その16
最近はアプデやらゲームの仕様で攻略本とか買う機会無くなりましたよね(好きな人は多分買ってる)。
ネットで攻略が簡単に見られるのは良い時代なんでしょう。
FF7とかドラクエ7の攻略本はお世話になりすぎて擦り切れてます。
設定とかインタビュー記事、やりこみの解説とかいろいろ載ってて楽しかったですね。
今のもそうなんでしょうか。
オリジンタワーの地下深く。
鋼鉄の巨人が戦いを繰り広げていた。
ショーさんが操る白銀の機体VS謎の赤い NA《イレイザー》
巨大な質量で生まれる剣戟はダンジョンを大きく震えさせている。
ショーさんが苦渋を舐めさせられていた。
拮抗しているかに見えた戦いはわずかに押され始めていた。
『排除……!』
《イレイザー》が剣を振るう。
するとその軌跡から謎ビームが発射された。
『ぐっ』
光の剣で何とか攻撃を弾くショーさん。
《エターナル》は大きく反動で後退させられてしまった。
そして防戦一方へ追い込まれていく。
『《エターナル》より出力が上なのか……!』
ショーさんの声にも焦りが現れていた。
このままではまずい。
私に出来ることは無いのだろうか。
とりあえず魔法でも撃とう。
「ジャッジメントノヴァ!!!」
聖なる力で生み出された光のビームが《イレイザー》へと解き放たれた。
その攻撃は見事に命中する。
だが―――。
『損耗率……2%』
わずかに表面を傷つけただけで、ダメージはあまり通っていないようだ。
『修正スル……』
「え……」
それが奴の怒りを買ったのか、視線を私へと移した。
『いけない!』
ブースターを吹かしてその巨体が私の方へと近づいてくる。
これはだめだ。
赤い巨人が私を狙って剣を振り下ろす。
頭の中では今までの冒険の日々が駆け巡っていく。
これが走馬燈ってやつなのだろうか。
つらくて苦しくて、いつ心が折れてもおかしくなかった。
それを支えてくれた仲間がいた。
危険な旅に楽しさを加えてくれた彼には感謝しているのだ。
おっさん……。
ごめんなさい、あなたの助けにはなれませんでした……。
私の冒険はここでおしまいみたいです。
死を覚悟して私は目を閉じた。
反転する。
意識が反転する。
今まで私を作り上げていたすべてが反転する。
『シスタ!?』
今にも私を潰そうとしていた巨人の剣は私のすぐ上で停止していた。
私からあふれ出す力がそうさせていたのだ。
だが……私の意識はそこで沈んでいった。
『一体……なにが……』
ショーはその状況に混乱を隠せなかった。
仲間の少女を殺そうとした攻撃は、その少女からあふれ出る力によってせき止められていた。
それはショーも良く知っている力だ。
時の力と呼ばれているものである。
おっさんが行使していた力とは桁外れに強大なエネルギーをシスタは生み出していた。
『修正ガ必要ダ』
力の奔流になおも抗う《イレイザー》
背部に取り付けられている大型エネルギーカノン砲がシスタを照準におさめた。
「消えなさい」
『シ……』
だが、カノン砲を発射するよりも早くシスタが手をかざした。
シスタの手から時の力がビームのように流れ出し、《イレイザー》の巨体をつらぬいた。
『ガガガ……』
動きが停止し、後ろに倒れこむ《イレイザー》
その後、わずかに機械音を発していたが、それも沈黙する。
2人を襲った危機はなんとか回避できた。
だが、それを見ていたショーの顔は、いまだに不安な気持ちを隠せずにいた。
(やはり……彼女は……)
ショーは戦慄する。
「戦闘終了……」
『あっ』
急に力が抜けたシスタは倒れこんでいく。
ショーはとっさに《エターナル》の手のひらでそれを受け止めた。
『やれやれ……』
一連の出来事にため息を隠せないショーであった。
「ハッ」
「目が覚めた?」
私が目を覚ますと、そこは《エターナル》のコックピットだった。
ディスプレイにはオリジンタワーの外が映っており、地下からは移動しているようだ。
一体私はどうしていたのだったか。
「あの巨人は倒せたんですか?」
「……覚えてないの?」
何があったかショーさんに質問するが、何故か戸惑った表情でそう言葉が返ってくる。
