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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界4 ファイナルドラゴンテイルズ/アルティメットエディション
93/122

その11

ライトニングさんの声を聴くと

「俺の前に立つんじゃない!」って言ってたような気がしたが

それ別の人だった。

「消えてもらうっていうから何するのと思ったけど……」


「変な言い方をしてすいません。一時的に次元の狭間に移動するだけです」



 次元の狭間。

はて、どこかで聞いたような。


「あ、そうだ。時の精霊がいるところじゃないか」


 時の神殿での出来事を思い出した。

あの時はあっちのほうから顔を出してくれたんだった。


「そうです。あそこは時間さえも超越した謎空間なんです。このままこっちの世界にとどまり続けると本当に消されかねませんから」


 何に……とは怖いので今は聞けなかった。


「じゃあつながったっつってたのは……」


「ええ。次元の狭間への扉を開くには、おっさんとぼっちゃん……強大なエネルギーを持つ勇者の力と魔王の力が必要だったんです」


「俺たちの強すぎる力がぶつかり合い、次元の壁を壊して普段は感じることもない次元の狭間への入り口を作ったんだ」


 なるほど。

お互いの本気を出さなければ扉を開くことはできなかったと。


 それでもちょっとぐらい話してくれても良かったのでは。


「事情を説明してもどうせ信じなかっただろ?」


「うん」


 それを言われちゃおしめえよ。  






「話は終わったか?」


「僕たちも混ぜてくださいよ」


「ええ!?」


 突然どこかで聞いた声が部屋に響いた。


 穴だらけになった玉座の間に入ってきたのはかつて俺が倒した勇者たちだった。


「どういうこと?」


「ああ、ショーが裏でスタンバってたんだよ。ぼっくんはともかくクレトは負けるだろうし念のためな」


「そういう……おい!」


 よかった。

クレトという少年はどうでもいいがぼっくんという少年のことは気がかりだったのだ。


「それに、この世界を見守ってきた時の精霊なら預言書の管理者の情報を知っているはずですし」


「予言書の管理者?」


「俺たちが戦うべき相手だ。今はそれだけ覚えておけ」


 また新しい言葉が出てきた。

設定過多は読まれにくくなるから気を付けろ。


「では行きましょうか……次元の狭間へ」


 俺たちはブラックホールのような扉へ突撃する。


 するとここじゃないどこかへ行く感覚に襲われた。


 


「ここが……次元の狭間」


 そこは太陽も月もなく、どちらが上か下かもわからなくなりそうな世界だった。


 なんか時計っぽいのがいっぱい浮かんでいるし。


「さて、ここからは未知の領域だ。何が起こるか分かんねえから気を付けていくぞ」


 ぼっちゃんの言葉に無言で頷く。


 もはや裏ダンジョンレベルと言っていい怪しさを感じる。


「足を引っ張ってくれるなよ」


「は?」


「は?」


「ちょっ、ケンカはやめましょうよ」


 クレトくんのイキリ具合がなぜか懐かしく感じた。


 


