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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
新世界4 ファイナルドラゴンテイルズ/アルティメットエディション
86/122

その4

 FFTのラムザのセリフ「さよなら…ガフガリオン…」って良いですよね

「おっさん、聞いていいですか?」


「なんだい?」


「あの見えている街にはどうやったらいけるんですか?」


「見えているだけで多分行けないと思うよ」


 朝になっても薄暗い魔王領の道路をドライブする俺たち。

気分だけでも明るくしようと中身のない会話に花を咲かせていた。


「それにしてもお腹すきましたね」


「メイトもジョイもあるけど」


「こっちに来てから1週間そればっかじゃないですか」


 そうだ。

食料に困っているわけではない。


 だが、毎日同じものと言うのは飽きがくるものだ。


 シスタの言うこともわかる。

けど、人間がいないこの魔王領でどうしろというのだ。


 魔物は倒すと霧になってしまうので、捕まえて食べるということもできない。


 かといって、普通の獣なんて魔物だらけになったここでは一匹も見かけてない。


「缶詰とか、探しましょうよ」


 それって、家探しするようなものだよね。


「いいのかな……」


「レジにお金、郵便受けにお金入れとけばいいんじゃないでしょうか? 神のお導きですよ」


 なんと傲慢なのだろう。

彼女は神の代弁者にでもなったつもりなのだろうか。


 俺はガレリアをコンビニに止める。


 明かりは点いておらず、人気もない。

なんかホラゲーの世界に迷い込んだ気分だ。


 自動ドアをなんとかこじ開けて、店内を物色する。


「ありましたよ。さば缶」


「こっちにはニシン缶が」


 とりあえず手あたり次第に詰め込んでいく。

1万マネー札をそっとレジ前のカルトンに置いて外へ出た。

釣りはいらねぇ(代金9999マネー)。


 