「……ああ、何とか倒すことができた。ただ……戦闘の余波でアルテマニアが故障してしまい、再起動はできなかったよ」
「そうですか」
あんなつよつよモンスターを倒すとは……やはり天才か。
しかし、新たな手掛かりが見つかったはいいが、アルテマニアが使えないのでは詳しく調べようがない。
「万事休すですね」
「いや、そうでもないんだ」
「というと?」
「同じように裏解体神書に重要な施設として書かれているところがある」
「それは」
「時の神殿だ」
「ああ、あそこですか」
これまたおっさんと訪れたことのあるダンジョンだ。
以前はスリースターズの3人も一緒だったが、交流も温める間もなく逝ってしまった。
あまりいい思い出の無い場所だった。
正直行きたくはない……。
「……スタ。シスタ!」
「ひゃい!」
「大丈夫か?」
先ほどから呼びかけていたらしいショーさんに肩を揺らされる。
気が抜けていたので変な声が出てしまった。
「私は正常ですよ」
「なら、いいんだけど」
心配そうな顔をやめないショーさんに、良い人だなと、そんな感想をもった。
「とりあえず時の神殿に進路をとろう。やり残したことはあるかい?」
「じゃあ一つだけ」
「はい」
「トイレ行ってもいいですか?」
「……はい」
時の神殿でも何があるか分からない。
用を足しておくにこしたことはなかった。
そしてたどり着いた時の神殿。
以前と変わらず人を拒むような雰囲気にあてられてしまう。
私の中の何かがそれを訴える。
まるで行くなと全身が叫んでいるようだ。
「行こうか」
「へい」
ショーさんが先頭を歩き出した。
そうだ。
私たちにはやらなければならないことがある。
怖気づいてはいられない。
中に入ると裏解体神書に従ってフロアを探索していく。
以前、時の精霊と出会った場所が怪しいらしい。
あの時は用が済んだらさっさと帰ったので詳しく調べるひまは無かった。
もしかしたら、何か重要なものがあったのかもしれない。
魔物との戦闘を経てそこへたどりついた。
「ここですよ。以前はここで時の精霊と会ったんです」
「なるほど……ここが」
ふんふんとなんか頷いているショーさん。
何がわかったのだろうか。
「とにかく何かないか探しましょう」
よくわからんがわかった。
「なんか怪しい祭壇を見つけたぞ!!!」
「でかした!!!」
探索を始めて5分くらい。
いかにもギミックがありそうな祭壇を見つけた。
「シスタ、何かないか探してほしい」
か弱い美少女に生贄になれと?
とまあ色々とお世話になっているので強く反対はできない。
ここは早々にことをすませよう。
私が祭壇の前に立ち、色々物色しているときだった。
ゴゴゴゴ……と祭壇が移動し、その下から地下への階段が現れた。
まだ何もしていない。
まさかオートマチックとは恐れ入った。
「流石シスタだ……よもやそこまでとは」
またなんかやっちゃいました私?
などとおもふたがおかしいだろくそが。
私は解せぬまま階段を下りた。
階段を降りると、オリジンタワーの地下と同じような景色が待っていた。
ここでは赤いラインが壁や床に走っている。
古代の神秘を感じた。
ただ、肌がべたつくようなこの感じ。
すこしそれが怖かった。
長い通路を抜けて開けたフロアに出る。
そこには例のごとく台座があった。
「ここもアルテマニアのような施設なんでしょうか」
「そうだと思うよ。ただ、十分注意してほしい。オリジンタワーでの戦闘で《エターナル》はかなり消耗したから戦いでは使えない」
つみました。
私は台座に手を置き、反応を待つ。
するとピコンという音とともにホログラムが虚空に映し出された。
『認証しました。《世界N4の歩き方》を起動します』
ホログラムは女性の顔だち変化していく。
音声も女性っぽい。
とりあえず質問だ。
「ここはどういう施設なんですか?」
『《世界N4の歩き方》はこの世界における様々なシミュレートを行う施設です』
「???」
つまり……どういうことなの。
「そんなことが可能なのか」
「なら……預言書の管理者は今どこにいるかわかりますか?」
それならダメもとで質問してみた。
『計算しています……完了しました』
