その10
FF13ってオプティマを編成してロールを切り替えながら戦闘を進めたりメンバーを変えて試行錯誤したりグラフィックも今でも見劣りしないしBGMも良いので誰がどうみても神ゲーなのではと思ったけれどそれなら称賛の雨あられが降るはずなのだがつまりはそういうことなのだろうと思った。(スコード怪文書風)
魔王は倒された。
だが、同時に勇者も消えた。
その知らせは王国全土に広がった。
これで世界に平和が訪れたのだ。
魔王軍に支配されていた領地は徐々に人類の元に返りつつある。
人々にとってはめでたしめでたしと言ったところか。
だが、私の心にはぽっかりと穴が開いて塞がらない。
車いすでの生活を余儀なくされた私は、アジトの屋上から空をぼーっと眺める日々を送っていた。
たまに吹く風がまだ肌寒い。
「こんなところにいたのね」
バタンと扉を開閉する音が聞こえ、女性が私に声をかけてきた。
「まだケガが治り切ってないのに、体に障るわよ」
「もう平気ですって」
ケイさん―――私たちがお世話になったレジスタンスのリーダーだ。
「故郷の様子はどうでしたか?」
「ええ。意外と被害は少なかったわ。これなら復興もそんなに時間がかから無さそうね」
魔王が倒され、魔物を統率するものがいないため街の奪還はスムーズにいったそうだ。
街を闊歩していた大多数の魔物はレジスタンスによって駆逐されつつある。
世界は明るい方向へ確実に向かっていっているのだ。
「……」
それなのに、私は大手を振って喜ぶことができない。
「おっさんのことは……残念だったわ」
そうだ。
おっさんは帰ってこなかった。
これまで苦楽を共にした仲間が私を残して逝ってしまった。
その事実が私の心をかき乱す。
「彼は英雄になった。歴代の勇者が成せなかった偉業を果たしたのよ」
それがどうだというのだろう。
私は明るい未来のために、私が楽しく暮らせる世界にしたくておっさんの旅に同行したのだ。
今の私は楽しいだろうか。
笑えているだろうか。
おっさんと旅をしていた時の方が楽しかった。
そう思ってしまう。
「とりあえず、ケガが完治するまではここにいて。それからどうするかは……ゆっくり考えればいいわ」
黙り込んでしまった私に気を使ったのか、ケイさんはそう告げて建物に入っていった。
やりたいこととかあったっけか。
これからどうすればいいんでしょうか。
ねえ……おっさん。
「知りたいですか……おっさんが今どうなっているのか」
「……え?」
自分以外誰もいないはずの屋上で男性の声がする。
後ろを向けば謎の青年が私を見つめていた。
「どういうことですか? おっさんが……なにって」
「終わってしまった物語にあれこれ付け足すのは……蛇足かもしれません」
答えになっていない発言に若干混乱する。
なにいってだこいつ。
「これから先、もっと大事なものを失うかもしれません。それでも望むものを手にする覚悟はありますか?」
謎の青年の問いかけに私は目を見開く。
望むもの。
毎日がエンジョイでえきさいてぃんぐな日々を過ごすこと。
でもそれはもうあったのだ。
おっさんとの旅がまさにそれだったのだ。
「……覚悟ならあります。それはきっと、ずっと前から決まっていたことだったんです」
私は大事なことに気付かされた。
孤児院で育ち、僧侶としての修業の日々をすごした。
魔王を倒すため、私は幾多の試練を乗り越えてきた。
才能があった私に周囲はそれを望んでいた。
私には使命があり、そのために生きるのが私の人生なのだと思っていた。
そんな私を連れだしてくれたのはおっさんだ。
世界はこんなにも楽しいものだと教えてくれたのは、テキトーでおちゃらけてて、クソ野郎だけど決めるときは決める中年ハゲのおっさんなのだ。
ハゲてねぇから。
? 今幻聴が聞こえたが気のせいだろう。
……すぞ。
気のせいだった。
「だから教えてください……おっさんは生きているんですか?」
私は力強く青年に問うた。
「わかりました。まったく、おっさんも人望がないんだかあるんだか……」
青年はやれやれといった感じで頭を掻いていた。
「共に行きましょう。この物語のその先へ」
青年が何かを操作すると、目の前には鋼鉄の巨人が現れた。
待っていてください、おっさん。
今、シスタが会いに行きます。
あと、貸した2千マネー返せハゲ。
ハゲてねぇっつってんだろハゲ。
この出来事より少し前のこと―――。
魔王城に乗り込み、ついに最終決戦へと臨んだ俺。
だが、その果ての結末は予想外なモノだった。
「はあはあ」
「ぜえぜえ」
魔王と俺はお互い力を使い果たし、某ニンジャ漫画のワンシーンぽくなった。
大の字になって息を切らす。