 ここも敵が強い。


 ヤベ―オブダークネスドラゴンツヴァイというモンスターがわらわらいやがる。


 だが、ここにいるのは勇者と魔王、そして旅人だ。


 俺たちの敵では無かった。


 ショーくんは異次元の強さで敵を翻弄していく。


 何者なんだ彼は。


「ショーの力に驚いているようだな」


「ぼっちゃん」


「さらに《永遠剣》に似た力を使えるらしい。強すぎるんで普段は封印しているそうだがな」


「ええ……」


 あれで力をセーブしているのか……。


「おい何か見えてきたぞ」


 無駄に先頭を歩いていたクレトくんが声を上げた。


 何かと思い目を凝らしてみると、変わった形のお城が見えた。


「きっとあれが時の精霊の住処です」


「ええ……センス無いですね」


 ぼっくんが無情にも酷評した。


 まるで下手な人のテトリスみたいな形してるので無理もない。


 とりあえず俺たちはお城まで近づく。


「ノックしてみよう」


 コンコンと扉をたたく。


「はーい」


 えらく愛想のいい声で返事が来た。


「どちらさまで……」


 ギィィィと巨大なドアが開き、顔を出してきた時の精霊が面食らった顔をしている。


「お久しぶり」


「な、なぜお前たちがここに?」


 俺たちが現れたことにたいそう驚いていた。


「どうやら俺たちが来ることは知らなかったようだな」


 ぼっちゃんがやはりそうかと頷いていた。


「お前たちは予言書通りに相打ちになったのではないのか?」


「事情を説明してもいいが……とりあえず入っていいか?」


 諸々の説明はあとにして、俺たちはトキノ君の家に入った。





「ふむ……まさか預言書が覆されるとは……」


 ひとしきりの説明を終えた俺たち。

トキノ君はちらりとショーくんの方を見たが、すぐにこちらに視線を戻した。


「今は次元の狭間にいるからいいとして、あっちに戻れば何らかのアクションが世界からあるはずです」


「だから俺たちは書き換えるんだ……預言書の内容をな」


 そういう展開だったのか。

預言書を書き換えれば俺たちが消えるということが無くなるというわけか。


「予言書の改変だと……? それはいわば神になるということに等しい。それが何を意味するのかわかっているのか?」


 トキノ君はそれを否定するでもなく、覚悟を確かめるかのようにぼっちゃんに問う。


「ま、おおかた想像はつくぜ。上等じゃねぇか。俺は人間なんて言う小さな器に収まるような男じゃねえんだ」


 なんと傲慢なのだろう。

まぁ、ぼっちゃんならさしたる問題ではないか。


「そうか。しかし私は人間たちの出来事に手をかすつもりはない。あくまで中立の立場なのだから」


「《永遠剣(これ)》に力をくれたじゃないか」


 時の神殿で俺とシスタの前に現れ、《永遠剣》を覚醒させたのは十分人間に手を貸したことになるのでは?