『預言書の管理者は6時間11分50秒前、オリジンタワーにてアルテマニアを起動させました。その後多々あり、時の神殿へ向かう確立が99%です』
「は?」
だが、帰ってきた答えに驚きを隠せない。
「……」
私たちがちょうどその時間帯にオリジンタワーにいた。
だが、私とショーさん以外の人は見ていない。
「ショーさん、私が気を失っている間に誰かいました?」
「誰も、いなかった」
重い口どりでそう答えるショーさん。
どうしたのだろうか。
「恐らく、預言書の管理者……いや、神子と言っていたか。それは……」
ゆっくりと私に向かって言葉を紡いていく。
「君なんだ。シスタ」
「……え」
一瞬、何を言われたか理解できなかった。
そしてその一言が引き金になった。
私の中から這い出ようとするモノ。
まとわりつく嫌な感じ。
不自然な小さいころの記憶。
「質問だ」
「ここにいる彼女は……何者だ?」
ショーさんは獲物を射抜くような眼で私を見る。
『計算しています』
ホログラムが言葉を発する。
『完了しました』
私のからだ中から嫌な汗が流れていく。
『そこにいる女性はオーエス・ウィンドゥ・ビスタ』
耳をふさぐ暇もない。
『現在の神子、および、預言書の管理者である可能性が100%です』
どこかで気づき始めていた、それが私の真実だった。
「ごめん」
ショーさんが私に頭を下げる。
けれど今の私は真実に打ちのめされていた。
「そん……な……」
「そうじゃないかって薄々感じてた。けど、そんなひどいことがあるかよ……」
拳を痛そうに握りしめて、そうつぶやいたショーさん。
私は呆然と立ち尽くすしかなかった。
「これは……俺の一存じゃ決められない。おっさん達とひとまず合流しよう」
ショーさんが私の肩を叩いて移動を促してくる。
だが、私は思考に没頭していく。
私はどこからきて、どうして勇者とともに旅をすることになったのか。
幼いころから今までの修業の日々。
すべては……予言書通りに導くため。
「私は……そうか、だから……」
「シスタ?」
「……」
そして何より、私がおっさんを苦しめていたという事実。
「どうし……」
「私は……」
もう、今は何も考えたくなかった。
「ぐっ!」
「私の名は」
時の力が体中からあふれ出す。
「オーエス・ウィンドウ・ビスタ」
意識が沈んでいく。
ああ、この感じは……そうだ。
オリジンタワーの地下でも同じことがあった。
でも、それよりずっと前。
四天王とたたかって、重傷を負った時も、同じようなことがあったっけか。
私の中から声が聞こえた。
力が……欲しいか。
我が半身よ。
目を覚ますのだ―――。
そして、私の意識は消えていった。
「異世界からの来訪者よ」
ショーの目の前に現れた預言書の管理者。
「予言を踏みにじらせはしません」
オーエス・ウィンドゥ・ビスタがゆっくりとショーを視線にとらえる。
「世界の異分子……あなたを排除します」
そして手を前にかざすと、けたたましい警告音がフロアに響く。
『預言書に背く行為が発見されました』
ホログラムからコマンドが発信される。
次々と虚空から灰色の《イレイザー》が召喚されていく。
『ガガガガ……』
『修正……』
『ウゴゴゴ……』
「これはまずい……!」
流石のショーもこの大群に勝ち目はないと見たか、シスタを連れてフロアを脱出しようとする。
「シスタ! 目を覚まして!」
「違います。私はオーエス・ウィンドゥ・ビスタ」
「なんかどっかで見たやりとりだ……!」
ショーはビスタを無理やり腕をつかみ引っ張ろうとする。
だが、謎の衝撃波がそれを阻んだ。
「ぐっ」
ショーは上手く受け身を取り、ビスタを見つめる。
少女の後ろからは巨大兵器の大群が迫っており、もはや少女を連れて脱出することは叶いそうもなかった。
「すまないシスタ!」
ショーはここはいったん引くべきだと判断し、狭い通路へと逃げる。
「早くおっさんに知らせないと……!」
ショーは自身の判断ミスで彼女を目覚めさせてしまったことに責任を感じていた。
苦い思いをさせられながらショーは外を目指す。
「おっさん! 聞こえますか!?」
遠く離れた仲間にメッセージを送る。
そして長きにわたる彼らの旅路が終わりを迎えようとしていた。




