その4
「ナンなんだよ……ココは……?」
暖炉から出現した階段を下りた俺たちが目にしたのは、清潔さを感じさせる病院の中のような場所だった。
ラボとこの施設の地図に書いてある……ラボ?。
「館の地下には研究所かよ……どうなってるんだ」
先ほどまで古びた洋館にいたということを忘れそうになるくらいの変わりようだ。
「ギギギ……」
そんな通路には一階で戦った怪物が……名をつけるならワームといったところか、が目につくだけでも2、3体いた。
「どうやら生物兵器の噂に信憑性が増してきたわね」
即座に戦闘態勢を作り上げる俺たち。
俺もショットガンを装備する。
「アァ……」
「ォゥア……」
そんな時、横の通路から白衣を血で汚したゾンビの群れがやってきた。
「ちっ、厄介だな……おいおっさん! 雑魚は俺に任せな! アンタらはそっちの怪物を頼むぜ」
「ちょ、ぼっちゃん、そっちのが楽―――」
だろうが! と言い切る前にぼっちゃんはゾンビの群れに突撃していった。
「仕方ないわね、一体一体確実に仕留めるわよ」
「くっそ~ぼっちゃんのやつ~!」
結局難敵であるワームたちの相手をすることになった。
ショットガンの威力はすごかった。
「目につく限りは片付いたな」
「そうね」
とりあえず敵の殲滅を確認した俺たち。
近くの部屋に落ち着けそうな場所を見つけたのでそこで休憩をしていた。
「……もしかしてここがゾンビの出どころなんじゃねぇの?」
核心をつくようにぼっちゃんがそう考察する。
ケイさんも同様にうなずいた。
「そうね……生物兵器の噂、館の異様なゾンビの多さとあの怪物。それにここまでの施設を個人で所有するってのはありえない。どこか大きいバックがついてることは確かね」
「そういえば写真を見たよ。多分ここの住人の」
「ホント?それって……この人?」
ケイさんが見せてきたのは老人の写真だった。
かなり遠くから取ったのだろう。画像の粗さがうかがえる。
それを見て、俺はあの写真と照らし合わせる。
「ああいたいた。でも俺が見た写真古びてて昔のだったけど、長生きしてるんだねその人」
「……その人はじっちゃんと言って、とある製薬会社の社長をやってたの。でも、7年前に亡くなっているわ。今はその息子が社長に就任しているんだけど……」
「あ、そうなんだ……何か問題でも?」
「……それがこの写真を撮った近隣の住民が数カ月前に見たっていうのよ、その亡くなったじっちゃん氏を。そういう話が何件も警察に来てたわ」
「……人違いでは」
「この辺じゃあ有名人なんだからそうそう間違わないでしょう」
幽霊でもいたんだろうか。
俺にはとてもからくりが見えない。
「……ゾンビ」
ぼっちゃんが何かを察するようにつぶやいた。
「いや、こういうゾンビものはホラーとしてテキトーな理由があるか、わりとリアリティがある理由があるか2パターン存在するよな?」
「そう……なのかな?」
ホラー映画は苦手なので何とも。
「そのじっちゃんとやらは社長ともなれば薬物への知識は相当だろう。もし、仮にだ」
「……死体を動かすような……、いえ、体を作り変えるような薬が存在する……?」
ぼっちゃんの言葉に続くようにケイさんが答えた。
可能性だがな、と付け足すぼっちゃん。
「それはもう薬ではない、兵器よ」
「そうだな。そんなものをここで研究してたっていうなら……」
「世界の戦争が変わるわ……」
沈黙が訪れた。
そんなスケールの大きい話になるなど思ってもいなかったのだ。
もうほぼ内容がアレだったがそこまで本気に考えないでほしい。
洋館の地下にあった研究所を進んでいく俺たち。
とりあえず証拠になりそうなものを片っ端からラボのパソコンにつないだUSBメモリにコピーしていくケイさん。
パスワードを解くための謎解きにあっちこっちを行ったり来たりして大変でした。
