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おっさんが異世界でチートする話だったのに  作者: 陰キャきっず
LAST NEW WORLD      スーパーイセカイ大戦N《完結編》
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第十二話 全ての人の魂の戦い《中編》

 私には作家の才能どころか素質も無いような気がしました。


 サイドエフェクトではなくモナドを使うべきだった……!(錯乱)


 俺たちを乗せたラルカンシェルは、雲の上まで来ていた。


「あのあたりです。空間のゆがみが広がっています」


「わかった。グラビティブラスター用意!」


 マホツさんの指示のもと、ラルカンシェルが動く。


 敵の本拠地の空間を隔てる壁を壊すために、


「照準合わせ!」


「3、2、1」


 膨大なエネルギーが艦の主砲に収束されていく。


「てぇえええ!!!」


 そして凄まじいビームが発射された。


 そのビームは何もないはずの空中に着弾する。


 パリーン! というガラスが割れるような音とともに、敵の居城が姿を現す。


「あ、あれは!」


「巨大な、城」


 何もなかったはずの空に大きな島が現れた。

その上に城がポツンと一軒建っていた。


 まるで下手な人のテトリスみたいな形している。


 途方もなく大きく、ひどく歪な城だった。


「……! 強大なエネルギー反応多数!」


「天使です!」


 オペレーターの報告に俺たちは気を引き締める。


 メインモニターに映し出されたのは城からあふれ出てくる天使の軍勢だった。


「なんだあの数は……」


「数百……数千……、ダメです! レーダーに表示しきれません!」


 かつてない敵の数に誰もが呆気にとられる。


「敵も本腰を上げてきたな」


 ホームラは極めて冷静に物事を述べる。


「1人で10体くらい倒せばいけるか?」


「全く足りません」


 マ? マジ卍? 


「ならやるだけやろう!」


「全機発進準備完了!」


 秒で支度する俺たち。


 全員がNBに乗り込んだ。


「鴉、《プロトタイプ・ムソ―》出る!」


 俺が先陣を切った。


「サイ・キツカ」


「マホツ・カイ」


「「《メイガス》出る!!!」」


 古代のつよつよNB、キツカちゃんとマホツさんのコンビが出た。


「ケイ・サッカン。《ツエー・カスタム》出るわ!」


 シティ産NBを改修したケイさんの機体がそれに続く。


「チッカーク帝国四天王 《テン・プレ》、全機出撃!」


 そして四天王が全員出た。

揃ってるとこ初めてみたな。


 しかし、飛び出したはいいが島の上には天使がうじゃうじゃいる。

 

