない、冷たい表情。


 一体どうしてしまったのか。


 それに、彼女が預言書の管理者なら……。


「そうか……預言書を書き換えるということは……」


「管理者である彼女を倒さないといけない……」


『!!!』


「だが……あのショーでさえ敵わない相手だ。ただ者では……!?」


 クレトくんが言葉を言い切らずに目を見開いている。


 俺も感じていた。


 彼女の背後から数えきれないくらいの巨人がやって来ていた。

それらが放つプレッシャーはどれもが《永遠剣》に似たものを感じる。


「か、勝てるわけがない!」


「逃げましょうおっさん!」


「逃がしません」


 後退しようとした俺たちに向かってシスタは謎ビームを放ってきた。


「ちぃ!」


『ぐっ、うおおおおおお!!!』


 クレトくんはそれを防ぐため、《永遠剣》を盾にする。


 俺はそれを全力でサポートするため時の力をフルに解き放つ。


「うるるぅぅぅあああああ!!!」


 何とかそれをはじき返すクレトくん。


 というかあれを防ぐことができたのがびっくりだ。

時の力が万能とは言え、《永遠剣》にあれほどの力は無かったような……。


 クレトくんは息も絶え絶えになり剣を杖代わりに立っていた。


「やはり《永遠剣》の力が増している……、私の力の上昇に伴い強化されているのですね」


『なに……?』


「私が与えた力です。あなたも焔のホームラとの戦いで感じたでしょう?」


『……!』


 あの時に聞いた声は……まさかシスタだったのか。


 ……いや、違う。


 あの時聞いた声はもっと、おぞましい何かだ。


 俺の何かと引き換えに力をよこしてきた存在は……もっと別の何か。


『違う……! お前は何者だ!』


「……ほう。《私》の中の《私》に気付いたか」 


 とたんに彼女の口調が変わった。

シスタの面影は消え、傲慢なものへと変わっていく。

  

「私はオーエス・ウィンドゥ・ビスタの陰の魂。お前たちが預言書と呼ぶ存在だ」


 アレが預言書の正体。

俺たちの運命を決め、高みでほくそえんでいた傍観者。


『シスタを返せ!』


「無駄だ。それにどのみちお前たちの目的を果たすとき、それは《私》が消えるということなのだぞ」


『え……』


 シスタが……消えるだと?


「預言書が書き換えられた時、《私》はエラーを起こすだろう。自我は崩壊し、無に戻る」


『なんだと』


 まさか。


「全てが無かったことになる。お前がシスタと言う存在は消える」


 無慈悲に真実をつきつけてきたビスタ。


 俺のなかで意志が揺らいでいく。


「お前がこの世界で生きるということは……《私》が死ぬということだ」


『……』


「そんな……」


「ちっ……!」


 仲間の間にも葛藤が生まれていた。


「だが……そんなことは万に一つもありえない」


 無表情でオーラを増していくビスタ。

今までで最強の力の前に、俺たちのモチベが削られていく。 


「お前たちでは私に勝てない……永遠にな」


 後ろからは無数の巨人たち。

あれら一つ一つが俺たちを凌駕するだろう。


 もう、終わりなのか……。


「おっさん……もう少し頑張れるか?」


『クレトくん』


 不意にクレトくんがそう切り出した。


「俺が道を作る……その間に逃げろ」


『何言って……』


 一人でおとりになるつもりか?

一瞬で死ぬぞ。


「そうですよ……クレトの言う通りだ」


『ぼっくん……』


 と、思ったら冷静なぼっくんも同じことを言い出した。


 待つんだ。


「たまには良いことしないとな」


「だね」


 こんな状況だというのに2人は笑みを浮かべる。


 その2人の姿が何かと重なった。

以前も俺は、似たような体験をしたような気がした。


『2人とも……?』


「ショー! もう少しだけ立てるな!」


 クレトくんがショーくんを奮い立たせた。


「……それでいいのか? 2人は」


「だからこそあがくんだ」


「……了解だ」


 もう二人の覚悟は決まっているようだ。


「行かせぬ」


 だが、それをさえぎるようにビスタは謎ビームを放つ。


 時の力の奔流が俺たちを飲み込もうと迫る。


「使い方次第でチートアタック!!!」


「何!?」


 だが、ぼっくんの機転により何とか防いだ!!!