 さっさとキャンプをする。

食事はキャンプかレストラン。

そう言うキマリなんだ。


「おいしいですね」


「うん」


 俺たちは黙々と缶詰を食べ続けた。

久々の肉や魚に舌つづみを打ちながら。


 現代に生きてきてよかったな。本当に良かった。


「……人、いませんね」


「そうだね」


 俺たちは民家の庭を借りていた。

だが、これまでも同じように民家には明かりが消えていて、人っ子一人いなかった。


 なんと寂しいことか。


 そう思うと、シスタが居てくれて本当に良かった。


「シスタ……ありがとう」


「……急に何ですか?」


「別に……ただ、言っておきたかっただけだよ」


 なんのこっちゃ分かっていないシスタを見ながら、自然と笑みが浮かぶのであった。






 コレルマウンテン。

そこは古くから鉱山として使われていた。


 魔王城へ行くにはこの山を越える必要があるらしい。


「ガレリアは走れそうにないね」


「え、じゃあここから徒歩ですか?」


 残念ながらガレリアが通れそうな道は無かった。

長い間旅を共にした仲間だったが、ここい置いていくしかなさそうだ。


「ガレリア……今までありがとうね」


 シスタはガレリアのボディを撫でながら感謝の言葉を口にしていた。

俺も心の中で感謝を述べる。


「行きましょうか」


「ああ……行こう」


 俺たちは山を登り始めた。




 山には凶暴な魔物が多く生息していた。

俺たちもレベルが上がっているとはいえ、きついものがある。


 なんか体が爆弾で出来た奴とかいたし。


 それでもなんとか戦い抜いた。


 そして長ったらしい橋を渡る。

なんか木とロープで出来た古くからありそうな作りで、ギイギイ音を立てているのでめっちゃ怖い。


 シスタも震えていた。


「おっさん……」


「どうした?」


「トイレ……」


 どうしようもねえよ。


 股を押さえて変な歩きで進んでいく彼女。

だからあれほど必要以上に水分を取るなとあれほど……。


「ふっ、待っていまたしよ。人類最後の勇者さん」


「え……!」


 橋の向こう側から現れた謎の少年。

あの口ぶりからしてまさか……。


「君も、魔王側に寝返った勇者なのか……!」


「ええ。ですがクレトなんかと一緒にしないでください。僕はアイツほどバカじゃない」


 少年は剣を構え、こちらと向かい合う。

纏う雰囲気はこの前の少年と比べ物にならない。


「世界のため……ここで果ててください。中年の勇者さん」


 剣を構え、こちらへ駆けだしてくる少年。


「シスタ!」


「と、トイレ……」


 ダメだコイツ。


「使い方次第でチートアタック!!!」


「ぬおおおおおおおお!?」


 まるで予想だにしていない攻撃で俺は翻弄されていく。

たしかにあのクレトとかいう少年とはけた違いに強い。


 狭い橋の上での戦いにくさも相まって、苦戦を強いられる。


「くっ、何故魔王の仲間になんてなったんだ! 君も世界を救うために旅だったんじゃないのか!」


「ええ、かつてはそうでした。しかし、間違っているのはあなた方なんです。真実を知ればあなただって……!」


「何を言って……!」


 このままレスポンチバトルに移行しそうな流れになる。

剣と剣がぶつかり合いながら言葉もぶつけ合う。


「それでも俺は……!」


「……! よもやここまでとは……!」


 狭く不安定な橋の上での戦闘も慣れてきた。

押され気味だった戦闘は徐々に俺のペースになっていく。


 剣の技では向こうが一枚上手だろう。

だが、これまでのサブクエ消化などで培った戦闘経験が俺にはある。


 つまり、レベルを上げて物理で殴ればいい理論だ。


「昇竜フィスト!」


「え、ごハァ!?」


 俺は意表をついてアッパーをくらわせる。

これにはさすがに対応できずにもろにダメージを負ったはずだ。


「ぐっ、やりますね……」


「勝負はついた……。これ以上は……」


「……ええ。こちらに戦闘を続ける力はありません」


「……聞かせてもらえるかな? 君がどうして裏切ったのか」


 少年は少し考え込むそぶりをしてから、分かりました、と小さくつぶやいた。


「僕が勇者として旅だったのは2年前です……その時はあなたと同じく世界を救うために戦っていました」


 少年は静かに語り始めた。


「いくたの試練をのりこえ、ついに魔王の城へとたどりついた僕は、とある真実を知ってしまったんです」


「真実……?」


「ええ……それは魔王が人類の敵になったのはそもそ……!?」


 少年が言葉を言い切ろうとしたとき、俺の体に浮遊感を感じた。


「なっ」


 気が付けば戦闘の余波で橋のいたるところが傷つき、橋を支えていたロープやら木材がちぎれたり壊れていた。


「おっさん! 早くこっちへ!」


「シスタ!」


 気が付けばシスタは橋の向こう側へと渡り切っていた。

それはよかったのだが……。


 橋が壊れ、俺たちは空中に投げ出される。


「くっ」


 俺は何とか橋の無事な部分にすがりつき、難を逃れた。


「掴まれ!」


「ッ!」


 そして手を伸ばして少年の手を掴もうとする。


 だが―――。


「……ご武運を」


「あっ―――」


 すんでのところで伸ばした手は空を切った。


 彼が最後にこぼした言葉は俺へのエールだった。


「ぼっくん――――ッ!」


 谷へ落ちていく少年を見つめながら、俺は知らないはずの誰かの名前を叫んでいた。





 コレルマウンテンの激闘から一週間。

山を越えた俺たちは道路を歩いていた。


 だが、俺の脳裏にはあの時の少年の顔が浮かんでばかりだった。


「おっさん……」


 気が付くとシスタが心配そうに俺の顔をのぞきこんでいた。


 いかんな、仲間に心配をかけるようなことをして。


「いや、大丈夫だよ……」


 俺は無理やり元気をひねり出した。

けれど心の中では少年の言葉が引っかかり続けていた。


 魔王が敵になったのは何か理由があるのか……?


 そういえば何故魔王が現れたのか。

なぜ俺たちは戦っているのか。


 気にもしなかったことが溢れてきた。


 考え込んでいると、気が付けばシスタがまた俺をガン見していた。


「むぅ、大丈夫って言いましたよね!」


 ぷんすか腕をばたばたしながら説教してくる。


「ごめんごめん。良いキャンプ場所はないかなって」


「んー、何とか魔物が近寄りづらい場所を見つけないとですね」


 何とか話題のすり替えに成功する。


 彼女には余計な不安を与えたくは無かった。


 どちらにせよ、魔王に会わなければ何もわからないのだ。

今は目の前のことに集中しよう。


 






「ぼっくんがやられるとはな……」


「予定より成長が早いですね……」


 魔王城でいつものように会議中の魔王と副官。


「わた……俺が行きましょうか?」


「待て、お前が行くほどのことでもあるまい」


「では……四天王を使いますか?」


「ふむ……そうだな。では焔のホームラを向かわせよう」


「ええ、妥当な人選かと」


「まったく……中年ヒキコモリニートが手間をかけさせやがって……」


 玉座にもたれかけ、一息吐く魔王。


 その瞳はどこか懐かしいものを見るような目をしていた。

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