 どうやっておりようか。


「グラビティブラスターてぇえええ!!!」


 すると、後ろから天使の軍勢にビームが直撃する。


 ラルカンシェルが道を開いてくれたようだ。


 ぽっかりと空間ができる。


「あそこに降りるわよ!」


「よし、行こう!」


 俺たちはその空間に降りた。


 だが、続々と新しい天使が現れる。


「っ、上位個体が!」


 その中にはかつて倒した強い方の天使たちが何体もいた。


「ここは我らに任せてもらおう」


「ホームラ!?」


 とりあえず突撃しようとした俺を止めたのはホームラだった。


 どこからそんな自信が来るのか。


「危ないよ」


 キツカちゃんも心配そうにしている。


 何気に仲のいい2人だからな。

よくわかってらっしゃる。


「フッ、安心しろ2人とも。我を誰だと思っている?」


「最初にやられる人?」


「かませ犬」


「さあ、行け!!! はよ!!!」


 彼の鋼のメンタルが砕ける音を聞いた気がした。


「くっっ、信じたあああああ!!!」


 俺たちは四天王にこの場を任せ、城の中へと突貫するのであった。





「行ったな」


 鴉たちを見送ったホームラは敵へと振り返る。


 生き残れる可能性は低い。

しかし、帝国四天王として引くことはできない。


「さて……そろそろ狩るか」


「兄上! 早く動いてくれ!」


「3体目!」


「うおおおおお!!! これが《テン・プレ》の力だああああ!」


「……」


 すでに戦いを始めていた3人に大きく後れを取っていた。


 やはり面目は丸つぶれているのかと、戦う前に深い傷を負ったホームラであった。







「キツカちゃん!」


「サイキックパワー!」


 城の内部にも天使がはびこっていた。


 だが、キツカちゃんの敵ではない。


「いいですよキツカ。今までで最高数値の出力です」


「うん」


 何だか前の戦いよりも強さが増しているように見える。


「すごいな、俺も頑張らないと」


 操縦桿を握る手に力が入る。


「っ、上、鴉さん!」


「なっ」


 だが、気にしすぎたのか、上から来た天使への対応に後れを取ってしまう。


 やばい―――。


 ダアン! と銃声響く。


 天使は空中で爆散した。


「全く、気張るのはいいけど集中してよね」


 ケイさんから通信が入る。

どうやら狙撃してくれたようだ。


「助かったよケイさん」


 ここんところあまり活躍してない俺だった。


「しかし……どうなっているんだここは」


 城の中だと言うのに天井が見えなかった。

道はあるが。 


「この城事態が異空間になっているみたいですね。さすが天使の根城と言ったところでしょうか」


 どういう原理何だとか、そんな疑問はいまさらか。


 何があるか分からないから油断は出来ない。


「まるで時間に取り残されているみたい」


 キツカちゃんがなんとなはしそうつぶやく。


 言い得て妙だった。


 





「カカカ……待っておったぞ」


「お前は!」


「シティに現れたNB!」


 そしてさらに進んだ先にはキツカちゃんたちが戦ったというNBがいた!!!


 まるで悪魔のような姿をしている。


 初めて見たはずなのにどこか知っているような気がした。

俺の中で何かがうずまく。


「あの時は本気を出せずに失礼した。じゃが……」


 敵NBが拳を構える。


 するとそれだけで黒いオーラのようなものを纏わせた。


「くっ、なんて凶悪なプレッシャーなんだ」


 今までで最強レベルの気迫を感じる。

かつてないほどの圧迫感。


 これが敵の本気……!


「今回は《プロット》の真の力、存分に振るわせてもらおうかの!!!」


 しわしわのじじいが叫ぶ。


 そして驚くべき速さでこっちに突撃してきた。


「来る!?」


 最初の反応できたのはキツカちゃんたちだった。


 《メイガス》がいち早く前に出て攻撃を防いだ。


「何てスピードだ!」


 俺は剣を構え、大きく振りかぶった。


 だが、その一撃は瞬時にかわされてしまう。


「狙いが!」


 ケイさんの狙撃もなかなか当たらなかった。


 このままではまずい。


「遅い!」


「きゃあ!」


「ケイさん!」


 まず支援役を潰すことにしたのか、《ツエー・カスタム》に格闘攻撃をしかけてきた。


 機体を大きく浮かせられてしまう。


「エアッドミサイル!」


 追撃を防ごうと《メイガス》から大量のミサイルが《プロット》へと降り注ぐ。


「ぬわぁ!」


 だが、手刀で空間ごと断ち切られてしまい、接触する前に爆発していく。


「化け物だろ……」


 俺はなかば放心状態になっていた。


「鴉さんもとにかく動いて!」


「わかってるよ!」


 3体1のこの状況で押されている。

どれだけの力量差があるのか。


「持ってくれよ……俺の《プロトタイプ・ムソ―》!」


 この戦い、機体の性能をフルに引き出さなければ勝ち目は薄い。

機体も体も耐えられるだろうか。


「嬉しいぞ! あの時の少女よ!」


 《プロット》の激しい格闘攻撃を《メイガス》はメイスロッドを盾に凌ぐ。


 すげえ!