「魔王様! つながりましたよ!!!」
「お、そうか……」
何がつながったのだろうか。
「ていうかその下手な芝居もうやめていいぞショー」
「え? そうですか?」
魔王の側近らしい男は、さっきまでの腰の低い態度はどこへやら、頭を掻きながら苦笑いしている。
「何がどうなってんの?」
「そろそろ話すか……この世界の秘密について」
さっきまでの軽いノリはどこへやら。
魔王は真面目な雰囲気で切り出し始めた。
魔王曰く―――。
この世界は予言書とよばれるものに記された事柄のとおりに進んでいるという。
その予言書のとおりに行けば魔王はいずれ最後の勇者と戦い、勇者が勝つそうだ。
たまたまそれを知った魔王にはそのことが我慢ならなかった。
だから歴代の勇者に手を組むよう持ちかけた。
もちろん話し合いにもならず、しかたなしに倒してしまうことあったという。
だが、いつしか話し合いが通じる相手が現れた。
それがビッグキャッスル城塞で戦ったクレトという少年、そしてコレルマウンテンで戦ったぼっくんと言う少年だった。
二人の勇者は魔王の話しを聞き入れ、魔王軍に入ることになる。
理由はなんかシンパシーを感じたからだそうな。
今まで数々の勇者を屠り続けていたという。
そして現れたのが最後の勇者、俺である。
だが、魔王に俺を殺す気は無かった。
そして俺にも謎の感情が芽生えていった。
「とまあざっくり説明してきたが……」
「???」
「動き理解した?」
いえ、あんまり。
「ここから先は俺が話した方がよさそうですね」
魔王の側近くん。
そう言えば君何者だよ。
「君は?」
「俺はショー。旅人です」
「俺が預言書のことを知ったのはショーからなんだ」
ますますわからなくなった。
ただの旅人が一体何でそんなこと知ってんだ。
「世界には決められたシナリオ……いえ、預言書と呼ばれるものが存在します」
魔王の側近、もといショーくんが語り始めた。
「それは時の精霊も言ってた……俺と魔王が戦って俺が勝つって」
時の神殿での出来事を思い出す。
あの時は心が揺さぶられてよく考えなかったが。
「それは少し違います。おっさんはさっきの戦いで本来相打ちになる筋書だったんです」
「なんだって?」
話が違うぞトキノ君。
俺が死ぬなんてことあってはならない。
あってはならない。
「でも……どうしてそのことを俺や魔王に?」
俺たちにとっては良い情報かもしれない。
だが、預言のとおりに世界が動いているというならそれが自然の摂理というものではないだろうか。
「それはまぁ……個人的な趣味と言うか、俺のわがままと言うか」
「ワッツ?」
「まあそのあたりはまた今度で」
長くなりそうな話ですから、と早々に切り上げられてしまった。
「でも、魔王を倒さないと王国の人たちが苦しみ続けることになるんだが?」
「おっさん、お前はいつから主人公みたいなことを言うようになった?」
いや、勇者やで? いうて勇者やで?
「世界の人々を犠牲にしても生きるのがお前じゃなかったのか?」
それはそうだが。
「それにぼっちゃんは勇者こそ倒してきましたが、一般人は追い出す程度で無益に命を奪ったりはしてませんよ」
「そうだったのか」
意外な事実が判明した。
こいつ中途半端に悪いやつじゃない……!
「……魔王軍との戦いで死んでいった人たちがいることも事実だ」
「魔王」
表情に陰りがさした魔王。
今までの自分の所業に思うところがあるのだろう。
「復讐にかられた誰かが俺を殺しに来るのは構わねえよ」
「……」
「だが、俺は決められたレールの上を走るだけなんてのは我慢ならねえんだ」
「……そっか」
この人は誰かに操られたりするのが大嫌いなんだろう。
ゴーイングマイウェイを地でいく人なんだ。
「いいのか?」
「いいわけないよ。でも、君を信じたいと思う心があることは事実なんだ」
俺は諦めとやれやれといった感情が湧いてきた。
何となくだがこいつとは腐れ縁になりそうな気がする。
だから俺は自然と手を伸ばしていた。
「よろしくぼっちゃん」
「ああ。こちらこそよろしく頼む」
俺たちは魔王と勇者と言う立場をいったん置いておき、握手を交わす。
「預言書から大きく外れた行動を世界は許容しません。何らかの力が働くはずです」
ショーくんは新たに説明を始めた。
「ですから……おっさんたちには消えてもらいます」
「えっ」
告げられた死の宣告。
ショーくんの言葉にしばらく戦慄するのであった。
これから俺たちが戦う敵……一体どんな者たちなのか想像もつかない。
だが、この人たちとならどんな困難をも乗り越えられると思ったのだ。
そして信じてみようと思う。
この仲間たちと迎える、俺たちの本当のエンディングを。