「今だ!」


「応!」


 クレトくんの闘気が増した。


 ビスタが放った謎ビームをぼっくんが謎の力でせき止める。


 そしてそこに時の力でブーストされたクレトくんの斬撃が衝突する。


 これは……魔王城でぼっちゃんと戦った時と同じ……!


「さあ行け!」


「次元の狭間へ!」


「すまない!」


 ショーくんはクレトくんから永遠剣をパスされ、空中に開いた次元の狭間へのゲートへ飛翔する。

彼は時の神殿が次元の狭間へつながりやすいことを利用したのだ。


『2人ともーーー!!!』


 クレトくんとぼっくんは敵の大群に2人で突撃していってしまう。


 俺はそれを眺めていることしか出来なかった。







 次元の狭間へ何とか逃げてきた俺たち。


 だが、ショーくんは満身創痍で今にも危険な状態だ。


「とりあえず……おっさんを元の体に……」


 わずかな浮遊感のあと、俺は人間の体を取り戻していた。


 ふらっと倒れこむショーくんを俺は抱き起す。


「しっかり!」


「《エターナル》も……使えません。俺はもう、役には立てないでしょう……」


 えたなんとかが何かはわからない。

しかし、彼がもう戦える状態ではないことは十分伝わってきた。


「あとは……あなた次第です……」


「……!」


 俺は彼の激励に熱いものがこみ上げてきた。


「おーいおっさん!」


 すると、トキノ君とぼっちゃんがこちらへやってきていた。

 

「一部始終はこっから見えてたぜ」


「何やら大変だったようだな」


 どうやら事態は把握してくれているようだ。


「それで……どうするよ」


 俺の考えが聞きたいのか、ぼっちゃんらしくない言い方をしてきた。


「どうするって……ぼっちゃんは……」


 預言書を書き換えてあっちで自由に生きたい。


 そう、言うはずだ。


「決まってんだろ」


 ぼっちゃんはへっ、と笑って拳を握る。


「気に入らねぇやつをぶっつぶす……俺はいつだってそうしてきた」


 ああ……。


 そうか、君はそういうやつだったな。 


 俺は彼を旧知の友のように感じていたのだ。

その言葉が本音であるとわかってしまう。


「あんたはどうだ? おっさん」


 俺の思い。


 始まりは突然だった。

なんてことのない、平凡以下の人生を送ってきた。


 そんな俺が勇者として戦っていた。


 一体何の冗談だと思うだろう。


「俺は……」


 その中で得たものがあった。


 生死を共にした仲間がいた。


 その子は若くて勇敢で正義感に溢れていた。


 俺からすればまぶしくて仕方がない。


 だが……くじけそうな時、そういう彼女にこそ救われたのだ。


 だから俺も……。


「そうだ……俺は彼女を救いたい」


「仲間だから……!」


 仲間。


 なぜだろう……以前の俺はこんな似合わないことを言う性格ではなかった。


 一人ぼっちで引きこもっていた俺にできた大切なもの。


 俺は俺の安全よりも仲間のために戦いたいと思った。


「……やっぱりお前はお前だな」


 ぼっちゃんは今まで見たこともないくらい安らかな笑みを浮かべている。


 俺は彼を満足させられる答えを出せたのだろうか。


「なら暴れてやろうぜ! 俺たちが組めば出来ないことはなにもねぇ!」


「ふっ、そうだね……そうだ!!!」


 両手を広げ、大げさに叫ぶぼっちゃんと俺。


 勝てるかはわからない。


 だが……本当に後悔だけはしないはずだ。


「トキノくん、ショーくんのことを頼めるかな」


「まあよかろう。あやつとは通ずるところもあるのでな」


「助かる」


 今までさんざん世話になったショーくん。


 彼がどこからきて、どこへ行くのか。

その結末を見てみたかったが……。


 ふと、軽い浮遊感に襲われる。


 俺はかすかに透ける手のひらを見つめた。


 残された時間は少ないのかもしれない。


「ショーくん、ありがとう。やっぱり君は真の仲間だ」


「おっさん……ご武運を」


 俺は彼に別れを告げ、ぼっちゃんとともに元の世界をめざす。


 ついに最終決戦が行われようとしていた。

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