「私はうれしくなんてない!」


 さらにメイスロッドを大きく横に振り払い、《プロット》を後退させる。


 わずか数秒の攻防だったが、見てるこっちはそのバトルスピードについてけなかった。


「カカカ、じゃがお主も感じておろう! 力を振るう度に得られる開放感! この感情!」


「がぁ!?」


 だが、度重なる《プロット》の攻めに、ついにガードを崩されてしまい、《メイガス》は大きく吹き飛んでいってしまう。


「この体が欲しておる! 強者との死合! 力の流動を!」


 ガコォン! とNBが放つ駆動音が空間に広がる。


「くっ……」


 なんとか態勢を立て直す《メイガス》


「よくも2人を!」


 俺もとりあえず突っ込む。


「私も!」


 ケイさんが操る《ツエー・カスタム》の援護射撃。


 しかし、どこに飛んでくるのか分かっているかのように攻撃をかわされてしまう。


 俺もロングソードをブンブンするが、全く相手にされない。


 何だこの不快感……不愉快さは。


 《プロット》は再び《メイガス》の方へ飛んでいく。


 気合を入れなおしたキツカちゃんとのインファイトに戻っていった。


「力と力がぶつかり合い! 肉体から放たれるサイコパワーが歓喜の産声を上げておるわ!!!」


 戦闘狂のごとくテンションが高くなっていく敵。


「違う!」


「ぬっ」


 だが、キツカちゃんがついに敵の動きを読み始めていた。


 徐々に攻撃をはじき返していく。


「私は力に飲み込まれたりなんかしない!」


「キツカ……」


 《メイガス》が光に包まれていく。

不思議な光だった。

どこか彼女を優しく包んでいるように見える。


「私のこの力は……! 守りたい人のために使うものだ!」


 そう高らかに叫ぶキツカちゃん。


 ここ最近の彼女の成長ぶりは目を見張るものだった。


 俺も鼻が高いよ。


「愚か者がアアアア!!!」


 その言葉に怒りを向けて、黒いオーラを纏ったパンチを放ってくる。


 だが、それは《メイガス》を包んでいる蒼い光によって防がれた。


「《メイガス》の出力が80%を越えた……!?」


 マホツさんが驚きの声を上げた。


 キツカちゃんの魂が宿ったかのように、鬼気迫る勢いを加速させていく。


 そして《プロット》と《メイガス》はお互い距離を離した。


 なんか謎月面見えてきた。


 すると、《メイガス》の右手に光が収束していく。

すさまじいエネルギー量だ。


 《フロウ・チャート》が放ったビームに匹敵するくらいだ。


 それを見て、《プロット》も両手を天に広げた。


 その両てのひらの上に黒いオーラが収束していった。


 こっちも果てしないヤバさを感じる。


「サイキック……」


「ハイパー……」


 俺たちに入り込む余地が無い。

レベルの違う戦いが始まろうとしていた。


「バスタアアアアアアア!!!!!!」


 《メイガス》の右手からごんぶとなビームが放たれる。


「チートマジックゥゥゥゥ!!!!!!」


 《プロット》の両手から黒いビームの激流が放たれた。


 そして2つの力の奔流がぶつかり合った。


「うおおおおおお!!!」


 ギャークバーリが叫ぶ。

喉がつぶれそうな声量からは執念を感じる。


「うおおおおおおお!!!」


 キツカちゃんも割れんばかりに叫んでいた。


 そして―――。






 力と力がぶつかり、爆発した。


 そして、最後までたっていたのは《メイガス》、キツカちゃんたちだった。 


 地に倒れ伏す《プロット》


「……私の方が「お」が1つ多かった」


 乱れた呼吸を治して、キツカちゃんがそうつぶやく。


 勝てたのは単純な力の差ではなかった。


 経験、思い、運。

それらすべてが彼女に味方した結果だった。


「かはっ……ワシが……負けるのか……」


 ギシギシと音を立てながらなおも立ち上がろうとする《プロット》


 それは滑稽にも見える。


「あなたの拳からは、殺意と憎しみしか感じなかった……とても悲しいこと」


 ギャークバーリを憐れむように怒りが抜けた声で語りかけている。


「それはそうじゃろうて……ワシに残ったのはこの肉体と……行き場のない憎悪だけじゃ」


 対するギャークバーリもさっきまでの執念はどこへ行ったのか、勢いがない。

はたまた拳を突き合わせて分かり合ったのか。


「っ……あなたは、もしかして……」


 何かを察するキツカちゃん。


「じゃが……まだ死ねん」


 しかし、ボロボロの機体を叩き起こし、黒いオーラが《プロット》を包んでいた。


