その3
「おいしかったです。ほんとにお茶しかでなかった!」
すこしくらい茶菓子があってもいいんじゃないかと思っていたせいか、
本音が口から出てしまった。
「いえいえ。いいんですよ死ね」
物騒な言葉が聞こえた気がしたがここはお相子にしておこう。
窓から差し込む光が夕焼け色に染まってきて
少しあせった私は、今晩の寝床はどうしようかと思い、お金もないのに
「この村に宿屋はありますか?」
などと質問してみたが、
「ないです」
「ええー……」
と、きっぱりこう返されてしまってはもう打つ手がなかった。
けれども、青年はハッとした顔で思い出したように言葉をつむいだ。
「あ、でしたらチートを使えばいいのでは?」
「!!!???その手があったか!!!???」
まさに目からうろこ、灯台下暗しだったので、
感極まって、つい言葉を荒げて驚いてしまった。
「流石はあなただ。よもやそこへ至るとは」
短い付き合いながらも彼の思慮深さ、賢者っぷりには頭が上がらなかった。
「ん?私、なにか変なこといいました?」
これは驚いた。彼はこの功績を何でもないかのように振る舞ったのだ。
ますます彼のすごさに磨きがかかった。
「謙虚なところがまた好感が持てる!」
俺は青年を褒めたたえる。
そうすると照れ隠しなのか、彼の口から本音が出た。
「ははは、ほめすぎですよおっさん」
黙れ小僧。
私はまだ40歳だ。
心はいまだに少年のつもりだった。