「あれは力の1%も注いでいない。それに管理者との契約もあったからな。ノーカンだ」


 あれで1%もないのか……。

《永遠剣》というのはいったいどれほどの力が秘められているというのだ。


「その管理者ってのが誰か……教えてくれねえか?」


 ぼっちゃんがまるで取り立てに来た闇金業者みたいな顔で質問している。

まあ、魔王なのだからそういうの得意なんだろう。


「いえぬ。が、ヒントくらいはくれてやらんとここまで来た意味がないな」


 そんな精神攻撃にも顔色ひとつ変えないトキノ君。

だが、思っていた答えとは違い、俺たちもざわつく。


「随分優しいんだな」


 クレトくんもこれには意外だったようだ。


「私は過去も未来も知り尽くした気でいた。だが、お前たちのような存在がいることは今後の楽しみにもなる」


「僕たちは見世物じゃありませんよ」


 げんなりした顔で愚痴をこぼすぼっくん。


「予測できない展開はそれだけで一見の価値がある。長生きすると娯楽も少なくてな」


 トキノ君はたいそうおじいちゃんのようだ。


「管理者は世界に影響を与えられる人物の誰かとだけ言っておこう」


「それは……王様とか、あなたのような精霊ということですか?」


「さて、な?」


 ぼっくんの質問にはとぼけたように答えるトキノ君。


 しっかし、それだけ絞れれば何とかなりそうな気がしてきた。


「ま、それだけわかりゃ十分だが……」


「何か問題でも?」


 ぼっちゃんも満足のいく結果だったようだが、どこか不安げな顔をしている。


「大ありだ。ショーの言ってた通りなら俺たちがあっちに戻ると消される可能性がある」


「ダンジョンにいすぎると湧いて出てくるモンスターが襲ってくるか、自動でレベル上げしてると出てくるアイテム絶許おじさんみたいなのが出てくる可能性もありますね」


「じゃあどうしようもなくね?」


 あっちに行った瞬間あの世に逝っちまったら話にならんわ。


「そのための俺と」


「僕ですよおっさん」


「クレトくんぼっくん」


 バーンと擬音が建つであろうポージングで自己を示す二人。


 何と頼もしいことか。


「二人は予言書に特に明確な結末はないんです」


「だから自由に動いても問題ないってことだ」


 ショーくんが捕捉すると、なるほどと納得する。


「まずは管理者を探し、預言書を奪い取る。そのうえで俺たちがあっちの世界に戻るってわけだな」


「そういうことね」


 ということは他力本願か、やれやれ目立つのは好きなんだけどな。


「よし、二人とも頼んだよ」


「ああ」


「任せてください」


 二人の肩に手を置き、俺はエールを送った。


「そうだ。これも持って行ってよ」


 戦わないのならこれはいらないなと思い、《永遠剣》を二人に差し出す。


「残念だがそれはお前にしか使えないぞ」


「え……勇者の血を引くものならだれでもいいんじゃないの?」


「厳密にいうとその二人は勇者の血をひいてはいない。ただ素で強いだけだ」


「え」


「え」


 二人は驚愕の事実を告げられ、ショックを受けている。


「そっか……じゃあこれはその辺に置いておこう」


「あ、そういうことなら良い手がありますよ?」


「ん?」


 ショーくんがピコリンと何かをひらめいたようだった。


「おっさんの意識だけを《永遠剣》に移せば力を使うのはおっさん自身ですから問題はありませんし、向こうでもおっさんそのものとは認識されないでしょう」


 どうです簡単でしょう? と言いたげな顔をしながらそう説明してくれた。


 問題アリアリアリアリアリーデヴェルチだよ。

楽がしたいんだ俺は。


「終わりましたよ」


『って剣になってる!』


 いつの間にか俺の体が剣で出来てしまった。

ショーくんは手品師か何かなのだろうか。


 本当の俺の体はその辺にダレップのように転がっていた。


「ほう、これはこれは」


「あ、僕にも貸して」


 少年二人は珍しいものを見るように《永遠剣》を振るっていた。


 心は硝子なんだから丁寧に扱え。


「いってらおっさん。じゃ、俺寝てるから」


『死ね』


 ぼっちゃんは一人だけ楽ができるとわかるやいなや、ソファで寝息を立て始めた。


「さて、僕も行きます。二手に分かれた方が効率的ですから」


「ショーくん」


 何やら何までありがたいことだ。

彼への恩はどれだけ積みあがっていくのだろう。


「では吉報をお待ちください」


 そう言ってショーくんは先に行ってしまった。


「俺たちもイクゾー」


「デッデッデデデ!!!」


『カーン!』


 俺たち三人は負けじとスキップしながら次元の狭間の出口へと向かうのであった。












「待て、世界を渡る旅人よ」


 ショーが世界を渡ろうとしたとき、トキノがそれを呼びとめた。


「……何か?」


 振り返らず言葉だけで返事をするショー。


「お前も難儀なものよな。永遠を生きる者のつらさは私もよく知っておる」


 トキノの言葉にショーは少しだけ驚いていた。


「そこまで気づいてたのか」


「だが、永遠を持つお前がどうしてただの人間に手を貸すのだ」


「……」


 ショーは答えない。

頭の中で言葉を探しているようだった。

 

「自分が持つ力がどのような影響を及ぼすか。それを考えていないわけでもあるまい」


「たしかに俺がやっているとこはただのわがままだ」


 ショーは虚空を見つめながらつぶやく。


「それに……絆というものは案外切れない物なんだ」


 しかし、突然ニヤリと笑みを浮かべる。


「ほう」


「だが……この世界はどこか他の世界とは違う。今までの世界も大きな危機が訪れていたが……結末はどれも明るいものだった」


 何やら昔を懐かしむように目を閉じているショー。


 そして振り返りトキノを見つめながら口を開く。


「予言書の結末は本当にアレだったのか?」


 その言葉に、トキノは戸惑っている感じだった。


「何を言っている?」


「いや、何でもない……」


 ショーは再び前を向き歩みを進めていく。


「それじゃあ俺は行くよ」


 去り際に手を振り光の中へショーは消えていった。


「ああ……お前の旅の無事を祈っているよ」


 その姿をトキノはじっと見つめていた。

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