 この感じ、まさか―――。


「……消えた」


 気づいた時にはもう《プロット》の姿は無かった。


 激しい戦闘の後だけが残る。


「強敵でしたね」


 マホツさんがつぶやく。


 今の戦いを制したのは、実質あの2人だけだった。


「ごめん、役に立てなくて……」


 俺は心からお詫び申し上げた。


 男が何と情けないことか。


「ううん、いいの」


 だが、優しげな声でそう返してくれる。


「だってもう、この子が悲鳴を上げてるから」


 けど、それはもう動けそうにない《メイガス》の状態があったからだった。


「《メイガス》の損耗率が70%。これ以上の戦いは不可能です」


 見た目もボロボロになり、内部もアラートが鳴っているらしい。


 ここから先の戦いにはついてこれそうになかった。


「……わかった。キツカちゃんは休んでて」


 俺は彼女をここに残すことにする。


「ここから先は私たちの仕事ね」


「ああ」


「うん、気を付けてね」


 そしてケイさんと2人、城の最奥へと進んでいく。


 戦いの終わりが近づいてるのであった。 











「ここは……」


 ついに行き止まりにたどり着いた。


 そこには、見えない天井とバカでかい二つの椅子があった。


「よく来たな、愚かな人間どもよ」


 そして声が聞こえた。


 レーダーに映るNB反応。


 翼を広げ、上空からゆっくりと降りて来ていた。


 その姿はまるで本当の意味での天使のように見えた。


「その声は……あの時の!」


「自己紹介がまだだったな。私の名はオリジン。原初の時の精霊だ」


「俺は俺だ!」


「私よ!」


「よし行くぞオオオオオ!!!」


 そして運命のラストバトルが始まった!!!!!!!!!


「これが最後の戦いだ!」


「行くわよ鴉さん!」


 幸いさっきの戦いでは余り燃料を消費していない。


 つまり弾切れを気にする必要は無かった。


「消えろおおおお!!!」


 《フロウ・チャート》の胸からビームが放出される。


「初手ビーム!」


「プランBよ!」


「OK!」


 プランBって……何だ!


 とにかくそんな気がしていたので散開してよけた。


「躱したか」


「お前の動きはすでに対策済みだ!」


 そう。

俺はあの時の教訓を糧にイメトレをかかさなかった。


「ならばこれはどうかな? チートコード《N》式!!!」


「な……!」


 だが、想定していないことが起こった。


 《フロウ・チャート》は目が追いつかないほどの速さで移動している。


 ロックオンが出来ない。


「む、無敵だ!? こんなの、どうやって……!」


 俺は焦る。


 そう何度も明鏡止水には至れない。

 

 万事休すか―――。 


「焦らないで。ただすごく早く動いてるだけよ!」


 ケイさんのその言葉にハッとさせられる。


「……! そうか! なら……!」


 敵が瞬間移動しているわけじゃないなら、その速さに追いつくことができるはずだ。

俺のすべてをかければ。 


「な、なんだと!」


 《プロトタイプ・ムソ―》が徐々に加速していく。


「体がぁぁぁぁぁ!?」


「ケイさん! 今何キロォ!?」


「音速よ!!!」


「よし、光になれええええ!!!」


「私のチートについてくるだと……!!! ふざけるなぁぁぁ!」


 《プロトタイプ・ムソ―》の性能をフルに発揮する。


 常人では耐えられないはずのGの負荷に俺は耐えしのぐ。


 ギシギシと嫌な音が体中から響いてくる。


「食らえええ!!!」


 そこに明鏡止水に至ったことで《フロウ・チャート》の機動を捉えることに成功した。

必殺の剣を振るう。


「一歩遅い!」


「なっ」


 だが、さらに加速され、わずかに狙いがずれた。


 このままでは空を切って大きな隙をさらすことになる。


「フハハハ! 私の勝ちだ―――」


 だが、そうはならなかった。


 一発の銃弾がヒットして、再び動きが一瞬止まる。


「なん、だと」


「ケイさん!」


「私射撃得意なのよね」


 ケイさんの自慢げな声が聞こえる。


 めちゃくちゃな速さで動いているはずの機体を正確にとらえていた。


 神業と言っていい。

やはり彼女はできる人だ。


「貴様ああああ!!!」


「隙ありーーー!!!」


「うがあああああ!?」


 そして俺が振るった剣は急所っぽい胴体にクリティカルヒットした!!!!!!