「とりあえずこれくらいでいいかしら」
「しかし、天下のサンブレラが本当に生物兵器を開発してたとは……」
「それで事故が起きてこのありさま……世も末だね」
何やかんやあって事故ってご覧のありさまになったらしい。
そして謎解きや証拠集めの間もゾンビとワームは際限なくやってきて、そのたびにぶちのめしてきた。
あとはまぁ脱出手段か外部との連絡手段だが……。
「ここら一体に電波障害が発生してるみたいだな」
研究所の設備で助けを呼ぼうにもつながらない。
サンブレラ社が証拠を隠滅しようとしているのかもしれないそうだ。
「こんな危険なモノたちを研究してたくらいだから非常用の脱出経路とかないもんかね?」
「ちょっと待って……」
ケイさんが近くにあったPCを起動させてUSBメモリを接続させる。
するとコピーしたデータからそれっぽい資料を探していた。
「あったわ。緊急時用のマニュアルみたいね」
調べていくと、この研究所のさらに地下に、物資搬入のための線路があるようだった。
それを使えばイセカイシティの外へ繋がっているらしい。
「じゃあ、脱出するにはそこを目指せばいいわけだね?」
「そういうこと」
そして俺たちは地下にある列車を目指した。
一方その頃―――。
「フゴォー……ふが?」
列車に乗っている間にどうやら眠っていたらしい。
固まった体を伸ばして周囲を見渡す。
しかし、そこはいまだ暗いトンネルの中だった。
「どうなってんだ……?」
動かしたときと同じように色々動かしてみるが、何かエラーと表示されるだけで、うんともすんともいわない。
「くそ!ポンコツが!」
ガンガン足で叩いても無駄のようだ。
「仕方ない……ん?あそこは……」
列車の前方を見るとこれまたプラットホームがあった。
丁度歩いていける距離だったので、そのまま降りて進んでいく。
壁にはラボと表記されていた。
ラボ……ラボ?。
「どうやら機関が関係してそうだな」
まるで物語の主人公のように核心へと迫っていくような気持ちになった。
とりあえず俺は面白そうなのでここを調べることにする。
「なんだ……?この血の匂い……?」
ラボへと入るとそこには血だまりがあった。
壁にもブシャっと飛び散ったように塗られていた。
思ったよりやばいところに来てしまったようだ。
戦々恐々しながら奥へ奥へと進んでいく。
どうしてこんなところに来てしまったのだろう。
自分の軽率な行動に後悔の念が押し寄せてくる。
しかし、そんな時だった。
一本道の曲がり角から人影が差し込む。
生存者か……!。
と、思い駆けだそうとするが、ここがどこかを思い出した。
「そうだ……ここは機関の息がかかった施設」
俺は音を殺して引き返した。
途中、ゴミ箱があったのでその中に隠れる。
そうして、曲がり角から人がやってきた。
「……」
しかし、それは人というにはあまりにも巨漢で無表情で無個性だった。
まるで人に似せて作られたロボットのようだ。
というか動くたびにキュイインガシャンという機械音も聞こえる。
ロボットじゃねーか!。
しかし、その手に持っているものを見て俺は驚愕した。
「……!ガトリングガンだと……!」
人間が持てそうにないどでかい機関銃を片手で軽々と持っていた。
どう見てもカタギではない不審者だ。
ドシンドシンと音を立てながらこちらに近づいてくる。
(バレませんように…!)
俺は祈った。
ひたすら祈った。
「……?」
すると俺の祈りが通じたのか、巨漢のロボットは少しこちらを気にする仕草をしたが、何もなく通り過ぎていった。
「あ、危なかった……」
俺はゴミ箱から出て安堵の息を漏らす。
一体、アレはなんだったのだろうか。
このラボにはどんな秘密が隠されているのか……俺はこれからのことに不安を抱かずにはいられなかった。




