その5
「今日もいい天気だ」
「そだねー」
「ん……?」
ひとりごとのつもりだったのに、どこからか返事がきた。
それも青年のものではなく、女性のもののように感じる。
声がした方へ視線を向けると、そこにはどこかで見たような顔の女性がいた。
「あ……」
「あ……」
なんと村の中を散歩していたらこの村で初めて女性と出会った。
すると何故か私を指さして、プルプルと震えだした。
はて、私は何かをやらかしてしまったのだろうかと考える。
すると、「何か」をやったのではなくて、「何も」
しなかったのだと思い出した。
「あ、あなたはこの前何かに襲われてた女の人!」
「あ、あなたはこの前助けてくれなかった男の人!」
お互いに合点がいったのか、互いに指をさしながら
声を上げる。
すると騒ぎを聞きつけたのか青年が家から出て来て
女性の顔を見るなり
「あ、あなたはこの前まで男だった女の人!」
「!?」
と、女性を指さして衝撃の一言を放ってしまった。
「ああこの村の人だったんですね」
在りし日のことを思う。
魔物から逃げられたその後も彼女は無事だったようだ。
「はい。先日はどうも」
ぺこりと礼を……せずに皮肉をこめて礼を言ってきた。
照れるぜ。
すると彼女は、俺の隣にいる青年を見るなりニコッと微笑んだ。
「ようびっちゃん」
「おひさーぼっちゃん」
互いに手を上げ陽気に挨拶を交わす青年と彼女。
なるほど、知り合いだったのか。
そしてふたりで俺を見るなり
「ヘイ!おっちゃん!」
「ヘイ!おっちゃん!」
「殺すぞ」
などと言うのでさすがの俺も激怒卍丸。
馴れ馴れしいぞ貴様ら。
我が憤怒が臨界に達せぬ内に極彩と散れ。