 オリジンが乗る《フロウ・チャート》は光を放ちながら爆散していく。


「ハアハア……」


「なんとか勝てたわね」


 良く持ってくれた、《プロトタイプ・ムソ―》


 紙一重の勝利だった。


 そして地面に放り出されるオリジン。


「み、認めんぞ……この私が……にんげ、ん……ごときに……」


 地を這いながら俺たちを見上げている。


「なんでこんなことを……」


 なぜ、なんで。

そんな言葉しか出てこない。


 こんな苦しい戦いの果てに何をしたかったのか。


 俺はコックピットを出て、生身で対峙する。


「貴様は……、そうか……存在を消したはずの奴の残滓……ギャークバーリの言ってた絆というやつか……」


 よくわからないことを言っている。


「フフフ……だが、もう遅い……」


「何が……」


 色々と問い詰めようとしたその時だった。


 ラルカンシェルから緊急通信が入った。


『聞こえるか! サッカン!』


「おやっさん?」


 非常に焦っている声だった。


『地上が大変だ……! 天使がどんどんあふれてくる……!』


 何だって……?


 もう敵の黒幕は倒したのに。


「そんな……」


「もはや私が消えたところで止まらない。最高神が復活し《転聖戦争》が始まる」


 地を這いながらまるで勝者のように振る舞うオリジン。


「《転聖戦争》……?」


 一体それは何なのか。

しかし、どこか体がそれを知っている気がした。


 どこかで感じたことのあるような震えが止まらない。


「どのみち神ではないお前たちには関係のない話しだ……」


 ゴロンと大の字になり、覇気も消えていくオリジン。


「……そうか」


 もはや答えは聞けそうになかった。

 

 俺はオリジンに剣を突きつける。


 だが、その時プレッシャーを上から感じた。


「! なんだ!」


 すると、そこには先ほど撃退したNBの操縦者、ギャークバーリが現れた。


「カカカ……お主も無様なものよのう、オリジン」


「ギャークバーリか!」


 思わぬ仲間の登場にオリジンに元気が戻る。


「ちょうどいい……! 貴様も加勢しろ! 勝利の芽はまだある!」


 もはや《プロトタイプ・ムソ―》は限界だ。

NBと言えどケイさん一人だけでは手に負えそうにない。


「くっ……」


「まずいわね」


 俺たちは焦る。


 ゆっくりとオリジンへと近づくギャークバーリ。


「ふむ……そうじゃな」


「よし、いく―――」


 しかし、予想もしなかった出来事が起こる。


「おぬしを食らえば……な」


 オリジンの胴体をギャークバーリの手刀が貫いたのだ。


「なに、を……」


「同士討ち!?」


 一体どういうことなのか。


「ワシが時の力を引き継げば……今度こそ永遠などに負けはせん」


「裏切るのか……ギャーク……」


 盛大に血を吐きながら、かつての仲間を睨みつけるオリジン。


「すまんのう。魂が離れた肉体には友情や愛などいう感情は残ってないようじゃ」


「ガアアアアア!?」


 手刀を抜き取ると、血がブシャっと飛び出る。

バタリとオリジンが倒れた。


「お主も疲れたじゃろう。今度こそ眠れ、永遠にな」


 冷めきった顔、声でギャークバーリが別れを告げている。


「い、いやだ……私は……今度こそ……神に……」


 最後まで野望を抱いたまま、オリジンは光となってギャークバーリに吸収されていった。


「どうしてだ! 仲間じゃなかったのか!」


 俺は問わずにはいられなかった。


 初めて奴と会った時から感じていた不快感。

それがとめどなく全身を駆け巡る。


「ワシにはワシ以外のモノがどうなろうと何も感じない」


「お前は一体何なんだ……!」


 自分でも不思議なくらいに怒りがわいてくる。

俺はこいつを……!


「お主も気づいておろう」


「何、が!」


 俺が何に気付いているかだと……?


「そこのお嬢さんも気づいているのではないか」


「……え」


 だが、その質問にあっけにとられた。


 ケイさんの顔を見てみると苦虫をかみつぶしたような表情をしていた。


「こういうのって……非科学的でキャラじゃないんだけど」


 そして俺を見つめる目は、すごく優しい目をしていた。


「知らないどこかの世界。そこで私はあなたと過ごした記憶がある」


「ケイさん……?」


「そこでやがて年老いていくあなたを見たわ」


 いきなり何を言っているのか。


「それで……そう、最後に見えたあなたは、ソイツのような、いえ、うり二つの顔をしていた」


「それって、まさか……」


 そんなはずは……。


「そう。ワシはかつて「おっさん」と呼ばれていた男の、朽ち果てたはずの肉体じゃ」


 その言葉に心が打ち付けられる。


 「おっさん」

その名を聞いて、自分の中の何かがはじけた。


 ここじゃないどこか。

知らないはずの場所、世界で見た仲間たちの姿。


 それが脳裏を駆け巡っていく。


「そしてお主は、ひどく不安定な「おっさん」 いや、転生したはずの「おっさん」が世界から消去されたことで目覚めた亡霊。かつて繰り返された世界の一つ、そのありえたかもしれない世界に焼き付いた影なんじゃよ」


「影……俺が、影?」


 だから、記憶が無いのか?


 もともと俺はあの日以前には存在していなかったから。

俺は……人間じゃなかった。


「なぜお主が現れたのか、それはわからん。じゃが、その存在はあやふやでろうそくに灯った火のようにか細いもののはずじゃ」


 全てを知った今なら分かる。

その言葉の意味を。


 俺は正しい命じゃなかった。


「お前、は……何がしたいんだ」


「取り戻すんじゃよ。「おっさん」が持っていたもの全て。老いた体を再生するために。最高神を復活させる」


 奴もどこか違う場所を見つめているのか、その瞳には様々な感情が乗っていた。


「天使が狩った人間の魂が集まり、それを生贄にナ・ローを復活させるのじゃ!!!」


 高らかにそう語るギャークバーリ。

それがこいつらのしたかったことか。


「そんなこと……許されるはずがな―――」


「本当にそうか? お主もワシと同じじゃ。自分の目的のためなら全てを犠牲にできることを」


 一瞬、俺は否定することに判断が遅れた。


「俺は! 俺には! 大切な人たちがいる!」


「じゃが、それがいなかったら? 自分ひとりの世界でならお主は自分ひとりのために行動するじゃろう」


 コイツの言葉は、ひどく重く、俺にのしかかっていく。


「それ、は」


 何も言い返すことができない。


 だってアイツの言葉は俺の言葉だから。


 しかし、そのレスバトルをさえぎるようにケイさんが俺の前に立った。


「これ以上問答を続けるようなら、今ここであなたを撃つわよ」


 銃を構え、俺を守るように宣言する。


「フッ、時の力で今や神に匹敵する力を手に入れたワシを倒すことは出来ん。チートを持つ者を倒せるのは同じチートを持つ者だけじゃ」


 その言葉を聞き、引き金を引くケイさん。


 だが、放たれた弾丸は全く通用していなかった。


「……ちっ」


 舌打ちをして、さらに弾を装填仕様とするケイさん。


 だが、ギャークバーリは気にも留めずに宙へと飛んだ。


「どこへ行く……!」


 俺はふらふらと立ち上がりアイツをにらみつけた。


「他に気にすることがあるのではないか?」


 その言葉で思い出した。


 ケイさんが通信装置を取り出す。 


『こち―――ラルカ―――ェル。まず―――! 世界全土に天使が―――」


 連絡を取ろうとするが、危険な状態であることしか分からない。


「くそ!」


 俺は、拳で悔しさを地面に叩きつけることしか出来なかった。


「ではな。《転聖戦争》で会おう」


 奴は最後にそう言い残し、去っていった。


 レスバトルに負けたのだ。


「鴉さん! 今は艦に戻りましょう!」


「……わかった」


 正直身も心もボロボロで何も考えたくなかった。


 それでも、俺たちはまだ戦わなければいけなくなったのだ。 


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